ロードスターがリトラじゃなくなったのはなぜ?〈80Times〉旧車の疑問にズバリ答える!|ハチマル的Q&A Part 3

NAロードスターは1989年にリリースされたオープンエアのライトウエイトスポーツ。もちろん、初代モデルは国内はもちろん北米でも大ヒットして、世界的なオープンエアライトウエイトスポーツブームをもたらす。

1980~90年代にかけては日本の自動車史のなかでも希にみる発展を遂げ、既存のシリーズも新型車も高性能であり贅を尽くした設定のモデルが多数登場する。

それから40年近くが経過し、令和の今となってヤングタイマーとして人気車となっている。そんな時代のクルマたちを快適に維持していくための情報源として、「ハチマルヒーロー」誌の読者から寄せられた質問をピックアップして、自動車評論家の片岡英明さんがわかりやすく解説。

旧車の疑問にバッチリお答えする!!

関連記事:オートマじゃない! オートクラッチってなんだ? 旧車の疑問にズバリ答える ! ハチマル的Q & A Part 2

Q
NAロードスターに乗っています。リトラクタブルヘッドランプが気に入っているのですが、2代目のNBからは固定式ヘッドランプに変わってしまいました。それはどうしてなのでしょうか? また、オープンカーのソフトトップの手入れ方法を教えてください。

A
ユーノスロードスターのリトラクタブルヘッドランプ
最近は見かけることが少なくなったリトラクタブルヘッドランプ。ロードスターは初代のみ採用している


 80年代はリトラクタブルヘッドランプの全盛期だった。トヨタ2000GTが先鞭をつけ、SA22CサバンナRX-7がはやらせたリトラクタブルヘッドランプは80年代に一気に採用車が増える。スープラやRX-7、スタリオンなどのピュアスポーツだけでなく、エクサやプレリュードなどのパーソナルクーペも積極的に採用した。
 ハッチバックの3代目ターセル/コルサに至っては「リトラ」の名称すら与えている。スーパーカーに憧れ、国産車は猫も杓子もリトラクタブルヘッドランプを導入するようになったのだ。ユーノス・ロードスターは2代目にバトンタッチしたときに固定式ヘッドランプに変えている。ホンダのNSXもマイナーチェンジを機に廃止した。
 リトラクタブルヘッドランプが消滅したのは、デザインのはやりすたりが原因ではない。法規的な問題がからみ、スポーツカーまでも固定式ヘッドランプを採用するようになったのだ。EU(欧州連合)ではリトラクタブルヘッドランプを認めていない。
 厳密には「前方下方4度の視界を妨げるものであってはならない」というルールである。リトラクタブルでも、この基準をクリアできればいいのだが、実際は至難の業だ。そこでリトラクタブルヘッドランプが敬遠された。
 もともとはフランスの法規基準だったのだが、EUが発足し、加盟国全体の法規基準となったのでリトラクタブルヘッドランプを採用しなくなったのである。また、アメリカやカナダのようにヘッドランプの常時点灯を義務化している国も少なくない。世界中でクルマを売るためには、郷に従うしかないので、固定式ヘッドランプに変更したのだ。

ロードスター ソフトトップ
幌は耐久性が高いが、手入れ次第で寿命が変わってくるので気をつけたい部分だ。

 89年夏に登場したユーノス・ロードスターなどのソフトトップは、綿などの丈夫な布と塩化ビニールなどの樹脂からできている。ロードスターあたりからソフトトップはできがよくなり、耐久性も向上した。が、スチールルーフに比べると劣化しやすいし、キズもつきやすい。
 手入れは、まず油分や泥などの汚れを落としてやる。有機溶剤の入ったクリーナーは、ソフトトップの表面を傷めやすいから要注意だ。クリーナーを使うときは、まず目立たないところに塗り、幌が傷まないようなら全体に使ってみよう。ボディ用のワックスなどが付着したときは放っておかないで早めにふき取るようにする。幌が白っぽくくすんでしまう原因はロウ成分の付着だ。
 NA型ロードスターのソフトトップのリアスクリーンは、ビニール製である。これが汚れたからといって雑巾などでゴシゴシこするとビニール面がキズだらけになり、雨の日は後方確認がむずかしくなってしまう。
 リアスクリーンをきれいにしたいときは注意が必要だ。あまり丁寧にふかないほうがいい、と言うオーナーも少なくない。最近は樹脂パーツがピカピカになったり、スクリーンの水アカが取れるケミカル用品も出回っている。これを使うのも手だろう。
 汚れを取り去ったらアーマオールなどの浸透性分子結合剤を幌の部分に塗布してやれば柔らかさを保つことができる。
 ソフトトップを支えているリンク類も動きがシブくなったり、サビつくことが多い。年に数回、CRC5‐56などの潤滑剤を吹き付けてやると動きがスムーズになる。サビが出ているなら、サビを取り、サビが再発しないように処理してあげよう。年に何回か開け閉めし、日光浴させることも重要な手入れ法のひとつだ。



掲載:ハチマルヒーロー 2009年5月号 Vol.11(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)


text:Hideaki Kataoka/片岡英明 

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