これだけは絶対に譲らない。GT-Rサービスワタナベ、神様が手放さなかった1台|GT-Rの神様が愛した 72年式レーシング2000GT-R 1

       
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GT-Rの神様と呼ばれた伝説のメカニック

2019年、第1世代GT-Rと呼ばれるハコスカ、ケンメリオーナー、ファン、関係者の話題をさらったキーワードは、間違いなく「渡辺茂」だろう。

 渡辺茂さんは、佐賀県伊万里市に拠を構える「GT-Rサービスワタナベ」の創業者で、「GT-Rの神様」と呼ばれた伝説のメカニック。1971年に新車でKPGC10を購入以降、レース活動から始まり、18年11月に逝去するまでに300機を超えるS20型エンジンのオーバーホールを行うなど、その人生をGT-Rに捧げた。

 渡辺茂さんのエピソードは枚挙にいとまがないので、別の機会に譲るとして、逝去直後ではなく、日数が経過した19年に業界をにぎわせた理由は、11月15日から3日間にわたり、鈴鹿サーキットで開催されたイベント、「サウンド・オブ・エンジン」と併催された「SIGERU WATANABE MEMORIAL AUCTION」が開催されたからにほかならない。

 このイベントは、日本最大級のコレクタブルカーオークションを主催する「BHオークション」だ。「GT‐Rの神様として名をはせた故・渡辺茂氏。その全てをオークション」とうたわれ、ストックされていた主要部品が、鈴鹿サーキット特設会場に持ち込まれた。

幅広い種類の部品も出品

 その数は数千点に及び、来場していたあるGT-R専門店の代表が「点数はもちろんですが、ここまでの幅広い種類の部品は見るだけでも目の保養になる」といわしめたほど、壮観だった。

 前置きは長くなってしまったが、このサウンド・オブ・エンジンの走行イベントの目玉として用意されたのが、今回紹介する72年式のKPGC10レーシングだ。赤と白の日産ワークスカラーが施されたこのGT-Rは、渡辺さんがプライベーターとしてレースに参加していたマシンで、生前は「これだけは絶対に譲らない」と語っていた青春時代の形見で、精神的支柱のような存在だ。


足下にはゴッディのマグネシウム製ホイールとダンロップ製のレーシングタイヤを装着。当時モノなので走行は危険かもしれない。



助手席ドア下に見えるサイド出しデュアルマフラーは迫力のレーシングサウンドを奏でる。



リアウインドーに沿って上に伸びるブリーザーホースは燃料タンクのエア抜き用。逆側の場合もある。



運転席側Cピラーにはエアダクトも装着。助手席側には厚保サーキットの会員であったことを証明するバッジが入る。



エキゾーストマニホールドは通称モナカと呼ばれるパネルを溶接するワークス用。振動で割れないようにリブを設けて補強している。



プロペラシャフトは2分割タイプで、高回転で発生する振動を抑えている。R192デフにはアルフィンカバーを、リアスタビも装着した当時のレース仕様だ。


ノスタルジックヒーロー  vol.197 2020年 02月号(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Shinichi Yamazaki/山崎 真一 photo:Motosuke Fujii/藤井 元輔

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