「特例」特定小型原動機付自転車だったら楽しかったかも! まるでベスパみたいな電動立ち乗り2輪車

クラシックベスパをモチーフにした新タイプの立ち乗り2輪車

       

ベスパみたいなカウルの付いた、立ち乗り2輪車「Zスクーター」


 Zスクーターは、スペインのインダストリアルデザイン工房「ベル&ベル」が企画した乗り物。スクーターといっても、電動立ち乗り2輪車だ。

 このタイプで有名なのは、アメリカのセグウェイ。この商品はセグウェイを製造する中国のナインボット社の車両をベースにしたカスタム仕様といったところ。基本原理は、体を前斜させると前進、後斜させると後退、左右それぞれに傾けると左右それぞれに曲がっていく)。

 通常のセグウェイと何が違うかって、スタイリングがレトロなベスパをモチーフとしたカウルが付いていること。本家のセグウェイは、1本の棒状のものが伸びてハンドルまでつながっているというスタイルだけど、オシャレ度ではダンゼンこのZスクーターが勝っている。

 ましてやカウルのカラーリングも多数用意されており、オヤジ世代にはグッと来ること間違いなしのガルフカラーにマルティニカラーまで用意されているのだから、気にならないはずがない。

 スペックとしては、最高速度20km/h、走行距離25〜30km、最大荷重100kg、充電は3〜4時間の急速充電が可能となっている。バッテリーはアメリカの高性能電気自動車テスラ・モデルSに搭載する同型のリチウムイオンと高品質なものとなっている。

 いやいや、そんなまがい物じゃなくて、本物のベスパのほうがいいじゃんというなかれ!  現実問題としてベスパのクラシックスタイルを再現したP&PX系はすでに生産中止となっているし、70〜80年代ものとなると現存している物件を探すのがたいへんという状況。

 それなら現代的な電動立ち乗り2輪車というのもアリだと思う。でも、日本の場合、これで公道で乗ることはできないし、輸入代理店も存在しない。入手には相当な手間が予想される。それでも、私有地でしか乗れないぜいたくの極みというべき乗り物にこそ、オヤジ世代には注目してほしい!!

 とココまでは2018年、発表時の記事。

 アレ? もしかして特定小型原動機付自転車のレギュレーションにハマったりしない? と思うのが2023年現在。そこで特定小型原動機付自転車の基準をチェックしてみると……。

特定小型原動機付自転車とは?

・車体の大きさは、長さ190cm以下、幅60cm以下であること
・原動機として、定格出力が0.60kW以下の電動機を用いること
・20km/h超える速度を出すことができないこと
・走行中に最高速度の設定を変更することができないこと
・オートマチック・トランスミッション(AT)機構がとられていること
・最高速度表示灯が備えられていること

これらに加え、

・道路運送車両法上の保安基準に適合していること
・自動車損害賠償責任保険(共済)の契約をしていること
・標識(ナンバープレート)を取り付けていること

ということになる。

特例特定小型原動機付自転車とは?

 ちなみに、アタマに「特例」がついて、6km/h以下で歩道を走ることができる特例特定小型原動機付自転車は、この6km/h以下で走行する際に最高速度表示灯が点滅する機能が追加で必要となる。


 さて、Zスクーターが適合するかどうか。

 メーカーサイトによると長さはもちろんだが幅も60cmちょうどで、サイズはクリア。結構いい感じなのでは? と思ったが、定格出力が1.35kWとあるのでこの時点でアウト。
 また原動機付自転車としての保安基準に適合する必要があり、それには、基準に側したヘッドライトや、ブレーキ、バックミラー、ホーン、ナンバー灯、リフレクターなども必要となる。後付けでどうにかならないのか? と考えると、難しいと思われるのがブレーキ。機械式のブレーキを装着する必要があるので、機構上ハードルが高そうだ。

出力を絞りリミッターを付け、最高速度表示灯や保安基準に適合した各種装備をつけたとしても、物理的に機械式ブレーキを付けるというところがクリアできない限り、公道走行は難しいという結果に。

 ちなみに、同様のルーツを持つセグウェイが公道を走っているのは、実証実験で道路使用許可をとっているケース。やはり機械式ブレーキについては装着されていないので、ノウハウを活かすことも難しい。実際にセグウェイ系の乗り物を操作するとわかるが、制動は体重移動が必要。ブレーキレバーやペダルのたぐいはなく、急制動は腰を大きく落としながらハンドルを手前に大きく引くという動作となる。これで間に合うのなら、安易にそのままの姿勢でブレーキレバーを引いて車体の前に搭乗者が飛び出してしまうキックボード系より、次の回避アクションに移りやすいケースもあるかもしれないが、セグウェイと同様の制動姿勢を取りつつ機械式のブレーキで制動できるならキックボードのほうが有利かも。いずれにせよ安易にレバーを引いたりペダルを踏めば止まるといった乗り物ではないというところにネックがあるのは確かのようだ。

 また、もしレギュレーションに準じた装備ができても、自賠責保険に加入しなくては公道走行はできないので、それも注意が必要だ。

 とはいえ、こういったカウルなど遊びゴコロの要素がある乗り物のコンセプトは、諸々のレギュレーションをクリアした上で楽しめたらモビリティの選択の幅が広がるかもしれない。


【画像6枚】クラシックなスタイルが際立つフォルム。日本では私有地でしか乗ることができないが、そんなぜいたく品にこそ、オヤジ世代は注目だ!




>>ブルーにオレンジラインが映える往年のスポーツカーレースでおなじみのガルフカラー仕様。オヤジ世代にはたまらない設定といえる。


>>計器はオリジナルアプリでスマホと連携する。スピード表示や、走行距離、バッテリー容量などを表示する。アナログではなくすべてデジタル管理された現代的な仕様となっているのだ。


>>安全に配慮してスタンドが設置されている。本家のセグウェイにない装備で、本格的(?)な2輪車を意識した装備となっている。


初出:ノスタルジックヒーロー2018年10月号 Vol.189
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


関連記事:マイ・フェイバリット

photo:Takefumi Taniguchi/谷口岳史

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