【初代C30ローレルの軌跡 5】モータースポーツ由来のSOHCクロスフロー。G型エンジン

プリンスがルーツとなる4気筒SOHCのG18型

       
ハイオーナーセダンを目指して日産自動車が開発、1968年3月に発表、翌4月に発売された初代ローレル。C30の型式名を持つこのセダンが2018年に発売50周年を迎え、その軌跡をノスタルジックヒーロー本誌で記録するために、日産ローレルC30クラブの野村充央さんに寄稿していただいた原稿を、55周年の今、Nosweb.jpでも7回に渡って連載する。

【 初代C30ローレルの軌跡 Vol.5】

【4】から続く

 G型エンジンが小型軽量で高出力を発揮できたのは、高回転、高出力化に欠くことのできないオーバースクエアシリンダー、高速回転にも耐えうる5ベアリングクランクシャフト、高回転時のバルブサージングを防ぐSOHC機構、高速でもガス交換を確実にするためのクロスフローV型バルブ配置、バルブ径を大きくでき、燃焼効率のいい多球型燃焼室を採用するなど、充てん効率、熱効率が良くなるために考えられる機構を、可能な限り盛り込んだ結果である。クロスフローヘッド技術は、GR7B’型ツーリングカーレース用エンジンから受け継いだ。

 シリンダーブロックは、一体型の特殊鋳鉄製でディープスカート、5ベアリング方式の構造で、耐摩耗性に優れ剛性の高いものとなっている。

 シリンダーヘッドは、アルミ合金製で、燃焼室は、吸気弁用、排気弁用および主球より形成された3球型燃焼室形状で、同一ボリュームの燃焼室に対して表面積が最小となるため熱効率に優れ、炎のまわりもよく完全燃焼しやすくなっている。

 吸排気弁はV型弁配置で、シリンダー中心からそれぞれ25度傾斜している。この機構によって、新しい混合ガスがより多くシリンダーへ吸入されやすく、エンジンの吹け上がりがよく、高回転でもトルクの落ち込みの少ない優秀なエンジンとなった。

 シングルキャブレター仕様は、下向通風2バレル式でプライマリー側のメイン系統はソレックスタイプ、セカンダリー側のメイン系統は、ゼニスストロンバーグタイプの構造となっている。インテークマニホールドは、アルミ合金製で吸気慣性効果と各気筒への分配をよくする形状となっている。エキゾーストマニホールドは、鋳鉄製で1番、4番気筒と2番、3番気筒をそれぞれまとめ、エキゾーストチューブとの合流部で合流させるセミデュアル方式。

 G20型には、可変ベンチュリーSUキャブレターを2個装着し、さらに高出力化したものがある。このタイプでは、エキゾーストマニホールドもさらに排気干渉の少ないデュアル方式が採用されている。

 SUキャブレターは、イギリスのスキナーズ・ユニオン社が開発した製品で、欧州では多くの自動車に純正採用された。日本では、主に日立製作所がOEM生産し、高出力仕様のエンジン用にツイン装着され、スポーティー車両=ツインキャブレター装着というイメージ戦略の一端も担った。

 吸気負圧に応じてサクションピストンをコントロールする原理により、吸気流速がコンスタントに保たれ、同時にサクションの下側に取り付けられたニードルのテーパーにより適切な燃料が吸いだされる仕組みとなっている。サイドドラフト方式であることからツインキャブレター化に適しており、吸気マニホールドが短く直線的に設計できることで、吸気抵抗が少なく重量増加も最小限に止められる。また、構造がシンプルで部品点数が少ないのも特徴で、コストを抑えてプチ高性能車を設定するのには好都合なキャブレターであった。

 そこで日産は、スポーツモデルとしてSUツインキャブレター装着車を設定するという商品戦略を展開。A12型、A14型、L14型、L16型、L18型、L20型、L24型といった日産鶴見設計の幅広いエンジンバリエーションに、SUツインキャブレター仕様が存在した。

 一方、荻窪設計(旧プリンス)ではSOHCクロスフローエンジンとSUツインキャブレターとの組み合わせはG20型が唯一の事例となった。これも日産とプリンスの合併が生み出した遺産のひとつと言えよう。


>> 【画像28枚】クロスフローレイアウトや、V型弁配置がわかるイラストなど



V型弁配置、多球形燃焼室のヘッド構造は、大口径バルブによる高充てん効率と、均一な炎の伝播による安定した燃焼の相乗効果で、高出力と低燃費を両立させている。


【6】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2018年6月号 vol.187
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

初代C30ローレルの軌跡(全7記事)


関連記事:ローレル



【1】【2】【3】【4】から続く

text : MITSUOU NOMURA/野村充央 協力 : 全日本ダットサン会歴史研究部 資料提供 : 日産ローレルC30クラブ、野村充央

RECOMMENDED

RELATED

RANKING