「かっこいい仕事だと思う。父のあとを継ぎたいんです」専門職の父親の背中を追う娘 【4】親子で楽しむ2台のツーフォーティー

インスキップ親子はうらやましくなるほどの仲良し親子。2人とも日産車が大好き

       
S30の型式名を持つ初代の日産フェアレディZは、北米でダットサン240Zの車名であることはよく知られている。そして日本のS13日産シルビア(180SX)は、北米向けに2.4LのKA24E(DE)型エンジンを搭載して、240SXの車名になっている。父親の愛車が240Z、娘が240SX。2台の「ツーフォーティー」に乗って仲良くカーライフを楽しんでいる親子をたずねてみた。

【ニッポン旧車の楽しみ方 第43回 親子で楽しむ2台のツーフォーティー Vol.4】

【3】から続く

 クルマと接し続けたティーン時代から大学へ進んだインスキップさんは、エンジニアとして訓練を受けた。ところが心に思うところがあった。

「違うことを職業にしたかった」

 選んだ仕事は警察官だった。それも、かのカリフォルニア・ハイウェイ・パトロール(CHP)。カリフォルニア州内ではパトロールカーがフリーウェイを巡回する姿をよく見かける。飛ばし屋ドライバーには恐れられる半面、クルマ好きにしてみれば花形の職業だ。1990年に就職、12年間のパトロール勤務を通じて、自らが注力すべき興味ある分野が見つかった。盗難車対策の専門職だ。

 自動車盗難は、アメリカでも大きな社会問題になっている。

「例えばシボレー・カマロ。この4年間で2000台が盗難にあっています。専用装置を持っている連中は、わずか2分でクルマを盗んでいってしまう」

 盗難集団は車両を解体し部品として売りさばく。CHPにもたらされた情報を元にアジトに乗り込めば、時に危険な状況にもさらされる。

「拳銃を取り出さなきゃならないような場面にも出くわしたさ」

 言葉少なに説明した。インスキップさんの平和な一日は、早朝の町のパトロールから始まる。
「普通の格好で、普通のクルマで出かけます。目立ったり覚えられたりして連中に気づかれたらだめだからね。さり気なく、周りに溶け込むように」

 この道15年。なにせ大好きなクルマの知識を生かせるとあって、やりがいのある仕事だという。そんな父親の姿を見て育ったのが娘のサラさんだ。

「かっこいい仕事だと思う。父のあとを継ぎたいんです」

 今は父親と同じCHPの事務職として働くサラさん。実は取材のちょうど1週間前にCHPアカデミー(養成学校)の試験を受けたのだそうだ。結果はどうでした?
「ヘヘッ、不合格でした。体力テストに合格したら次に筆記試験なんですけど、プッシュアップ(腕立て伏せ)で失格。1分間に24回なんですが、できそうでできないものですよ」
 22歳のサラさん、まだまだ時間に余裕がある。お父さんの背中を目指して、これから体力づくりだ。


>> 【画像13枚】排気系は6-3-1にしている、有名ショップに頼んで組み上げ直したばかりのエンジンなど



>> ガレージに飾ってあったのは、珍しいライムイエローのZを、インスキップさんそっくりな人が運転しているというイラスト。それもそのはず、サラさんがお父さんの誕生日にプレゼントしたという、日本のイラストレーター「OZIZO」さんに依頼したワンオフ品なのだ。


初出:ノスタルジックヒーロー 2018年6月号 vol.187
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

親子で楽しむ2台のツーフォーティー(全4記事)

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【1】【2】【3】から続く

text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

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