僕が惚れ込んだBMWの、その足元にはいつもBBSがいた。 と或る、BBS物語。|BBS_STORY_04

BBS RE-V7/フラットタイプとラウンドタイプという2種類のフェイスが用意され、カラーリングは4色がそろう

       

僕が惚れ込んだBMWの、
その足元にはいつもBBSがいた。


「僕の中では、BBSはもう絶対的な存在。僕が憧れていたBMW像の中に、潜在的に組み込まれている。パフォーマンスにしてもマッチングにしても、常に間違いがない」
 そんな鈴木にとって、今につながる出会いは2015年の東京オートサロンにあった。参考出品されていたRE-V7に一目惚れしたのだった。7本のクロススポークは決して奇をてらうデザインではないが、長年、BBSを見続けてきた彼の目には、実に魅力的に映ったという。
「僕が憧れた昔ながらのBBSっぽさと、最先端の技術を駆使したイマドキのBBS。両方が混ざったような独特の魅力を感じたんです」
 当時のRS(現:SUPER RS)やLM勢など細かいクロススポークを持つ往年の姿形と、RI‐Dに端を発するモダンなクロススポークが、RE‐V7には融合されていたという。そうした意味でこの7本クロススポークは「BBS自身が、BBSをオマージュして作った」作品であったのかもしれない。


>>BBS RE-V7 Racing 先行開発的な役割を担った 特別なレーシングホイール。
BMWチーム・スタディのM6 GT3にはBBS製RE-V7が装着された。レギュレーションに合わせて18インチ(前後13.0J)となり、当然ながらセンターロック。7本クロススポークとセンターロックは親和性が高い。実際、BMWモータースポーツ社もその性能を認めている。3シーズンを共に過ごしたチームやドライバーの実感は、とにかく剛性が高く丈夫で、抜群の信頼感があること。接触やコースアウトしても破損したことがない。


「ホイールで一番カッコいいのは、やっぱりセンターロック。これをRE‐V7で見てみたいと思った。当然、レーシングカーにしか履かせることはできない。“スーパーGTで使いたい!”と、気がつけば口が勝手にそう動いていましたね」
 鈴木はチーム・スタディを立ち上げ、2008年からスーパーGTに参戦していた。事実上、BMWのワークスと認められた2016年からは、マシンをM6 GT3にする予定だった。スーパーGT(GT300クラス)は、世界のGT3レースの中では特殊なルールを持つ。レギュレーションで定められた範囲内であれば、タイヤやホイール、ブレーキパッドなど純正品以外へ交換することが認められている。だからこそ熾烈なタイヤ戦争を巻き起こしていることは有名だが、同時にホイールにとっても闘いの場だった。
 鈴木の熱意に対して、BBSジャパン側も賛同して、話はトントン拍子で進んだ。M6 GT3の足元にはセンターロックのRE‐V7が収まることになったのだ。市販品が出る前の、プレゼンテーション的な側面もあったのだろう。BMWとBBSがずっと昔からやってきた「すべてはレーシングカーから始まる」形が実現された格好である。
「承認を得るためBMWモータースポーツ本社に送ったら、重量こそわずかに純正より重かった。でも、強度や剛性などあらゆる性能が純正を凌ぐことがわかった。僕らのほうで純正品との厳密な比較はしていないけれど、これはタイムアップに大きく貢献する。何より接触やバーストの危険性をはらむ実戦の場合、この信頼耐久性は大きな武器となる」
 デビューイヤーとなった2016年に続き、翌17年、そして今シーズンを含めて3年もBMWチームスタディはBBSと共に闘った。それは鈴木が幼少期に憧れた「BMW×BBS」像そのものだったと言える。幼少期の初恋を、彼は数十年の時を経て実らせたのだ。なお、デビューイヤーには、ストリート向けの5ホール、20インチがスタディ専売モデルとして限定販売されて、M3/4のユーザーへ届けられた。
 レーシングカーへの投入に始まり、その後の実験的限定モデルを経て、2020年末、RE‐V7はいよいよ市販される。まずは18インチから始まり、その後19インチも拡充される予定だ。その中でいかにBMWとマッチングさせてくるのか。BMWチーム・スタディとともに育ってきた銘柄なだけに、BMWに対しての回答に注目される。スタディ専売モデルだった20インチの復活だってあり得るかもしれない。BMWチーム・スタディがRE‐V7で闘っている間、BBSはフルオートメーションの塗装工場を完成させ、最新鋭の1万2000t鍛造機を導入した。そうした意味でも市販型RE‐V7は「満を持して発売」という言葉がこのうえなく似合う。
「来年か、再来年になるか、今度はM4 GT3(G82)でスーパーGTを闘いたい。その時になっても、できるならBBSを履かせたい」
 RE‐V7プロトタイプの初公開から5年近く。「BMW×BBS」のストーリーは、まだ終わりを迎えたわけではない。鈴木は今年で52歳。50周年を迎えたBBSと同世代同士、手を取り合い苦楽をともにしてこれからも歩み続けていく。


>>BMW Team Studie 代表 鈴木“BOB”康昭

スタディ創業者にして現在は同社会長を務める。幼少期に憧れたのはモータースポーツで活躍するBMWの姿だった。その頃の情熱を糧にBMWチーム・スタディとしてモータースポーツ活動を展開する。スーパーGTを筆頭に、スーパー耐久、ブランパンGTワールドチャレンジ・アジアなどあらゆるカテゴリーに参戦してきた。スーパーGTを闘うM6 GT3にBBSを装着するほか、愛車(もちろんBMW!)だって率先してBBSを取り入れる。



>>BBS RE-V7 東京オートサロンでの参考出品、スーパーGTへの供給、そしてスタディ専売モデルとしてBMW用20インチの限定販売を経て、いよいよRE-V7はカタログモデル化される。基本的な造形はプロトタイプを踏襲する。7本クロススポークを持つ鍛造1ピースモデルだ。サイズは18インチからスタートし、追って19インチへと拡がる予定となる。フラットタイプとラウンドタイプという2種類のフェイスが用意され、カラーリングは4色がそろう。


【画像18枚】スーパーGTで活躍のRE-V7Racingからいよいよ本格的に登場したストリート向けRE-V7。


初出:BMW STYLEBOOK 2020

photo:渡部祥勝 WATABE HIROKATSU/南 博幸 MINAMI HIROYUKI/BMW AG  text:中三川大地 NAKAMIGAWA DAICHI

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