【孤高のロータリーエンジン マツダ 787B vol.1】
インディ500、F1モナコグランプリと並び、世界三大レースのひとつに数えられるル・マン24時間レース。その歴史は古く、初めて開催されたのはは今から100年前の1923年だった。この長い歴史のなかで、ポルシェやフェラーリ、ジャガーやベントレーといった海外の名だたる自動車メーカーが優勝を収めてきたが、日本車メーカーは表彰台に上ることすらできない状況が何年も続いた。
世界一過酷と言えるル・マンに、日本車メーカーとして最初に参戦したのがマツダ。70年にベルギーのチームに10A型ロータリーエンジンを供給したのが始まりで、その後は日本のプライベーターであるシグマオートモーティブに12A型を供給。
そして79年はマツダスピードとして、グループ5マシン「マツダ252i」でエントリーしたのである。ちなみに、トヨタが85年、日産は86年からの参戦なので、マツダがいかに早くからルマンに挑戦していたかが分かるだろう。
このように、どの日本車メーカーよりもル・マンの厳しさを知っているマツダだったが、ついにその努力が結果に結びついた。それが第59回開催となった91年のレースだ。この年、トヨタと日産は欠場し、ワークス体制の日本車メーカーはマツダのみだった。
そのマツダは、前年に使用した787(56号車)のほか、トレッドを広げてコーナリング性能をアップさせた2台の787B(18/55号車)を投入。エンジンは4ローターのR26B型だが、前年の仕様よりもトルク&レスポンスを向上させ、燃費性能や信頼性も高められた。
しかし、大方の予想は前年覇者のジャガーで、そのライバルはメルセデス・ベンツと目されていた。そして予選は予想通り、メルセデスとジャガーが速さを見せ、マツダは55号車が19番グリッドを獲得するのが精一杯だった。
【画像23枚】どの日本車メーカーよりもル・マンの厳しさを知るマツダ。努力が実を結んだ91年のレースで投入されたのが787Bだ>>787よりもトレッドを拡大して18インチタイヤを装着し、リアカウルの形状も変更。よりコーナリング性能が高められた進化版が787Bだ。
>>大型のディフューザーは、形状自体はシンプル。ただし、中央をリアサスのロアアームが貫通していることが確認できる。テールランプ&ウインカーは非常に小型。
>>ルーフよりも低いローマウントタイプのリアウイング。後端にはガーニーフラップも付く。
マツダ 787B全長×全幅×全高 4782×1994×1003mm
ホイールベース 2662mm
トレッド前/後 1534/1504mm
車両重量 830kg
エンジン型式 R26B型
エンジン種類 4ローター・ロータリー
総排気量 654×4cc
最高出力 700/9000ps/rpm
最大トルク 62.0/6500kg-m/rpm
サスペンション ダブルウイッシュボーン(前後とも)
ブレーキ ベンチレーテッドカーボンディスク(前後とも)
タイヤ 前300/640R18、後355/710R18
【2】へ続く初出:ハチマルヒーロー 2016年11月号 Vol.38
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
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