約20年間にわたって、累計145万台以上が生産されたアヴァンギャルドな量産実用車|1975年式 シトロエンDS 23【3】

1975年式 シトロエン DS23。左右リアフェンダーは、ボルトで固定されているだけ。タイヤ交換時などには、簡単に外せる。マフラーは、各世代ともに、なぜかスポーティーな2本出しとされていた

【2】から続く

前身モデルのシトロエンDS19が与えた影響は、大衆だけでは留まらず、大手メーカーのロールス・ロイス社や、名設計者のスペン・キングにまで及んだ。そして、本記事では最終進化形のシトロエンDS23に触れる。

【輸入車版懐古的勇士 1975年式 シトロエン DS23 vol.3】

 シトロエンDS一族はデビュー直後から暫時進化を遂げ、発表翌年の56年には内外装を簡略化するとともに、パワーステアリングなどを標準装備から外した廉価版「ID」系を追加。その後もエンジンの排気量拡大や、ハイドロニューマチックのシステム改良などが施されていった。

 加えて、バリエーションモデルも続々と用意され、ワゴン版のファミリアール/サファリ(英国仕様)や、名門カロジエ(コーチビルダー)、アンリ・シャプロンがボディ架装を担当した2ドアオープンの「デカポタブル」。さらにショーファードリブン用に、同じくアンリ・シャプロンが製作した「プレスティージュ」などのラインナップも充実させてゆくことになった。

 また、英国でも生産が行われた結果、1975年7月24日に最後の一台がラインオフするまでの約20年間にわたって、累計145万台以上を生産。量産実用車としては信じがたいほどにアバンギャルドを極めた内容にもかかわらず、中・上級サルーンのフランス代表選手であり続けたのだ。

 今回ご紹介する一台は、シトロエンDSシリーズの最終進化形に当たる「DS23」。この時代には燃料噴射版「EFI」も選択可能だったが、この個体はコンベンショナルなキャブレター仕様。半自動変速機、Cマチックが組み合わされた一台である。

 最終型とはいえ、生産から半世紀近い時を経たクルマだが、宙に浮いたような乗り心地や独特の鋭い操縦性、そして油圧で中立に戻される「セルフセンタリング」がもたらす矢のような直進性など、すべてが魅力的に感じる。近年ではプジョー/シトロエン・グループにて重要な一角を占める独立ブランドとなった「DS」。その偉大なるオリジンが、今なお素晴らしいことを再認識させられてしまうのである。

【画像14枚】純粋な流星型を追求すべく、後輪トレッドを前輪から格段に狭めた特異なレイアウトがよく分かるリアフォルムなど


>>リアのオーバーハングが短く、しかも尻すぼまりの形状のため、ボディサイズの割にトランクスペースはやや小さめと見なされる。



>>ステアリングは、この位置が直進。コラム上部のCマチック・セレクターはスタータースイッチも兼ねており、左側まで倒すとセルモーターが回る。



>>前後シートは現代車の常識ではあり得ないほどにソフトな掛け心地だが、ホールド性も意外に悪くないのがシトロエンの不思議なところ。


1975 Citroën DS 23

全長×全幅×全高(mm) 
4874×1803×1470 ホイールベース(mm) 
3125 トレッド前/後(mm) 1516/1316
車両重量(kg) 1330
エンジン種類 水冷直列4気筒OHV
総排気量(cc) 2347
最高出力(ps/rpm) 115/5500
最大トルク(kg-m/rpm) 18.7/3500
ボア&ストローク(mm) 93.5×85.5
圧縮比 8.75:1
サスペンション ハイドロニューマチック


【1】【2】から続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2019年10月号 Vol.195

(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1975年式 シトロエンDS 23(全3記事)

関連記事:輸入車版懐古的勇士

関連記事:シトロエン

RECOMMENDED

RELATED

RANKING