コンパクトな車体に美麗なパーツを満載した名車の登場だ。オーナーは老舗クラブである龍虎会の重鎮のひとりで、アート歴もデコトラ全盛期からの古参組と、まさにアートとともに人生を歩んできた功労者だ。
飾りのポイントはなんといっても美しくあることを信条としている。これは、飾りのすべてを龍虎会の御用達工房であった大日本工芸の功績によるものだ。小さいながらも造形は大胆に、そして加工は細かくという手の込んだものなのだ。
各パーツをみていくと、まずバンパーは、ラッセルもどしタイプのデザインをアレンジしてくさび型としている。サイドにスリット、中央にはアンドンスペースを大胆にあしらってオリジナリティは抜群だ。そしてミラーステーは、2種類の太さの角おこしパイプを4本組み合わせた繊細な作りのもの。
一転、バイザーはカラフルなアンドンを仕込んだ豪華な仕様の平型を採用。丸棒をアレンジした飾りを前面にあしらい、実に細かく作り込んでいる。だが、このクルマの美しさにおける象徴といえるのが、キャブトップのメインアンドンボックスとシートキャリアのコンビネーションだ。スラっとそびえ立つ造形は、目立ち度はもちろん高いアート性を備える。
サイドにも美しいアンドンを備えたシートキャリアは、3段ハチ巻きマーカーと王冠風のデザインとしているトップの丸棒で、大胆でありながらも緻密に計算された美しさを携えている。
まさに丹誠を込めて作り上げたクルマなのである。もちろん、美しさと存在感を示す色彩を象徴するのは、名匠・関口工芸が手がけたペイントとアンドン板による功績が非常に大きい。観せる部分をしっかり構成した鑑賞に堪える美しいアート車なのだ。
【写真6点】大胆でありながらも緻密に計算された美しさ。カミオン2009年2月号トップアートをもとに再構成