サーキットの狼世代へ|一時はトップグループを走った「鈴木サトル」のヨーロッパ スペシャル| 1972年式 ロータス・ヨーロッパ スペシャル仕様【3】

センターコンソールの4連メーターは、左から電流計、油圧計、水温計、燃料計が並ぶ。⓫ステアリングホイールはマウントニーGTに変更。ロータスはもちろん英国車だが、この個体は北米仕様の左ハンドルモデルだ

       

【サーキットの狼世代へ 1972年式 ロータス・ヨーロッパ スペシャル仕様 vol.3】

 なお、今回紹介しているミュージアム収蔵個体は、72年式のDOHCモデルを、ビッグバルブヘッドに交換するなど、各所をスペシャル仕様とした1台である。

 FRPボディの採用により車重は非常に軽く、タイプ46の車重はわずか610kg、最終型のスペシャルでも730kgにすぎない。この軽い車重とミッドシップ・レイアウトによる優れたハンドリング性能が身上である。

 限界まで低く搭載された1.6L直列4気筒DOHCユニットは、最高出力126ps、最大トルク15.6kg‐mを発揮する。公道であれば十分なパワーだが、流石島のような大排気量車が参戦しているサーキットでのレースにはいかにも非力いえる。

 作中でも鈴木サトルは十分にそれを理解しつつも、風吹へのあこがれからあえてロータス・ヨーロッパ スペシャルで参戦。乏しいパワーを最大限に引き出しつつ、海岸通りなどのタイトなコーナーではハンドリング性能のポテンシャルを生かして目覚ましい走りを見せた。

 加えて、早瀬佐近やフェラーリの女豹と同じく、いち早くレインタイヤに切り替える機転によって、一時はトップ3の位置を走るなどの活躍を見せている。

【画像19枚】風吹のあとを追い続けた もう1台のロータス・ヨーロッパ。サーキットレースには非力な性能ながら、優れたハンドリング性能と鈴木サトルの機転によって上位に食い込んだ


>>エンジンルームの手前(車体後端)側は本来ならラゲッジスペースだが、この個体では取り外され、トランスミッションもよく見える。


>>米仕様のため、本来はゼニス・ストロンバーグ製キャブレターが装着されていたが、欧州および英国本国仕様と同じ、デロルトのDHLA40キャブレターを2基装着している。


>>純正オリジナルのセミバケットシートは、非常にきれいな状態で維持されている。シートベルトは3点式を装備している。


サーキットの狼Story/風吹のあとを追い続けたもう1台のロータス・ヨーロッパ

ロータス・ヨーロッパをよく知る当の風吹からもパワー不足を指摘された鈴木サトルだが、見事予想を覆し、一時はトップグループで走行するに至る。しかし、徐々に性能でも技術でも上回るライバルに引き離され、セカンドグループへ。ラスト1周、トップを追う風吹のヤタベRSがセカンドグループの他車にブロックされると、風吹を助けるために大クラッシュ。クルマもサトルも大きなダメージを受け、リタイアとなった。





1972年式 ロータス・ヨーロッパ スペシャル仕様

全長×車幅×全高3980×1650×1090mm
ホイールベース234mm
トレッド 前/後134mm/1346mm
車輌重量730kg
エンジン水冷直列4気筒DOHC 縦置きミッドシップ
総排気量1558cc
最高出力126PS/6500rpm
最大トルク15.6kg-m/5500rpm
生産年1971〜1975年
生産台数4710台(TC&SP)
生産国イギリス

※スペックは池沢早人師ミュージアムに準じる。


初出:ノスタルジックヒーロー 2018年 12月号 Vol.190

(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


サーキットの狼世代へ 1972年式 ロータス・ヨーロッパ スペシャル仕様(全3記事)


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【1】【2】から続く

photo: Motosuke Fujii(Salute)/藤井元輔(サルーテ) Cooperation : 池沢早人師サーキットの狼ミュージアム

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