今だから語れる80日本カー・オブ・ザ・イヤー 第16回COTY受賞車 シビック

1995年は阪神・淡路大震災やオウム真理教の事件など、暗いニュースが続いた。が、近鉄バッファローズを飛び出した野茂英雄がメジャーリーグに挑み、日本人初の新人王を獲得。横綱の貴乃花が結婚したのもこの年だ。また、東京の臨海副都心では「ゆりかもめ」が開業し、九州自動車道も全通するなど、明るいニュースも多い。
 自動車の世界では、今につながるクロスオーバーカーの市場が広がりを見せている。94年秋にクリエイティブムーバー第1弾のオデッセイを送り出したホンダは、10月に第2弾としてクロスオーバーSUVのCR-Vを送り出した。エクステリアはラギッド感の強いSUVルックだが、中身はセダンをベースにしたものだ。モノコック構造のボディを採用し、サスペンションは4輪ともダブルウイッシュボーンの独立懸架である。また、コラムシフトの4速ATを採用し、ミニバンのようにウォークスルーを可能にした。
 CR-Vは幅広い層の人たちから支持され、クリーンヒットを飛ばす。このCR-Vより一足早くモデルチェンジして登場したのが日産のテラノだ。第2世代はクロスオーバーSUVの味わいが濃くなった。モノコックボディを採用し、フロントサスペンションは乗用車の主流となっているストラット式を採用。4WDシステムも、2WDや4WD直結を簡単に選べるオールモード4×4へと進化している。

 テラノはパワーユニットも豪快だ。ガソリンエンジンは3.2LのV型6気筒、ディーゼルターボは2.7Lに加え、パワフルな3.2Lエンジンを送り込んでいる。ディーゼルターボは、その当時、世界最先端を行っていた。
 軽自動車の世界にもクロスオーバーカーの波が押し寄せている。その代表が、パジェロの機能とデザインを軽自動車サイズに凝縮したパジェロミニだ。ビルトインモノコック構造を採用して軽量化を図っているが、2段の副変速機も装備する本格派である。タフな走りは評判となった。登場したのは94年12月だが、95年モデルとして第16回日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)の10ベストに残っている。
 CR-V、テラノ、パジェロミニと、クロスオーバーSUV3車が最終選考の10ベストに残った。これは大きなニュースと言えるだろう。

 オートキャンパーの魅力を携えて登場し、話題をまいたのがミニバンのボンゴフレンディだ。小型車枠に収めたミニバンだが、スペース効率は群を抜いて高い。電動でルーフが持ち上がり、テントの就寝スペースに早変わりするオートフリートップも注目を集め、10ベストカーの1台となっている。
 今の時代から見ると信じられないが、セダンも元気がよかった。10ベスト車のなかの6車がセダンだ。小型車枠を超えた上級クラスも勢いがある。この年、トヨタはクラウンとクラウンマジェスタをモデルチェンジ。10代目はフレームをモノコック化し、11月には横滑り防止装置のVSCを標準装備する4WDもリリースした。

 ライバルのセドリックとグロリアもデザインを一新するとともに、自慢の走りに磨きをかけている。ブロアムシリーズは快適性を高め、グランツーリスモシリーズは走りのポテンシャルを大幅に高めた。三菱のディアマンテも第2世代にバトンを託し、これらのライバルと肩を並べるプレミアムセダンに成長を遂げている。
 コンパクトカークラスも元気がいい。トヨタはベストセラーカーのカローラとスプリンターを8代目にモデルチェンジした。広いキャビンスペースを実現しながら最大で50㎏もの軽量化を達成しているのが注目ポイントだ。ワイドバリエーションを誇る三菱のミラージュとランサーも新型に生まれ変わっている。エンジンは8機種あり、V型6気筒をリーダーにDOHCターボやディーゼルターボを設定した。
 ホンダが満を持して送り出したのは、6代目シビックとセダンのシビックフェリオだ。3ステージVTECとCVTのマルチマチックを採用し、高性能と低燃費をハイレベルで両立させた。また、ホットバージョンのSiRは刺激的な走りを見せつける。フェリオには4DWも設定した。

 94年は新車のビンテージイヤーだったが、95年のニューカーはちょっと小粒だ。第16回COTYは激戦となったが、そのなかから「ミラクルシビック」の愛称で呼ばれたEK型シビックとシビックフェリオが抜け出し、イヤーカーの栄誉を手にしている。低燃費と高性能を高い次元で両立させた3ステージVTECエンジンと時代の先端を行くCVTのマルチマチック、そして優れたパッケージと充実の安全装備が高く評価され、票が集まったのだ。
 選考委員による特別賞は、電子制御トルクスプリット4WDのオールモード4×4と洗練されたパワーユニットなどでSUVの世界に新風を吹き込んだテラノに決まった。
 日本車よりもバリエーションが豊富で、賞取り合戦が面白かったのはインポートカー・オブ・ザ・イヤーである。イギリス勢はMGが久しぶりに市場に放ったオープンスポーツカーのMGFを筆頭に、レンジローバーがノミネートされた。ドイツ車はメルセデスベンツのEクラス、アウディA4、オペルヴィータの3車だ。

 この年はラテン系のコンパクトカーも頑張っている。フランスからはルノーのトゥインゴとプジョー106、イタリア車はアルファロメオ・スパイダーとクーペ・フィアットが名乗りをあげた。アメリカ車もクライスラーのストラトスとフォードのリンカーン・コンチネンタルが残った。
 そしてそのなかからインポートカー・オブ・ザ・イヤーの座を射止めたのはMGFだ。ミッドシップ・レイアウトの粋なオープンスポーツカーは、開票に入るやライバルたちを圧倒。イギリス車に初めての栄冠をもたらした。



先代のスポーツシビックに比べて、ホイールベースが延長された3ドアハッチバックモデルは、後席の居住性が向上した。



全車に運転席&助手席用SRSエアバッグを装備。85年に、レジェンドが日本初のSRSエアバッグを装備して以来、ホンダは積極的に同装備の導入を図ってきた。



ホットモデルのSiR・Ⅱは、バケットタイプの形状に加えて、ミックス柄を採用したシートがスポーティーな印象。



標準で15インチを装着するSiR・Ⅱ。エンジンは、最高出力170psを発揮する1.6ℓツインカム16バルブのB16A型を搭載。ちなみに97年には、同じ1.6ℓから185psを発生させるB16B型を搭載したタイプRが登場することとなる。



Dレンジに入れたまま、左下のスイッチで、スポーツ、ドライブ、エコノミーの3つのモードが切り替え可能な、ホンダマルチマチックを採用。



先代同様に、4ドアセダンモデルは、シビックフェリオを名乗ることとなった。



歴史的に見ても、91年登場のホンダ・ビートや99年登場のMR-Sなどと並び、希少な存在となるミッドシップエンジンのコンパクトオープンカー。手の届く範囲で楽しめるスポーツカーとして人気を博した。エンジンは1.8ℓのツインカムエンジンを搭載する。



ヘビーデューティー色が強く、角張ったデザインが特徴だった初代テラノから、曲面を使いソフトで都会的なイメージを持つSUVへと進化を果たした2代目テラノ。もちろんオフロード派の期待に応える走破性も兼ね備えていた。


掲載:ハチマルヒーロー 2014年 08月号 vol.26(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Hideaki Kataoka / 片岡秀明

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