近未来のスポーツクーペを具現化したFXV‐Ⅱを展示。晴海国際貿易センターでの最後のショー|第27回 東京モーターショー 1987|トヨタ編【1】

晴海での最後の開催となった、第27回東京モーターショー

       
【第27回 東京モーターショー 1987 トヨタ編 Vol.1】

昭和の爛熟期を迎えた1987年は、東京モーターショーにとって忘れられない開催となっている。この年で27回目を迎えたが、日本車の進歩を見続けてきたファンはさびしさを隠せなかった。なぜなら次の1989年からは、開催の舞台を晴海の国際貿易センターから千葉県の幕張メッセに移すことが決まっていたからである。晴海での開催は、これが最後になった。
 欧米の自動車メーカーの生産が鈍化するなか、日本は右肩上がりの上昇カーブを描いている。モーターショーの展示車も勢いがある。技術レベルの高さを誇示するだけでなく、完成度も飛び抜けて高かった。海外からの来場者を意識したコンセプトカーや新技術の展示も多い。トヨタも意欲的に目を引くコンセプトカーや提案モデルをショー会場に送り込んでいる。


>> 【画像8枚】移転前最後となった第27回東京モーターショー、その会場だった東京国際見本市会場(晴海国際貿易センター)のようすなど


 もっとも目立つ位置に、広いスペースを割いて展示されていたのが、近未来のスポーツクーペを具現化したFXV‐Ⅱだ。1985年に出展したFXVは4ドアのプレミアムセダンだったが、後継のFXV‐Ⅱはスタイリッシュな2ドアクーペである。メカニズムに関しては、1983年のショーでお披露目したFX‐1を発展進化させたテクノロジーを意欲的に盛り込んだ。

 FXV‐Ⅱに採用されているメカニズムの多くは、遠くない将来に採用されそうなものばかりだった。事実、このFXV‐Ⅱは実際に走行可能で、ジャーナリストにも試乗させている。パワーユニットは具体的だ。オールアルミ製の90度V型8気筒ハイカムツインカムをフロントに置き、これに電子制御4速ATを組み合わせた。エンジンの排気量は3.8Lだ。
 エンジンとトランスミッションは、電子制御で統合制御する。このエンジンとトランスミッションは、1989年に正式デビューを飾ったセルシオに積まれているものに限りなく近い。

 駆動方式は前後の駆動力配分を油圧多板クラッチによって行う電子制御式のフルタイム4WDだ。リアにはビスカスLSDを配した。サスペンションは、走行状況に応じてダンパーの減衰力や車両姿勢、車高などを最適に調整する電子制御アクティブエアサスペンションを採用する。

 これに車速や舵角をセンシングし、操舵特性を導き出す電子制御プログレッシブパワーステアリングや4輪操舵の電子制御アクティブ4WS、横滑り防止、発進制御のトラクションコントロールなどを加えている。いずれも今では常識となった技術ばかりだ。



【FXV-Ⅱ】
すぐに発売できそうなほど完成度の高いコンセプトカーだった。総アルミ製のV型8気筒DOHCエンジンと電子制御エアサスペンションは、2年後の1989年秋にセルシオに積まれて正式デビュー。

【2】に続く

初出:ハチマルヒーロー 2016年 9月号 vol.37
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

第27回 東京モーターショー 1987 トヨタ編(全2記事)

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text : HIDEAKI KATAOKA/片岡英明 photo : JAMA/一般社団法人 日本自動車工業会

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