商用バンとして優位だった前輪駆動。ホイールのなかにブレーキがないインボード・ブレーキ|1972年式 スバル ff-1 1300G 4ドア バン デラックス

上下開きタイプのリアゲート。

       
昔は各自動車メーカーから、多くの乗用車型商用バンがラインナップされていた。
普段は乗用車のように乗れ、いざとなれば多くの荷物を積むことができる働き者たち。
今あらためて彼らの姿を見ると、懐かしい昭和の風景を思い出さずにいられない。

【1972年式 スバル ff-1 1300G 4ドア バン デラックス Vol.2】

【1】から続く

 車両重量増と振動の発生源となるプロペラシャフトを要するFR方式は最初からプランになく、FFを採用。しかし当時はFF方式に耐える信頼できるドライブシャフトジョイントがなく、等速ジョイントを東洋ベアリング(現・NTN)とともに開発した。これは現在のFF車に欠かせないものとなっている。スバル1000の特徴でもあり、運動性能の向上に役立ったインボードブレーキは、等速ジョイントの負担を軽減するのにも有効だった。

 スバル1000は1966年5月に販売開始。その前月には日産からサニー1000が発売されており、同年11月にはスバルカローラ1100が登場。小型乗用車は各メーカーの競争が激化する。カローラとサニーが排気量を1200ccに拡大するのと前後して、スバルも1969年3月に1100ccへと排気量を拡大し、車名をff−1に改める。さらに1970年7月にはff−1 1300Gへと拡大した。

 スバル1000にもバンの設定があり、マイナーチェンジ版であるff-1にもバンは引き継がれた。何よりも、FF駆動形式というのが、商用バンとして優位であった。プロペラシャフトのないFFでは、床面をライバルよりも低く設定でき、これにより荷物の積み降ろしがやりやすかったのである。

>>【画像23枚】ホイールのなかにブレーキがない。インボードドラムとなるフロントブレーキなど




丸形のメーターが2個並ぶ。左からスピード、右は燃料、水温計。スピードメーターは180km/hまで刻まれる。





デラックスグレードなのでラジオが標準装備されている。





フロントシートがセパレートなのは、バンではデラックスのみ。スタンダードではベンチシートのみだった。デラックスでもベンチシートは選べた。






ff-1 1300Gバンはデラックスのみが4ドアボディで、リアシートの乗降性を上げている。スタンダードは2ドアと4ドアが選べ、よりビジネス色が濃くなる。



1972年式 スバル ff-1 1300G 4ドア バン デラックス(A44)
SPECIFICATIONS 諸元
全長 3880mm
全幅 1480mm
全高 1415mm
ホイールベース 2420mm
トレッド前/後 1225mm / 1235mm
最低地上高 175mm
床面地上高 390mm
荷室長 1445mm(830mm 以下カッコ内は5名乗車時)
荷室幅 1205mm(1200mm)
荷室高 995mm(985mm)
車両重量 765kg
乗車定員 2(5)名
最大積載量 400(-)kg
車両総重量 1275(1040kg)
最高速度 155km / h
登坂能力tanθ 0.36
最小回転半径 4.8m
エンジン型式 EA62型
エンジン種類 水冷水平対向4気筒OHV
総排気 1267cc
ボア×ストローク 82.0×60.0mm
圧縮比 9.0:1
最高出力 80ps / 6400rpm
最大トルク 10.1kg・m / 4000rpm
変速機 フロア式前進4段後退 1段フルシンクロメッシュ
変速比 1速 3.666 / 2速 2.312 / 3速 1.480 / 4速 1.033 / 後退 3.636
最終減速比 3.889
燃料タンク容量 36L
ステアリング形式 ラック&ピニオン
サスペンション前/後 ウイッシュボーン / トレーリングアーム
ブレーキ前後とも ドラム式
タイヤ前後とも 6.15-13 6PR
価格 55.1万円


【3】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2016年 10月号 Vol.177(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 スバル ff-1 1300G 4ドア バン デラックス(全3記事)

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【1】から続く

photo:ISAO YATSUI/谷井 功

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