元祖ハイソカー|「シーマ現象」を巻き起こしたバブルを象徴する1台 Y31 シーマ

好景気に沸いた80年代中頃、ハイソカーブームに火を付けたのがマーク2 3兄弟なら、それに続きバブル経済で加速したのがシーマだ。デビュー年に4万台近くを販売し「シーマ現象」なる言葉も生み出した。

 国産車で初となる3ナンバー専用車のシーマは、その車格と端正なデザインから、独特の高級感を感じさせた。最近では走行安定性や北米をメインマーケットに設定したクルマ造りから、3ナンバー車はごく一般的となったが、今から20年前の国産車は今よりも一回り、二回り小さいので、シーマはとても大きく立派に見えた。「THE BIG CEDRIC/GLORIA」というキャッチコピーが印象深い。

 さらに強烈なインパクトを与えたのがエンジンだ。この当時の国産高級車は、たとえ3Lエンジンを搭載していても必ず5ナンバーサイズの2Lモデルを用意していた。しかしシーマは3L V型6気筒DOHCのみの設定と潔い。さらに上級グレードのタイプⅡリミテッドとなると、これにターボチャージャーで過給して255psを発揮。「キュイーン」という過給音とともにリアのエアサスを沈み込ませながら加速する姿はまるで、離陸直前のジェット機のようで衝撃だった。筆者も、その光景が脳裏に焼きついているひとりである。

 「速い」と「豪華」の両方を持ち合わせていたのだから、ほかの国産車はシーマの前ではひれ伏すしかなかった。まさに「国産車の王様」だったのだ。王様故に、月日を経ても風格は健在なのである。


ステアリングでオーディオやエアコンを操作できる光通信ステアリングスイッチは、下級グレード以外に標準装備。運転席パワーシートは全車に標準装備。


シート生地は写真のウールと混毛平織が標準設定。オプションで本革シート、ホワイトシート(本革)、シルクシート(西陣織風)が選べた。



ダンパー付きのボンネットを開けると、VG30DET型エンジンと対面する。ハイフローセラミックターボにより最高出力255psを発揮する。


純正のファッションキーは細かな造形で仕上げられている。



全幅1770mmの3ナンバー専用車としたことで、張りのあるボディが実現した。横長のテールランプが安定感あるデザインに見せる。



SPECIFICATIONS
90年式セドリックシーマタイプⅡリミテッド(E-FPAY31型)

全長×全幅×全高(mm) 4890×1770×1380
ホイールベース(mm) 2735
トレッド前/後(mm) 1500/1520
最低地上高(mm) 130
車両重量(kg) 1650
乗車定員 5名
最小回転半径(mm) 5.5
エンジン型式 VG30DET型
エンジン種類 V型6気筒DOHC
総排気量(cc) 2960
ボア×ストローク(mm) 87.0×83.0
圧縮比 8.5:1
最高出力(ps/rpm、ネット) 255/6000
最大トルク(kg-m/rpm) 35.0/3200
変速機 1速2.784/2速1.544/3速1.000/
4速0.694/後退2.275
最終減速比 3.900
ステアリング形式 ラック&ピニオン式
電子制御パワーステアリング
サスペンション前 独立懸架ストラット式
サスペンション後 独立懸架セミトレーリングアーム式
ブレーキ前/後 ベンチレーテッドディスク(前後とも)
タイヤ 205/65R15 93H(前後とも)
発売当時価格 436.5万円


ハチマルヒーロー 2009年 05月号 vol.11(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Isao Yatsui/谷井 功

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