新車を再現したい情熱が、約40年前のラインオフタイヤを引き寄せた。5台の所有車を紹介|日産・スカイラインGT-Rを愛する男 中村実浩 Vol.2

       

仲間の協力と奇跡によって復活した「本物のGT-R」

 取材時、中村さん宅のガレージには6台のクルマが収まっていた。

そのうちの5台は下で紹介しているスカイラインたちで、どれも驚くほどコンディションがいい。

なかでも赤い4ドアのGT‐Rは抜群だ。

このクルマには中村さんの、いやGT-Rファンの並々ならぬ思いが詰まっている。



 GT-Rを隅から隅まで知り尽くした中村さんが手掛けたこの赤いGT-Rの凄いところは、全てを当時のオリジナルにこだわって造り上げていることにある。

「完全な新車を再現したいと思って。当時買えなかったからこそ、そのこだわりが強かったんですよね。どうしても新車に乗ってみたいと思ってね」とその理由を語る。



 じつはこのクルマは、16歳のときに中村さんの父が買った、〝あの〟GT-R。

33年間、中村さんが大事に乗ってきたクルマであることに大きな意味があるのだ。

だからこそ、その作業と熱意に多くの人が協力してくれた。



 15年前にレストア作業を始めたとき、ひとつの〝奇跡〟が起こる。

当時のタイヤ、しかもラインオフ(出荷時)のものが見つかったのだ。

約40年も前のタイヤが、ひび割れもなく……。

これは奇跡でしかない。

このとき中村さんは「予算は関係ない。徹底的に仕上げて、本当のオリジナルを造り上げよう」と決心したそうだ。

この年代のクルマでキレイに仕上がっているものは多い。

しかし、完全オリジナルのクルマは、車種を問わず皆無だろう。

まさに日本、いや世界で1台の新車当時のGT-Rがプライベーターの手でよみがえった。




本文で紹介した奇跡のGT-R。

フロントグリルやバンパーなどは交換していない当時のモノだ。





中村さんのコレクションのなかで、10年近く所有していながら今回が初登場の秘蔵っ子という、1.8Lのバン改ワゴン。

ボディ外装はもちろん、内装のコンディションも良く、今すぐにでも走り出せそうな状態だ。





20年以上所有している4ドアのGT-R。

新車オリジナルとレースカーの良さを兼ね備えたストリート仕様を目指しているそうだ。

これができるのも中村さんならでは。

まずはエンジンから手を入れる予定。





近所の先輩が乗っていて30年前の18歳のときに出合ったというS54B。

すでに10万km以上走行しているが、内外装ともにコンディションは良い。

中村さんの手元に来たのは4〜5年前。

仕上げはこれから。





現役で走れるレーシングGT-R。

スチールのマフラーからは迫力のサウンドが響き渡る。

極上のS20型エンジンを使って、当時、黒沢元治さんが乗っていたオフホワイトの58号車を再現する計画を構想中だ。




掲載:ノスタルジックヒーロー 2011年12月号 Vol.148(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:RINO CREATIVE/リノクリエイティブ photo:Motosuke Fujii

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