「嘘のように加速する」と表現した俊足ぶりを引き出すエンジン|1977年式 スカイライン HT 2000 GT-X Vol.6

排気量を3LにアップしたL28型改は、ポート拡大や腰下の各部バランス取りなど、さまざまな加工と調整、強化部品の投入などにより出力を高めた。燃料や水回りのラインは引き直され、エンジンベイはボディ同色で塗装するなど、見た目の美しさにもこだわりが感じられる。トランスミッションはR32スカイラインタイプMの71C型5速MTに換装し、ニスモのセミクイックシフトも装着。

       
旧車といえば、誰もがかっこいいと感じる普遍的なデザインが魅力。しかし、現代の基準に照らせば、あまり快適ではないのは確かで、ネガティブな要素もないわけではない。だが、今回紹介するスターロードが作り上げたケンメリは、そんな苦労とは一切無縁。最新のパーツと独自のノウハウを駆使して、モダンなコンフォートドライブを可能とした1台になっている。

【1977年式 スカイライン HT 2000 GT-X Vol.6】

【5】から続く

 肝心要のエンジンは、ボアアップによって排気量を3.0Lに拡大したL28型を搭載。φ89mm鍛造ピストンと長さ140mmのI断面コンロッドを使用し、L28型のクランクをはじめ、各部の綿密なバランス取りも実施している。井上さんが「嘘のように加速する」と表現した俊足ぶりは、排気量アップによるトルクの増大が源というわけだ。

 当然、ヘッドにも手が入っており、ポートの拡大や燃焼室の加工を行い、ハイカムとビッグバルブを導入。当然、ハイリフト化にともないバルブスプリングのほか、リテーナーやコッターなども強化品に交換されている。

 排気系には、スターロードのφ48mmフル等長タコ足とローダウンマフラーを装備。抜けの良さを感じさせる軽快なサウンドでありながら、必要以上にご近所さんに気をつかうような爆音というわけでもなく、気持ちの良さが際立つ音質だ。

>>【画像30枚】日本精機DefiのアドバンスA1シリーズを採用したメーター類など。φ80mmのタコメーターは外周リングをスターロードで製作している

「クルマをいちから作っていくうえで、遮音と同じくらい最初に気をつかっているのがエンジンの熱管理。壊れないようにするということが何より大事な大前提だから」と井上さんは語る。スターロードではオリジナルの3層オールアルミラジエーターを開発しており、もちろんこのケンメリにも採用。あわせて強化オイルポンプやセトラブのオイルクーラーも導入することで、パワーアップされたエンジンの冷却性能を向上させている。
 そして熱管理といえば、人を冷やすことも重要! ということで、もはやおなじみとなっているスターロード・オリジナルのボルトオン・クーラーキットも当然装着されている。

 操作性や快適性に影響するシートや計器類も最新スペックへと交換。シートはモノコックシェルを採用するBRIDEのGIAS2が装着され、乗り心地とホールド性のよさを向上させた。タコメーター、油温計、油圧計、水温計は日本精機DefiのアドバンスA1シリーズを採用。視認性に優れ、数値を読み取りやすい。




3連キャブのソレックス44PHHを備え、アクセルワイヤー取り付けステー付きフューエルパイプとメッシュホースでラインを再構築。点火系はPertronixのコイル、マロリーのフルトラデスビ、ウルトラのパワープラグワイヤーなどで強化されている。





亀有製の大容量フューエルレギュレーターを装着。






スターロード・オリジナルのφ48mm完全等長タコ足を装着。バンテージ巻きで熱対策と排気効率の向上を狙っている。


BUILDER

スターロード 井上正嗣代表


東京都江戸川区にある旧車専門店「スターロード」の代表を務める井上正嗣さん。ケンメリは個人的にも所有するほどのフェイバリットモデルで、エンジンや車体はもちろん、一つひとつの細かな部品にいたるまで精通している。「ノーマルの良くない部分も知っているからこそ、改良すべきポイントを見い出せる」というのが信条。オーナーが気づかないような部分までしっかりと手を入れてクルマを仕上げることが、職人としての自負だ。

