ビギナーだけでなくあらゆるクルマを味わい尽くした上級エンスージアストにも応える古典的傑作 MG-B 2

スポーツカーのスタンダード

 現在、埼玉県加須市の「ワク井ミュージアム」に展示中のMG-Bは64年式。つまり「ツアラー」と区別される以前の最初期型マークⅠに相当する。これまでのオーナーが日常の足として使用してきた来歴から、内外装は相当に使い込まれた感があるが、それがかえって独特の魅力を醸し出している。

 機関は絶好調とのことで、この日の取材でもその走りを存分に楽しませていただいたのだが、とにかくストレスフリーで楽しいドライブとなった。長らく「スポーツカーの入門車」としても認知されてきたMGBゆえに、そのハンドリングは極めてナチュラル。ノンパワーながら軽いステアリングを切った方向に、長いノーズがスッと入るさまは、この時代のスポーツカーの美点を間違いなく感じさせる。

 旧式なOHVエンジンもフラットトルクで扱いやすい一方で、吹け上がりも非常に気持ちが良い。野太くものどかなエンジンサウンドとともに、ちょっと本気で走っても、あるいは流すようなペースでも、実に快適。カチカチと決まるシフトレバーも相まって、ブリティッシュ・ライトウエイト・スポーツの魅力が今なお色あせていないこと
を感じさせてくれる。

 今回のドライブで、MB-Bは昔も今も、スポーツカーを初めて操るビギナーだけではなく、あらゆるクルマを味わい尽くした上級エンスージアストの鑑識眼にも十分堪えうる1台であることを実感したのだが、この希代の名作の素晴らしさはそれだけにはとどまらない。現代においてクラシックスポーツカーの世界に飛び込もうとしている、あるいはかつての趣味を再開しようとしているファンにとっては、「敷居の低さ」も重要なファクターに違いない。

 例えばパーツの供給状態についても、英国車の特質ゆえに今なおモノコックから消耗品に至るまで、パーツ供給は良好である。これらの美点を勘案すれば、MG-Bこそ古今東西(残念ながら国産旧車も含めて)あらゆるジャンルのクラシックカーの中でも、最もリーズナブルな1台と言えるだろう。

 現役時代からクラシックカーとなった現在に至るまで、MG-Bは最高にフレンドリーな名作なのである。


コックピット
コックピットはなかなか快適。マークⅠでは金属板むき出しのダッシュは、その後、次第にクラッシュパッドが増やされた。

シート
平板に見えるが意外にサポート性の高いシート。4点式シートベルトはもちろんノンオリジナルだが、雰囲気は悪くない。

トランク
スペアタイアに一定のスペースは占められつつも、意外に実用的な荷室容積を誇「ブート(トランクの英国式表記)」。実用性も考慮したMGBのコンセプトがうかがわれる。


掲載:ノスタルジックヒーロー 2015年10月号 Vol.171(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Hiromi Takeda/武田公実 photo:Junichi Okumura/奥村純一

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