常識ハズレのウルトラフェンダーズ!!

       
時は西暦2035年。高度な文明の発達と英知を身に付けた人類は、日常生活でのサポート役として人工知能を持つヒューマロイド型ロボットと共存する世界を築き上げていた。そんな近未来下における移動手段のひとつとして、自動車もロボット工学とリンクしたハイテクノロジーでの進化を遂げたのであった……。

とSF映画の作品紹介ばりの前フリでお届けする今月のカバーカーは、そんな世界観に基づく“数十年後の近未来を向いたクルマ”を超絶ボディワークで表現したその名も「アウディTTQ’」。ビルダーによる崇高なアートピースともいえるスタイリングは、知らない人ならば“アウディの新型!?”と見まがうほど。その芸術性に満ちた近未来的スタイリングは、2007年型アウディTTをベースに全身整形手術を介した完全オリジナル。大阪のカスタム工房「ガレージイル」の松浦ビルダーの前衛的なカスタムカービルドへのあくなき製作欲と野心が、「ユニバーサルエアー」下田氏をはじめとする協力者の後押しを得ることで具現化し、珠玉の作品とあいなったのだ。

構想ウン年、2013年のTAS出展に向けた製作日数1か月(!!)という超人級のスピードで完成へと導いたイル松浦流の空想科学アウディのフューチャーカー・コンセプトを語るうえで欠かせないのが、とあるハリウッドムービーのために製作された世界的に有名なアウディのドイツ本社によるコンセプトカーの存在。それは2004年公開、近未来のアメリカのロボット社会をテーマとしたSF映画「アイ・ロボット」で主演のウィル・スミス扮する主人公デル刑事の愛車を務めた2035年型の“アウディRSQ”だ。

架空の劇用車ながらも現実味を帯びた近未来のスタイル美に思わず魅せられ、自らのイメージとアイデアを温めたのち、市販車ベースでオマージュを注ぎ、カスタムしたのがこの1台。至高のムービーカーに敬意を表した、志の高いインスパイア作が「TTQ’」の神髄だ。

2代目TTクーペのフォルムの輪郭を生かしつつ、持ち前のアルミ製ボディを駆使したフューチャーカスタムは、現行版フラッグシップモデルのR8を余裕でしのぐ超迫力のダイナミックフォルムを見事演出。そのデザインワークのキモは、ストックボディでは到底収まらないランボのムルシエラゴ純正の極太13Jホイールを美しく飲み込む立体的なオーバーフェンダーでのワイドボディ化だ。

現代のエアロカスタムの常識を超越した近未来オーラ全開の造形美には驚愕だが、SFタッチのエキセントリックな個性を担う最大のアイキャッチが、アンダーカバーとサンドイッチ構造でタイヤ丸ごとをヒドゥンした異色の近未来デザインのリアフェンダー!! 

真円状のアーチからホイールディスクのみが顔を出す演出は前代未聞! しかも、タイヤ下部のカバーがエアサスの車高変化に応じて連動するので公道走行も実はこの姿のままでOK。置き物のコンセプトカーと一線を画す、れっきとしたストリートカーとしての未来形カスタムなのも実に衝撃的デス☆

ビルダーの柔軟な感性と前向きな志がCOOLで現実的な夢のあるクルマへと昇華させたこの1台。日本のカスタムの明るい未来を暗示するような2013年きっての走るSF超大作に拍手喝采っ!!

画像13点>>近未来のTTの全貌を見よっ!!


>>ガレージイルのビルダー松浦氏がこのクルマを製作するするキッカケは“RSQ”にインスパイアされたことだが、その近未来的イメージ(設定では2035年)から、ベースはアウディTT、ホイールはチタンシルバーのムルシエラゴ純正ホイール”ヘラクレス”を使うことを構想当初から決めていたそう。“RSQ” は前後の車輪ともエアロに隠れるデザイン(車輪が球体の設定)だが、さすがにハンドルを切ることができなくなるので、リアのみエアロで覆うデザインとした。



>>極太13Jホイールを飲み込む特徴的なリアフェンダーに合わせて、フロント9Jのホイールを覆うフェンダーもかなりワイド。ボンネット自体も若干ワイド化。ヘッドライト下のダクト部のデザインが秀逸だ。エアロ自体はファイバーワークと硬質ウレタンにて成形されており、フェンダー部とバンパー部の2ピース構造となっている。ちなみにチンスポ部分はウエットカーボンを採用。また、グリルは純正と比較し、2回りほどサイズダウンされている。



