新車のごとく佇む旧車たち|Mind of One Owner 新たなスタートをともにしたブルーバード1200 3

「一台のクルマに長く乗り続ける」単純なことのようで、実は難しい道のりだ。大好きなクルマを手放すことは誰もが躊躇するが、クルマの耐久性、生活環境の変化など、さまざまな要因が立ちはだかり、行く手をさえぎる。今回はそんな道のりを乗り越えてきた3人のワンオーナーを紹介してみよう。

工場の一角には、410ブルーバード以外にもパブリカ、スバル360、フロンテといった旧車が並んでいる。

もったいないという意識をもってクルマに接してきたおかげで、古いクルマが増えていってしまったようだ。すべて中古車として手に入れたものだが、どれも美しくレストアされ、新車のごとく佇んでいる。

現在、自動車整備工場の多くを息子さんの世代に譲り、北原さん自身はクルマ以外の趣味、養蜂と畑を楽しんでいる。


シンプルなエンジンルームゆえに故障が少ないという。壊れやすい部品は汎用品と交換している。

 養蜂では、現行車両に乗って山間部を走り回っているという。畑は工場近くにビニールハウスを建てて、野菜作りに励んでいる。

おかげで、旧車に没頭するということはなくなってしまった。しかしながら、愛情をもって接してきたクルマたちは今でも大切な存在だ。


燃料ポンプはすぐに壊れるので、電磁式に交換したほうがいいという。
 
 「どのクルマも愛着がありますね。ブルーバードは一生懸命に働いた当時を思い出させてくれます。その他のクルマも、長年付き合っていると、気持ちが入ってしまいます。それぞれ、違う時期に手に入れたクルマたちですが、クルマを見るとその当時を思い出します」

 モノとして大切にされてきたのはもちろんのこと、ともに歩んできた自身の歴史も大切に記憶してきたクルマたち。気軽にクルマを購入できなかった環境だったからこそ、クルマに対する愛着心は大きく、そばに置いてやりたいという気持ちが一層強くなったのだろう。


ダットサンブルーバードと呼ばれていた410ブルーバード。プレートにはダットサンの文字が印刷されている。今では珍しくなったP410の型式もしっかりと刻印されている。

 40年以上も1台のクルマに愛情を注いできた北原さん。本人は今回の取材を終えた取材班に対して、
 「長い間、クルマを買い替えなかっただけで、旧車に乗っているという意識はありませんでした。ただ、古いクルマがもったいなかっただけですから。それなのに雑誌に取り上げてもらえるとは、正直驚いていますし、うれしい限りです」
と満面の笑顔を返してくれた。


リアのトランクルームは奥に燃料タンクがあり、下にスペアタイヤ。工具類もそのまま残っている。右側にはバンパーに掛けて使用するジャッキが収まっている。

掲載:ノスタルジックヒーロー 2008年 08月号 vol.128(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Nostalgic Hero/編集部 photo:TAKASHIMA HIDEYOSHIi/高島秀吉

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