高回転域で爆発的なトルクを発生するグループ5からの進化【4】時代はグループ5からグループCへ

グループCスカイラインをひと言で表現すれば「ワイド&ロー」。グループ5スカイラインの空力が「抑え付ける」だけの思想とすればグループCは「空気の流れを活用する」方向に進化していることが見てとれる

       
とにかく何かをしなくては、と1979年に始まったスーパーシルエットレースは、
立ち上げてみたら予想以上の人気で大成功。しかし、世界の動向はすでにグループCカーの時代へ突入。
要求性能のレベルが高く、自動車メーカーが本腰を入れて臨む条件が揃っていた。

【ターボテクノロジーの大いなる進化、時代はグループ5からグループCへ Vol.4 国内モータースポーツの隆盛 第4回】

【3】から続く

 さて、自社の有力カスタマーにCカー用エンジンも供給することになった日産だが、グループ5用と異なり、高出力性に加えて耐久レース用としての信頼性、グループC規定の根幹となる燃費性能(1.96km/L以上)を満たさねばならず、エンジンに要求される性能はいきなり高いレベルに達する局面を迎えていた。

 グループ5時代のLZ20B型ターボは、高出力性と過給制御を主体に開発は進められたが、高回転域で爆発的なトルクを発生する特性のため、ドライバビリティは相当に悪かったという。コーナーをゆっくり回り、直線だけ全開にする走り方で精いっぱいだった。

 おもしろいエピソードがある。とにかく強烈なトルクのため、ミッションやデフといった駆動系を壊していたのではと思いがちだが、実際にはエンジン本体が壊れていたという。あまりに強烈なトルクのため、3速、4速といった上のギアでも簡単にホイールスピンを起こし、加速時のオーバーレブで壊れたというのだ。

「踏めば遅れてドッカーンという加速、よく乗っていたよね」とは、その後、洗練された制御のターボエンジンまで経験する日産3名のドライバーが、異口同音に発したコメントだ。

 ただ走らせることだけを考えていたグループ5の時代から、微細な過給制御まで求めるグループCの時代へ、技術の進化は突き進んでいくことになる。

>> 【画像15枚】似て非なる物。シルエットフォーミュラのスカイラインを知る目には、モデルチェンジ版と見えてもおかしくない、グループCカー規定で作られたスカイラインターボCのスタイリングなど。非常にユニークな内容だ




>> エンジンはLZ20B型+ターボ。タービンはギャレットT05と2L級のエンジンに対しては超大型。低中速域のトルクがまったくなく、逆にタービンの回転が立ち上がり、過給がMAXの状態になると暴力的なトルクとパワーを発揮した。そしてタービンを保護するための濃い空燃比設定。アクセルオフによって排気管から吹き出す炎は、シルエットフォーミュラの身分証明となっていた。


初出:ハチマルヒーロー 2015年 07月号 vol.30
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ターボテクノロジーの大いなる進化、時代はグループ5からグループCへ(全4記事)

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【1】【2】【3】から続く

text & photo : AKIHIKO OUCHI / 大内明彦

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