未来へ向かう、伝統芸。|BBS LM × メイクオーバー アウディS3

MOTOR THINGS 2023/05/04

S3とTT S、それも随所に気鋭のアウディ専門チューナーであるバランスイットのボディパーツが設けられたスマートなマシンだ。

時代が移ろい、世のハイパフォーマンスカーがどう進化しても、やっぱりBBS LMは、その性能と世界観を受け止めてくれる。
この伝統芸は決して立ち止まることなく常に前を向いている。

懐古主義ではなく、あくまで未来のプレミアムを提案し続けるアウディにしても、やっぱりBBSの伝統芸は似合う。と、再確認する2台だった。S3とTT S、それも随所に気鋭のアウディ専門チューナーであるバランスイットのボディパーツが設けられたスマートなマシンだ。そこに持ってきたホイールがBBS LMというのがニクい。気鋭のアメ鍛でも最新の国産ホイールでも、もちろんアウディ純正でも、無数に選択肢はあるのに、それでもやっぱりLMにとどめを刺す。

BBS LMのデビューは1994年と、紛れもなく長寿モデルである。姿カタチは変わらないのに、現行モデルにも違和感なく溶け込み、クルマの持ちうる性能と世界観をきっちり引き立ててしまう。奇をてらわずド直球でBBS哲学を訴えかける10本のクロススポークをはじめ、あらゆるレースレギュレーションやマッチングに対応するために必要から生まれた2ピース構造、サークル形状のセンターホールなど、どこをとっても機能美が宿る。この2台には前後とも8.5J×19インチサイズが装着され、タイヤはミシュラン・パイロットスーパースポーツだった。しかもこれはアンダーディスク仕様(裏組み)としてリム幅を稼いだもの。それに対して235/35R19サイズが綺麗に収まっている。また、ピアスボルトが直接リムに乗るディテールは、ホットハッチを彷彿とさせる。こうした仕様が実現できるのは2ピース構造ゆえ。BBSホイールの扱いに長けたメイクオーバーだからこそのコーディネートだろう。もちろん、カタログモデルであってもアウディ用のLMは豊富にそろう。17〜21インチまで幅広いサイズバリエーションを持つほか、新色も増えて6つものコーディネートがあるのがいい。

こうした無骨な機能美を訴えかけてくるものの、Y字状のクロススポークがリムに突き刺さるような形状を持って収束していく様は、どこかエレガントな風情もある。クールかつモダンな装いのなかに走りへの熱い気持ちを秘めたようなこの2台なら、BBSの新潮流にして最先端技術が詰め込まれたRI-Dなど5本クロススポーク系に行き着くのが自然かもしれない。しかし、往年のホットハッチを彷彿とさせるような伝統芸で攻めるのもまたいい。もちろん、姿カタチは変わらずとも、抜群の強度や剛性、長期的な信頼耐久性は折り紙つきだ。ちまたでは1000psを超えるようなモンスターマシンに耐えうる“強さ"を持つと評判である。そこはBBSブランド自体の伝統に加え、金属加工を地場産業として栄えた富山県高岡にあるBBSジャパンのきめ細かい設計開発能力、型鍛造製法に代表される生産能力が欠かせない。伝統芸はいつも極まっていながらにして、いつも進化を続けている。

このコーディネートは決して懐古主義でもなければ、奇をてらって無理くりネオクラシック風情に仕立てたわけでもない。アウディが表現するモダンスタイルに、BBSが育て続けてきた伝統芸がきっちりと調和している。それはまるで、過去に支えられて未来を切りひらいていくかのようでいて、そこにはどこまでもカスタムの可能性が拡がっているように思えた。


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1994年に登場したロングセラーモデル。10本のクロススポークで構成されるディスクを持つ鍛造2ピースホイールだ。これはディスクがダイヤモンドブラック、リムがシルバーダイヤカットというシックな仕様となる。

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真円状に窪むセンターパートはいかにもスポーツホイールらしい。これならどんなP.C.D.も許容し、実際にブランドや車種を問わず似合うデザインでもある。センターキャップのブラック×ゴールドは高級感満点の仕上げだ。

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ディスクとリムとを締結するピアスボルトが顔を覗かせる。これはディスクを裏組みしたことでディスク面ではなくリムにボルトが直接乗っている(現在は廃盤)。リムの存在感が強調されるようでもあり、ホットハッチっぽい雰囲気だ。


BBS LM SIZE & PRICE
https://bbs-japan.co.jp/products/1104/

https://www.make-over.jp/

初出:Audi Stylebook.2023

写真=小林邦寿 Kobayashi Kunihisa 文=中三川大地 Nakamigawa Daichi

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