魂が込められたクルマとは、まさにこのS30Zのことを表している。フェアレディZの魅力に取りつかれた男たちが、理想とするサーキットスペックを目指してハンドメイドで作り込み、その製作期間はなんと6年にもおよんだという。ボディのフルレストアから、エンジンチューニング、足まわり、コックピットのセッティングにいたるまでパーフェクトな作り込み。あくなき情熱が生み出したその雄姿を紹介しよう。
【1】から続く【魔性の魅力! チューンドS30Z フェアレディZ + L28型改3.1リットル Vol.2】
【画像38枚】フロントメンバーやロワアームにも当て板補強を施す。テンションロッドやスタビリンクはピロボール式の調整式に変更。ロールケージはフロアトンネルや前後のストラットタワーにも結合することでボディの一体感を高める。ジャッキアップしてもドアはまったくズレないそうだ
「とにかくハンドルが重くて、まっすぐ走らせるのが難しいくらい。箱根を飛ばせば、いつどこに飛んでいってもおかしくないような状態でしたね」
せっかく手に入れたS30フェアレディZに対する失望。
そんな時に出会ったのが、オーナーの旧車ライフにおける師匠ともいえる存在のOさんだ。当時から、地元ではちょっと知られた存在のプライベーターだった彼は、同じくS30Zに乗っていた。
早速、悩みを相談したところ、ほぼノーマルだったオーナーのZに、当時は珍しかった車高調やピロテンションロッドなどを装着することを提案。それを実践すると走りは格段によくなった。以来、Oさんと一緒にS30Zをチューニングしたり、サーキットへ走りにいったりと親交を深めていった。
それから長い年月が経過し、Zを本格的にレストアしようと動き出したのは6年前のこと。サーキットや峠で酷使したこともあり、外装やボディに劣化が見られたからだ。
また、その頃にはすでにエンジンもL28型改3.0リットルに積み替えるなどひと通り手が入っていたため、残すはボディのみという思いもあった。作業はOさんのガレージを間借りして始まった。
レストアするにあたり意識したのは、ボディの軽量化と剛性アップだ。サーキットでも扱いやすいクルマに仕上げようと、ボディをドンガラにしてスポット増しを行うなど、プロ顔負けのレストア作業に着手していった。
「実は、このクルマの前にOさんのZを仕上げたのですが、車体の下に潜ってアンダーコートを剥いだりする作業がとても大変で。今回はフロア下もラクに作業できるように、カーバーベキュー用のスタンドを作ったので、ずいぶん作業効率がアップしましたね」
サビが出ていた部分は修復し、フェンダー内やコアサポート、ストラットまわりに補強を入れるなど、強じんなボディに仕上げた。同時に、配線の間引きやガラスのアクリル化、そして外装パネルのFRP化など、徹底した軽量化を進めている。結果として約60kgにもなる補強を追加したにもかかわらず、車重は1050kg以下に抑えられた。
「安全性から残したドア以外はすべてのパネルをFRP化しました。市販品を使っているのですが、なかにはペラペラなものも……。FRPを重ね張りして補強し、チリが合うまで何度も修正を繰り返しました」と作業を振り返る。
また、単なるGノーズ仕様ではなく、ダクト付きのフロントスポイラーをワンオフ製作。それに合わせてオーバーフェンダーを約10mm延長加工するなど、定番の240ZG仕様ながらさりげなく迫力をプラスしている。
>>かつて搭載していた3リットル仕様のL28型も自分たちで組み上げた。その後、20年ほど快調で壊れなかったため、レストアと同時に3.1リットル仕様を新調して積み込んでいる。
>>3リットル仕様の頃から愛用しているソレックス50PHH。カーボンで自作した遮熱プレートも追加した。キャブの油面合わせを正確に行うことで、グズつきのない軽快な吹け上がりを実現する。
【3】に続く
初出:ノスタルジックスピード vol.023 2020年2月号
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
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