月の魔力に包まれた、革新を続ける伝統芸。|BBS LM Selenite Brown × Black Diamond Cut

MOTOR THINGS 2023/05/29

BBSの伝統芸が、装い新たな限定色をまとって目の前に現れた。今回はセレナイトブラウン×ブラックダイヤカットの組み合わせ。見る者を捉えて放さない月の光のような美しさをたたえている。

伝統芸は常に進化する。現状に胡座をかかず、弛まぬ進化を続けるからこそ伝統芸として認められるのだとも思う。BBSジャパンの看板銘柄であるLMを見ていると、それを如実に感じる。パッケージとしてはアルミ鍛造製法による2ピースホイールだ。デビューから30年近くが経つというのに、基本的な姿カタチを踏襲して今も最前線を突っ走る。

弛まぬ進化とは、常に最新型を見越したサイズ拡充などが挙げられる。並行して常に新しい表現を模索してもいる。毎年のように登場するリミテッド・エディションなどが象徴的な事例である。

2023年に登場したのはセレナイトブラウンディスク×ブラックダイヤカットリム(SNB-BKD)という仕様だった。ぱっと見た感じ、既存のカタログモデルにあるダイヤモンドブラック系のようなディスクながら、光が差し込むにつれセレナイトブラウン“らしさ”が浮かびあがるのがおもしろい。透明で光沢感のある鉱物の一種であり、ギリシャ語“月”を意味するのがセレナイトだという。その言葉通りに、見る角度や光の当たりかたによって、奥ゆかしい輝きを放つ。LMの定番に挙げられるゴールドやダイヤモンドシルバーが太陽だとしたら、セレナイトブラウンはまさに月のような存在である。闇夜の中で妖しい輝きを放ち、見る者の心を捉えて放さない。センターに置かれるゴールドのセンターキャップも、より輝きが増したかのようだ。

ディスクとリムとでトータルコーディネートできることこそ、LMに限らずマルチピースホイールの強みだ。そこでセレナイトブラウンの艶やかさをより引き立てるのが、ブラックダイヤカットのリムだ。既存のアプローチでいけば、ブラック系のディスクはより鏡面に近い光沢感を持つブライトダイヤカットリムを組み合わせてきたが、今回はあえて虹色に輝く通常のダイヤカットとした。ピアスボルトもブラックで落とし込んだことで、よりダイヤカットリムの存在感が引き立つ。奥ゆかしきディスクと、存在感を強調するリムとのバランスがいい。これなら車種やボディカラーを問わず似合いそうだ。期間限定だからといってサイズに縛りが設けられるわけではない。LMの幅広いラインナップすべてをこの仕様に持っていくことができる。

こうした色や仕上げの妙技を毎年のように送り出せるのは、BBSジャパンが有する高い開発能力に加え、オートメーションの塗装設備を含めた最新鋭の工作機械と、さらに職人技術とが共存する生産体制があってこそだ。BBSジャパンといえば金型鍛造技術がいつも脚光を浴びるものの、塗装や加工も、また鍛造製法と並んで世界最高峰である。

BBSジャパンは塗装や仕上げに関して、常に新しい表現方法を開発し、事あるたびにこうして世に提案している。今回のリミテッド・エディションは2023年8月末日までの販売とされた。この仕様に魅力を感じたら、もう悩んでいる時間などなさそうだ。期間限定であるがゆえの希少性もまた好きモノにはグッとくる。雲に遮られなければ毎日顔を出す太陽とは違って、満月になる日なんて月に一度ほどしかない。そんなレア感を噛み締めながら、LMという伝統芸でいつまでも月の魔力に取り憑かれていたい。


wheel
SNB-BKDは2023年3月1日〜8月末日までの期間限定販売カラー。LMが有するすべてのサイズに適合し、価格はLMの通常モデルに対して5,500円(税込)アップとなる。



BBS LM SIZE & PRICE
https://bbs-japan.co.jp/products/1104/


初出:MOTOR THINGS ISSUE02

写真=中島仁菜 Nakajima Nina 文=中三川大地 Nakamigawa Daichi