築60年以上の立派なガレージに収まる5代目コロナ コロナHT2000GT 1

「一台のクルマに長く乗り続ける」単純なことのようで、実は難しい道のりだ。大好きなクルマを手放すことは誰もが躊躇するが、クルマの耐久性、生活環境の変化など、さまざまな要因が立ちはだかり、行く手をさえぎる。今回はそんな道のりを乗り越えてきた3人のワンオーナーを紹介してみよう。

戦後間もない頃、国産乗用車では1500ccと1000ccクラスのクルマがメインに生産されていた。1000ccクラスではダットサンセダン、1500ccクラスではプリンスセダンあたりが代表的な存在といえるだろう。
 一方トヨタの1954年以降の乗用車を見ると、1500ccクラスでクラウン、マスターを展開する程度。そこで、1000ccクラスのクルマとして開発されたのが、58年に発売されたコロナになる。
 コロナはクラウンを小型化したモデルで、乗車定員4名のボディサイズ、995ccエンジンを搭載し最高出力33ps/4500rpmの機動力を持っていた。
 1500ccクラスのクルマに比べて1000ccクラスのクルマは小型で取り回しが良く、徐々に民間の人々の交通手段として浸透していった。市場も成長し、各社は新たなモデルを次から次へと発売した。コロナも60年にフルモデルチェンジして2代目を発売開始する。


コロナ2000GTが収められた高橋さんの立派なガレージ。クルマもさることながら、趣のある造りで目を引く。左官職人だった高橋さんの父親が建てたガレージで、梁部分には手の込んだデザインが施されている。建ってからすでに60年以上がたっているという。

 高橋定一さんはこの2代目からのオーナーとして歴代コロナに数多く乗ってきた人物だ。トヨタ好きであって、あえてコロナに乗り続けてきた。
 高橋さんにとって最初のコロナは、60年式コロナセダン1000。初代の丸い印象のコロナから一変して、低い横一直線のフロントノーズを採用したモデル。全体的にも直線的でスッキリとした印象を受けるエクステリアデザインであった。
 この2代目コロナも、翌61年にはマイナーチェンジを行い、総排気量を1490ccへと増やしている。コンパクトなボディサイズであっても、力強い走りを求められた時代の流れであった。


予防安全思想を導入したという5代目コロナ。大型リアコンビネーションランプを採用し、車幅いっぱいの位置に装着。

 当時、高橋さんは20代で、周りにはクルマに乗っている人など少なかったという。免許を取るにも、隣の県まで足を延ばさなければならなかった時代だ。
 「一度、免許を失効してしまいまして、再度免許を取りに行きました。近くに免許を取得するところがなかったので、長野県の穂高というところまで行った記憶がありますね。最初に乗ったクルマはタクシー上がりのクラウンでした。タイヤの山もなく、室内のマットもない状態です。それでもタクシーだったクラウンは乗り心地がよかったですね」


仕上がり、安全性に定評のあった一体溶接構造のボディを採用する。

 クルマが珍しい時代に若かった高橋さんはクルマに乗り始めた。クルマに乗る必要があったというが、それ以外にも、クルマに対する魅力を感じていた。

エア・アウトレットルーバーは機能性も考慮されていたアイテムであったが、シンプルなデザインを採用することによって、より力強さを強調するアクセントともなった。

 「私が小さい頃はクルマなんてありませんでした。だから、クルマに興味を持ち始めたのはかなり後になってからだと思います。クルマに乗れば、自分の知らない場所へ自由に行けると思い、興味を持ち始めました。そして、当時は世の中も変わり始めていましたので、将来クルマ社会が到来するのではという予感もあって、クルマが気になり始めました」


掲載:ノスタルジックヒーロー 2008年 08月号 vol.128(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Nostalgic Hero/編集部 photo:INOMATA RYO/猪股 良

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