アルトワークス、トゥデイ、ヴィヴィオ…排気量1リットル以下の熾烈な戦い|K4-GP 2022サマー【前編】

夏の富士スピードウェイでK4-GPが開催された。

       
コロナ禍の影響で昨年は開催の難しかったK4-GPだが、今年1月に久々に開催され、恒例の夏の10時間耐久も、予定どおりにお盆休みの8月16日に富士スピードウェイで開催された。
これまでと異なるのは、10時間耐久の前日に行われていた5時間耐久が少し離れた8月12日と、間隔を開けた状態での開催となっている点だ。
今回は16日の10時間耐久レースに絞ってリポートしていく。

【画像26枚】アルトワークス、トゥデイ、ケーターハムなどGP1~3クラスの上位車両とビートなど注目の90年代車両

競技内容は従来と基本的に大きな違いはないが、車両区分が改められた。AT専用だったGP-1クラスは、自然吸気と過給機付きクラスに分けられることになり、ミッションがATということでこのクラスに含められていたサーキット専用車のRクラス車両が、本来のクラスであるGP-4/GP-5に移された。 といっても、現状これによって移動したのはロータス23のレプリカ、MAD23ATの1台のみで、大勢に大きな影響はなかった。

また、量産車クラスのGP‐2クラス(自然吸気エンジン)とGP-3クラス(過給機付き)が、それぞれ旧規格車両と1998年以降の新規格車両のふたつに分けられたことが挙げられる。 新規格と旧規格では車両重量が異なり、新規格車両が燃費面で不利となることから、新規格車両の燃料をプラス5リットルとした。
ただ、新規格車両はエンジン制御も進化し、排出ガス対策の点から、薄い混合気で性能が発揮される設定となっているため、一概に新規格車が不利だとは断定できないかもしれない。実際、旧規格車両では、コンピューターチューンで薄い混合気としているところもいくつかあるようだ。

K4-GP2022 サマー【後編】へ

GP-1

今回からAT車の自然吸気エンジン(GP-1-N)と過給機付きエンジン(GP-1-T)でクラスが分けられた。
供給燃料量はGP-1-Nクラスが90リットル、GP-1-Tクラスが95リットル。AT車は燃費が悪いため全クラス通じて最も多く燃料が使える規定となっている。
またこれまではミッションがATならすべてGP-1というクラス分けでGP-1に入っていたRクラスのMAD23AT(過給機付き)がGP-5クラスに移行された。

今回の参加は自然吸気車が4台、過給機車が3台の計7台が参戦。GP-1-Tクラスはスズキ アルトワークスが198ラップを走破して優勝したが、GP-1-Nクラスの優勝車ホンダ トゥデイも197ラップを走破し過給機クラスと遜色ない成績を残した。
アルトワークス
>>GP-1-Tクラスで優勝を果たしたアルトワークス

GP-2

850cc以下の自然吸気エンジンを使うMTの量産車クラスがGP-2だが、このクラスも今回からふたつに分けられた。いわゆる旧規格の軽自動車がGP-2クラス、新規格の軽自動車をGP-2-Fクラスという区分けだ。
燃料量はGP-2が80リットル、GP-2-Fが85リットル。

参加台数はGP-2クラスが24台、GP-2-Fクラスが25台とほぼ同数。これまで過給機クラスのGP-3が燃費面で不利だったため、このクラスに人気が集まった経緯がある。
車重が軽くエンジン特性に優れたトゥデイが強く、K4-GPのレコードとなっている1000kmを9時間8分で走破した車両もトゥデイだった。期せずして今回はGP-2の上位3台がトゥディ、GP-2-Fの上位3台がアルトという結果だった。
トゥデイ
>>GP-2(旧規格クラス)で優勝したトゥデイ。 

GP-3

850ccを超える量産車クラスのGP-3も今回から旧規格と新規格でGP-3、GP-3-Fと分けられるようになった。使用可能な燃料量はそれぞれGP-2に対してプラス5リットルとなる85リットル/90リットル。

参加台数はそれぞれ17台と8台。量産車ではまともに走れば最も速いクラスだが、燃料制限のあるK4-GPでは自然吸気のGP-2クラスが上回るケースも多い。
今回は、GP-3-Fクラスにケーターハム・セブン160が参戦。他の量産軽自動車と比べ群を抜く軽量ぶりで圧倒的優位に立ち、クラス2位に11ラップ差、旧規格のGP-3優勝車にも7ラップの差をつける圧勝だった。しかし、総合順位で見るとGP-2クラスの優勝車には1周およばなかった。
ケーターハム
>>GP-3-Fクラスで優勝したケーターハム・セブン160。

注目の90年代車両

1990年代にリリースされたいわゆる旧企画の高性能軽カーのK4-GP仕様車を紹介。

ビート
>>エンジンは高回転域まで気持ちよく回り、ミッドシップのハンドリングはスポーツカーを操る楽しさを満喫させてくれるものとして人気が高いホンダ・ビート。
その性能が見込まれK4-GPにも何台かのビートが参戦しているが、使用燃料量に制限がある規定のためエンジンを回して使うことができず、本来の性能域から下の回転領域に抑えて走らなければならず、高回転型エンジンの待ち味が存分に発揮できない状況にある。
おそらく、もう少し燃料規定が緩くなれば上位に食い込めるはずだが、現状では中団にとどまっている。

トゥデイ
>>660ccモデル最軽量バージョンの車重(カタログ値)は620kgと軽さが身上のホンダ・トゥディ。さらに軽量化を進め(合わせて剛性確保も必要だが)、エンジンを中速型にチューンすることでGP-2クラス最速の競技車両に仕立て上げることが可能。その端的な例が1000km/9時間8分というK4-GPのレコードホルダーがトゥディだということでも分かる。現在もGP-2クラスで最多のエントリー台数を数え、GP-2を制すにはトゥディが必須条件というより、トゥデイのライバルはトゥデイという状況になっている。


【画像26枚】アルトワークス、トゥデイ、ケーターハムなどGP1~3クラスの上位車両とビートなど注目の90年代車両

K4-GP2022 サマー【後編】へ


ハチマルヒーロー 2022年 11月号 Vol.74
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

text & photo : Akihiko Ouchi/大内明彦

RECOMMENDED

RELATED

RANKING