和服を着たままでも乗り降りしやすい理由は?|最初に乗員空間を確保。残った容積にエンジンや足回りなどの機構を押し込んだ スバル360の 半世紀 2

スバル360の場合、最初に乗員空間を確保したことにより、残った容積にエンジンや足回りなどの機構を押し込むことになった。それで採用されたのがバルブ機構のない2サイクルエンジンであり、水回りのパーツが省ける空冷システム、さらにフロントがトレーリングアーム、リアがスイングアクスルの簡素な機構を持つ独立懸架サスペンションだった。


その分、ドアの内側やインパネの下などに物を置く空間が確保されていて、使う人の利便性をよく考えてある。60年後期型のためシフトパターンは縦Hで、2、3速がシンクロメッシュとなる。ステアリングに隠れて少し見にくいが、クラッチペダルの右下に、ヘッドライトビームのハイ、ローを切り替えるフットスイッチが付いている。

そして曲面を多用したボディにより、必然として採用された後ろヒンジの左右のドアも、和服を着たままでも乗り降りしやすいと評判になった。


リアシートは、以前は左右それぞれ独立したものだったが、この時ベンチ式となった。

 使う人の道理に合った道具を造る……工業製品として極めて機能的で、誰からも親しまれるデザインを持つスバル360。半世紀後の今、あえて現行車に問うてみたい。この機構は使う人にとって便利なものなのか? このデザインは見る人にとって心地よく感じる形なのか?


スピードメーターだけしかない、シンプルなインストルメントパネル。

 走りや乗り心地は快適だと思えるか? 日本にとって自動車産業は、経済活動の根幹をなすほどに成長した。だが、使う側にとって、開発陣の心意気が感じられるようなクルマは、そうないように思う。
 現在でも、クルマという道具を考えるうえで、スバル360は、まさに上質なお手本であるといえよう。


燃料キャップには、ガソリンと2サイクルオイルの混合比率、25:1を示す文字が入っている。


掲載:ノスタルジックヒーロー 2008年 08月号 vol.128(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Isao Yatsui/谷井 功

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