今回紹介するダットサン510のオーナーは、クラシック・ジャガーのプロフェッショナルメカニックである女性。以前はドリフトに魅せられて、そのエキサイティングな世界にどっぷりと浸っていたが、ある日、名も知らない古いクルマを見かけ、そのルックスにあこがれた。その後、縁があって現在の愛車と出合うのだが、この出合いがオーナーのクルマと向き合う生活にも大きな影響を与えることになったのだ。
【1969年式 ダットサン 510 Vol.1】
リアルタイムで旧車を体験した世代から、羨望の眼差しで見ていた世代、平成の世になって旧車を二次体験する世代、そしてこれから免許を取る少年たちの世代まで。旧車に対する時間軸上の立ち位置が違っていても、旧車は誰にでもその魅力を訴えかけてくる。それは場所を問わず、そして男女差すら時に問わない。
オリジナルの状態を保つダットサン510に愛着を感じてやまないのが、このクルマのオーナー。カリフォルニア州で生まれ育ったオーナーは、10年もの経験を持つクラシックジャガーのプロフェッショナルメカニックだという。
「実はダットサンどころか、日本旧車のことはよく知らないんです。50年代や60年代の『ジャグ』のことならわかりますけど」
照れながら自己紹介した言葉に謙虚さと自信が共存していた。
「中学生の時に何か趣味がほしいなと思い始めたんです。それからどうしてクルマが好きになったのか……ちょっと覚えてません。運転免許は16歳になった誕生日の翌日に一発で取りました」
本を読み込んですでにクルマの知識を得ていたオーナーは、周りの友達に引き入れられるようにすぐにドリフト競技を始めた。しかし日本から移住してきたオーナーの両親は特にクルマの嗜好はなく、クルマに対する情熱は理解してもらえなかった。
>>【画像14枚】フロントガラス前にあるのは1969年式までとなっているアンテナ。1969年式から平行式へ変更されたワイパーなど初期型ではベンチシートだった前席は1969年式からセパレートシートになり、併せてコラムシフトからフロアシフトに変更になった。シートはリクライニングこそしないものの、厚みがあり弾力的で座り心地はよく、今日でもその状態はまずまず。ハンドルの外周がかなりすり減っていた。イグニッションキーはステアリングコラムの左側に位置する。
運転席足下には小物入れ用のポケットが付いていた。そこには、カーナビのなかった時代のロードマップの束がそのまま収まっていた。クラッチペダルの奥のフットレスト代わりになったと思われる部分は、フェンダーの一部の内張りが丸くはげ落ちていた。ハンドプル式のパーキングブレーキは、ベンチシートだった1968年式の名残だろう。
【2】に続く初出:ノスタルジックヒーロー 2016年 6月号 Vol.175(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
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