初の3ナンバーボディとなったアコード。特別賞はスープラ!|今だから語れる80日本カー・オブ・ザ・イヤー 第14回COTY受賞車 アコード

       
1993年は激動の年だった。政治の世界では自民党が主導した55年体制が崩壊し、非自民党の細川護煕内閣が発足している。また、1月にそれ以上のビッグニュースが伝わってきた。曙が外国人力士として初めて横綱に推挙され、その直後には皇太子殿下と小和田雅子さんのご成婚が発表されている。

 自動車関連のニュースとしては、長野自動車道やレインボーブリッジが開通した。レースの世界ではウイリアムズ・ルノーを駆るアラン・プロストがF1チャンピオンに返り咲き、ナイジェル・マンセルもCARTのシリーズチャンピオンになっている。

 ニューカーも目白押しだ。1月に日産のローレルがモデルチェンジを断行。3ナンバー枠となり、風格が漂うワイドボディをまとった。軽自動車のトゥデイも個性派の2ドアセダンに生まれ変わっている。5月下旬には独立した丸型4灯式ヘッドランプを採用した、個性的な顔立ちのインテグラがベールを脱ぐ。その直後に日産は、プレミアム志向のミニバン、ラルゴを発表している。

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 が、走りにこだわるクルマ好きを狂喜させたのはスープラのモデルチェンジだ。A80系の型式を持つスープラは、FR時代のセリカと兄貴分のセリカXXの流れを汲む上質なスペシャリティスポーツである。ロングノーズ&ショートデッキのクーペボディに6気筒エンジンを組み合わせた。北米市場をメインターゲットにした80系スープラはワイドボディを採用し、それまでのウエッジシェイプから筋肉質のマッチョなボディに生まれ変わっている。


A80スープラは、直列6気筒3Lツインカム+ツインターボエンジンを搭載したスペシャリティースポーツカー。圧倒的な動力性能と卓越したハンドリングを誇り、見事特別賞に輝いた。


 スタイリッシュなフォルム以上に目を引いたのがメカニズムだ。プラットフォームは、この時代の最先端を行っていたソアラのものをベースにした。しかも4輪ダブルウイッシュボーンのサスペンションは、形式こそソアラと同じだが、リアは専用設計としている。エンジンは直列6気筒だけの設定だ。3Lの2JZ型系のDOHCエンジンで、自然吸気のNAエンジンとツインターボを設定した。トランスミッションもゲトラグ製の6速MTと5速ATを設定する。ブレーキも大径のディスクをおごった。

 93年の後半もニューカーラッシュに沸いている。この年は30回目の節目となるモーターショーが10月に開催されるため、各メーカーは8月のお盆空けから積極的に新型車を投入している。

 日産はスカイラインのモデルチェンジに踏み切った。前作のR32系スカイラインは大ヒットし、GT-Rも話題をまいている。この後継として送り出されたのが9代目のR33系だ。ローレルと同じようにワイドボディを身にまとい、エンジンも2.5Lの直列6気筒を主役の座に据えた。ちなみに、このときは基準車だけが新型になっている。また、マツダも新感覚ファミリーカーのランティスを送り込んだ。


 そして、9月上旬にはアコードもモデルチェンジを実施した。シビックとともにホンダの屋台骨を支えてきたを支えてきたアコードが5代目にバトンを託したのである。目指したのは、世界に通用する国際商品として高い資質を備えたファミリーカーだ。ボディは、販売の中心となっている北米市場を意識して、ひと回り大きくなっている。アコードとしては初めての3ナンバーボディだ。




 小型車枠からはみ出したのは、世界の最先端を行く衝突安全性能を身につけるためである。正面衝突だけでなく、時代に先駆けてオフセット衝突の対策も施した。ローノーズ&ハイデッキのダイナミックな造形で、サイドショルダーを膨らませてワイドスタンスの安定感あふれるフォルムとしている。まず4ドアのセダンが発表され、年明けの94年に2ドアのクーペとしゃれたステーションワゴンを仲間に加えた。

 エンジンは「F22B」の型式を持つ2.2Lの直列4気筒SOHC・VTECだ。サスペンションはダブルウイッシュボーンの独立懸架を4輪に配している。ちなみに10月には大きくなったアコードの穴を埋めるために、小型車枠のなかに収めた日本専用モデル、アスコットとラファーガを投入した。



 アコード発表の2日後に鮮烈なデビューを飾ったのが、ブランニューのワゴンRだ。スズキが放った意欲作で、限られたボディサイズのなかで広くて快適なキャビンを実現するためにミニバンの手法を取り、背を高くした。ベースとなっているのは、軽セダンのセルボモードだ。アップライトのハイトワゴンだから見晴らしがよく、運転しやすい。後席も開放的だ。ドアも運転席側1枚、助手席側2枚のユニークなものだった。



今や軽自動車の定番的フォルムとなったハイトワゴンフォルムをまとって登場したワゴンR。運転席側はドア1枚、助手席は2枚ドアというユニークなデザインも話題となった。その後ターボエンジン搭載モデルや4速ATモデルを追加していき、大ヒット作となった。


 これを追うように三菱ミニカが8代目にバトンタッチする。10月には世界初のミラーサイクルエンジンを積むユーノス800がベールを脱いだ。フルタイム4WDを主力に据えたレガシィもモデルチェンジを敢行している。FRスポーツクーペのシルビアもデザインを一新し、3ナンバー車に進化した。この直後に開催された東京モーターショーは見どころが多かったのである。

 そして、これらのなかから93‐94日本カー・オブ・ザ・イヤーの称号を勝ち取ったのはホンダのアコードだ。時代の先を行く安全性能を備え、パッケージングにも新しさを感じさせる。前席だけでなく、後席も広くて快適だ。ファミリーカーとしての資質が高いだけでなく、走りの実力にも優れている点が評価された。

 また、特別賞は大接戦となった。スープラとワゴンRの一騎打ちとなり、一喜一憂の開票にハラハラドキドキした。そして、ついには1票差で特別賞にはトヨタのスープラが輝いたのだ。卓越した走り、運転する愉しさが選考委員から高く評価されたのだ。




5代目となり、ついに5ナンバー枠を超えて、3ナンバー専用ボディへと生まれ変わった。目指したのは、世界に通用するセダンとしてのサイズ感だけでなく、世界基準の衝突安全性能だ。ボディの拡大は、すでに販売の中心を担っていた北米市場を意識してのこと。ワイド&ロー、ローノーズ&ハイデッキのスタイリングがスポーティーセダンをイメージさせる。


主力エンジンは2.2Lの直列4気筒SOHC。シングルカムながら、1気筒当たり4バルブを採用。高出力と実用性を両立するために、可変バルブタイミング・リフト機構のVTECが装備されているが、これは高回転&高出力を狙ったDOHCモデルとは味付けが異なっている。
SOHCながら、燃焼室の中央部分にプラグを配置。プラグを傾斜させることでロッカーアームを避けている。




セダンとしての快適さとスポーティーさを兼ね備えた室内空間。
インテリアでは、安全性に配慮し、全モデルに運転席用&助手席用SRSエアバッグシステムをオプション設定とした。




掲載:ハチマルヒーロー 2014年 02月号 vol.24(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Hideaki Kataoka / 片岡秀明

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