スポーツカーの楽しさを日本に教えた伝道師MGミジェット 2

戦前スポーツカーの香りが漂うルックスと走り

 今回取材させてもらったTDミジェットは、ある有名コレクターが長らく所有してきた、日本国内に数あるTDの中でも最上級のコンディションを誇る個体。簡単な操作で前方に倒せるウィンドシールド、上部をカットアウトされたドアなどが、30年代に製作されたポストビンテージ期のスポーツカーの雰囲気を色濃く感じさせる。

 たしかにTCミジェットまでは前後とも「ライブアクスル(リジッドサスペンション)」ゆえに、ラジエーターが前車軸よりも後ろに配置されたヴィンテージ様式のプロポーションとなるが、こちらのTDも現代の目で見るなら十分以上にクラシック。実に魅力的なルックスと言えるだろう。

 豪奢な革張りのシートに座り、クラシックなコックピットの主となると、直立した大径ステアリングを胸の直前に抱え込むようなビンテージ的ポジションに気分がたかぶる。そしてエンジンを始動して走り出すと、その見た目の印象を裏切らない古典的な野趣を存分に味わうことができる。

 TC時代より若干ソフトになったとはいえ、この時代のスポーツカーとしてはかなりハードな乗り心地や、低速トルク指向型ののどかなエンジンフィール。あるいは、荒れた路面ではドアが勝手に開いてしまいそうなボディのよじれなどは、まさしくビンテージの残り香を感じさせてくれる。

 でもその一方で、TCまでのウオーム&ペグ式から近代的なラック&ピニオンに進化したステアリングは、明らかに軽くて正確。進化の跡がうかがわれる。とはいえ、正直に言ってしまえば50年代のモデルとしては明らかに古いのだが、このシンプルな野趣こそがアメリカ将兵、ひいては創成期の日本の愛好家にとっても「身の丈に合ったスポーツカー」となったと思われる。





ノスタルジックヒーロー 2018年2月号(Vol.185)掲載

text:Hiromi Takeda/武田公実 photo:Daijiro Kori/郡 大二郎

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