自動車史の偉大な変革者アウディ・クワトロ 1


 フルタイム4WDシステムを持つスポーツモデルの先駆者たるアウディ・クワトロ。市販車、ラリーカーの双方で、ハチマル時代を代表する歴史的名作となったとともに、自動車の技術革新が急速に進んだこの時代を象徴づける一台とも言えるだろう。

 1980年パリ・サロンにおける正式デビューから遡ること1~2年前、78年ごろから欧州の自動車メディアの新車スクープコーナーを賑わしていたアウディ・クワトロ。日本でも、かの「PF先生」こと故ポール・フレールが、カーグラフィック誌に試作車の試乗記を寄稿。絶賛とともに紹介したにもかかわらず、筆者を含む当時の自動車ファンは「4WDのオンロード向け高性能スポーツカー」という可能性など、まるで考えられなかった。

 66年の英国に登場した「ジェンセンFF」という先達もあるものの、全輪駆動はあくまでオフロード向けのものと言うのが当時の常識。しかし、かのフェルディナント・ポルシェ博士の孫として生を受け、自身もポルシェで初代「911」や、レーシングプロトタイプ「917」などの傑作を手掛けた天才的エンジニア。のちにフォルクスワーゲン・グループを率いる経営者としても剛腕を奮ったフェルディナント・ピエヒは、まったく異なる独創的な見解を持っていたようだ。

 72年、技術担当重役としてアウディに移籍したピエヒは、76年に登場した二代目「100」で、今なおアウディのアイデンティティとなっている直列5気筒エンジンを初採用。クワトロには、一基のターボを組み合わせて200ps(本国仕様)をマークする2144㏄ユニットを選んだ。





ハチマルヒーロー 2019年5月号 Vol.53(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Hiromi Takeda/武田公実 photo:Jyunichi Okumura/奥村純一

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