>>レンズの外郭、シルバーの部分は純正ではウインカーに当たる部分だが、純正レンズをカットすることでその部分をレンズ外に飛び出させアイラインへと加工した。また、ウインカーはFRPのバンパーにアクリルで埋め込む形とし、パープルペイント。点滅時は内から外へ向かって、光が流れる仕組みだ。バッドフェイスボンネットによって、より小さく見えるヘッドライトはグリルとのデザイン的バランスにより、純正位置よりも低めてセットされている。



>>未来的イメージを醸し出すため選んだホイールは、ランボルギーニムルシエラゴ用の純正ホイール“ヘラクレス”。18インチ/13Jの極太リムを、タイヤ丸ごと一切覆い隠す異色ワイドフェンダーが”TTQ’ “のアイデンティティーだ。バンパー、サイドステップ、フェンダーは3ピース構造となっており、車高ダウン時はホイールディスク面のみが顔を出す。エアサスで車高を上げると、このままカバー全体が上方向へとズレる形だ。走行時に支障とならないよう、タイヤカバー下半分は、上半分より多少外へ張り出す設計となっている。また、タイヤハウス全体がラウンド形状であるため、内側でタイヤが干渉しないようタイヤは引っぱり仕様とした。タイヤサイズは295/35R18だ。



>>幅広のリアフェンダーに対応させるため、ボディサイドはワイド化しエアダクトを持つ形状とした。ボディ全体はアルミ加工で形状を整え(TTはアルミボディ)、サイドに張り出した部分は硬質ウレタンを組み込み成形している。サイドシルは基本純正ラインだが、全体に合わせ、多少厚みを持たせた。



>>マフラーは3本出しデザインとして、アルミ製のテールエンドをリアバンパーに埋め込み。おかげで非常にスタイリッシュなリアビューに。リアディフューザー部にはウエットカーボンを採用した。



>>リアバンパーからガーニッシュ部分につながる造形は、流麗で美しい。スーパーカーらしい雰囲気を醸し出している。ちなみにガーニッシュ部は、スイフト用のグリルを2コイチして製作している。




>>エアサスはユニバーサルエアーのハイブリッドシリーズをセット。フルタップ式車高調とエアバッグが一体化したサスペンションのため、ギリギリ限界まで車高を低くすることが可能。で、サイドブレーキ横にはスイッチ式ではなく、タッチパネル式の集中コントロールユニットをセット。コレはパネルを触るだけで車高のアップダウンを可能とする集中コントローラーだ。未来的イメージを演出するにも一役買っている。ちなみにエアサスのアクションはフロント/バックで、プレッシャーゲージはダッシュパネルに埋め込んだ。



>>タイヤがまるで見えない前代未聞の特徴的リアビューがこのクルマ“TTQ’”の真骨頂。これにより、ワイドボディがより強調され宇宙船のようなルックスに。パッと見では、走るのかどうかすら不明ないでたちでもあり、2013年のTAS 会場では多くのギャラリーの間で話題となっていた。ボディカラーは、調色したグレーをベースにシルバーパールを加え、マット剤を混ぜたクリアを塗ることで、半ツヤのシルバーグレーとした。



>>リアフェンダー回りのイメージから走行への支障を気にする向きもいたようだが、車高を上げればなんら問題なく走る。コンセプトどおり近未来的イメージを具現化したフォルムは、まさにビルダーの腕のたまもの。高層ビル群や首都高などでは、妖しい存在感を見せつけた。



>>ローライダーからラグジュアリー、その過激でテクニカルなペイントワークで名を知らしめる「ガレージイル」。代表でペインターを務める松浦氏が、お家芸ともいえる派手なペイントを封印し、コンセプトワークに重きを置いた作品がこの"TTQ’ "だ。その精緻なファイバーワークが生み出す未来的造形美は、ガレージイルの新境地でもある。


カスタムCAR2013年3月号掲載
BASE CAR:アウディTTクーペ1.8TFSI
SOURCE:ガレージイル

PHOTO/谷井 功

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