1977年式 スカイライン HT 2000 GT-X(CS31)
SPECIFICATIONS 諸元
■エクステリア:FRPボンネット(補強/輸出用ダクト入り)/Gノーズ/フロントフェンダー/前後バンパー/リアゲート、ニスモ製フロントスポイラー加工、4mm厚アクリル板加工ウインドー(窓のみ3mm厚)、リアゲートヒンジワンオフ
■ボディ:各部スポット増し、25点式ロールケージ+6点溶接補強バー(φ40mm×2mm、φ40mm×1.6mm、φ25mm)、ワンオフリアデフメンバー、フロントアルミ角パイプタワーバー、リアアルミ角パイプV字型タワーバー
■エンジン:L28型改3.1L仕様(圧縮比12.5:1)、P90Aヘッド、亀有エンジンワークス製77度Dカム、ビッグバルブ(INφ45mm/EXφ38mm)、ASW製φ89.75mmピストン/I断面コンロッド/83mmフルカウンタークランク、クランクキャップボルトM12、トリプルスプリング/チタンリテーナー、ニスモ製レース用クランクプーリー、ウオーターポンププーリー穴開け加工、アルミオイルパン+延長・補強入りストレーナー、アルミオイルキャップ
■吸排気系:トキワ商会ソレックス50PHH×3(φ45mmアウターベンチュリー/メイン240/エア190)、硬質アルマイト加工ファンネル、特注φ48.6mm/1.2mm厚フランジ軽量6-2-1タコ足、自作φ90mmチタンマフラー
■点火系: マロリー製デスビ、永井電子機器製MDI/ウルトラシリコン・プラグコード
■冷却系:特注2層アルミラジエーター、フレックスアライト製電動ファン×2、アールズ製34段オイルクーラー、オイルライン#12フィッティング、セトラブ製デフオイルクーラー
■燃料系:FJ20型用燃料ポンプ、SK製燃料レギュレーター×2
■電気系:ハイパーエナジー製バッテリー
■駆動系:OS技研製ツインプレートクラッチ、F5W71Bミッション(亀有エンジンワークス製クロスギア、軽量穴開き加工アルミプレート付き)、R180デフ(ファイナル3.9、クスコ製インプレッサ用カバー)、OS技研製LSD
■サスペンション:(F)自作車高調(ピロアッパーマウント逆付け)/ロールセンターアダプター、純正改ピロロワーアーム/ピロテンションロッド、ピロボール式スタビライザー、 (F)スウィフト製直巻き9kg/mmコイル (R)スウィフト製直巻き7kg/mmコイル、キャンバー調整式アッパーマウントスペーサー、トー調整式メンバー、ロワーアームウレタンブッシュ
■ブレーキ:APレーシング製プロポーショニングバルブ、PFC製ブレーキパッド、マスターシリンダーライン引き直し (F)ブレンボF50キャリパー、ワンオフアルミベルハウジング+φ314mmFD3S用ローター (R)FD3S用キャリパー+φ314mmローター(4H 114.3加工)、ワンオフアルミブラケット、S30 Z用+FD3S用サイドブレーキ接続プレート
■インテリア:レザーステアリング、レカロ製バケットシート、ブリッド製バケットシート用パッド、シュロス製レーシングハーネス、FRPダッシュカバー、オートルック製ペダル、永井電子機器製タコメーター、大森メーター製油圧/油温/水温計、PLX製マルチゲージ、オムロン製デジタル式温度コントローラー(キャブ温度/デフ油温/ミッション油温/エンジン油温/エンジン水温)、オイルクーラー改自作ヒーター、照光押しボタンスイッチ式キー
■タイヤ:ヨコハマ アドバンA050 (F)225/45R16 (R)225/45R16
■ホイール:パナスポーツレーシングG7 (F)16×9J (R)16×9.5J


【7】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2018年8月 vol.017
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1977年式 スカイライン HT 2000 GT-X(全6記事)

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text : HIDEO KOBAYASHI/小林秀雄 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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