3種類あったW113。魅せるインテリアはエレガント|パゴダ・ルーフのメルセデス・ベンツ 280SL Vol.2

       
●69年式 メルセデスベンツ280SL

専用ボディで登場したW113  

特徴的なガルウイングドアで知られ、W198の社内コードを持つ300SL。

 その廉価版である190SLに続く、新たなSLとして1963年のジュネーブ・モーターショーでW113 230SLが発表された。

 190SLがセダンの改良版であったのに対し、230SLは最初からロードスターとして設計された。


優雅で高級感のあるメルセデス・ベンツ280SLのインテリア


関連記事:専門店で「リビルド」されたオールドメルセデスベンツ|パゴダ・ルーフのメルセデス・ベンツ 280SL Vol.3

 1967年には2.5Lに排気量が拡大された250SLに続き、68年に今回の撮影車である2.8Lインジェクション式直列6気筒SOHCエンジンを搭載した280SLが登場する。

 W113は大きく分けて3つのスタイルがあったことでも知られている。オープンカースタイルのソフトトップが付いたロードスター、脱着可能なハードトップが付いたクーペ、そして幌と幌収納部を取り払い後部座席が付いたカリフォルニア・ロードスターの3種類だ。

 それぞれが美しいスタイルを誇ったが、中でも、パゴダ・ルーフと呼ばれた脱着式のハードトップを備えたクーペのデザインは秀逸だ。

 真ん中を少しへこまし、空力を考えた理にかなったスタイル。決して高速走行を目指したものではなく、より快適に走らせるツーリングカーとしての役割を持たせたもの。これこそがオールドメルセデスベンツの魅力と言えるものだ。

 当時の価格で500万円程度。貨幣価値は2006時点の大卒の初任給で換算すると約3倍となっているので、感覚的には1500万円程度になるだろうか。

 オーナーとして有名なのは故・坂本九さん。米国ビルボード誌で「上を向いて歩こう(英題:Sukiyaki)」が1位になるほど大成功をおさめた芸能人だった。

 つまりこのクルマは一般の人には手に入るものではなく、当時を知る人が「今でいうと自家用ジェット機を持つような感覚だったのではないか」というほどだったのだ。




インパネはボディカラーと同色。ラジオはベッカー製。クーラーは純正オプションのフリッジキング。パワーウインドーを後付け装着し、開閉スイッチをコンソールに配置している。




インテリアのカラーはルーフの色に合わせて濃いブラウンとなっている。




アイボリーとブラックの2色があるパワーステアリング。オイルプレッシャーゲージ搭載。




メルセデスは2速発進なので1速レンジがない。また、手前がPと、現行車とは逆の配列となっている。ちなみにハイドロクラッチは新品に交換済み。



2010年の鈴鹿F-1グランプリ本線直前のクラシックカー走行プログラムでジェイソン・バトンが乗って周回。その際、サンバイザーに書かれたサイン。


掲載:ノスタルジックヒーロー 2011年6月号 Vol.145(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Ryota-Raw Shimizu/清水 良太郎

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