昭和の時代。もったいなくて乗れなかったマイカー|Mind of One Owner 新たなスタートをともにしたブルーバード1200 2

「一台のクルマに長く乗り続ける」単純なことのようで、実は難しい道のりだ。大好きなクルマを手放すことは誰もが躊躇するが、クルマの耐久性、生活環境の変化など、さまざまな要因が立ちはだかり、行く手をさえぎる。今回はそんな道のりを乗り越えてきた3人のワンオーナーを紹介してみよう。

410ブルーバードはマイナーチェンジ後の411ブルーバードに席巻され、姿を消していったモデルだ。トランクルームが後方へ向けて下がる独特のデザインが不評で、411ブルーバードでは変更されている。しかし、北原さんは410のスタイルが気に入っている。

 「サイドラインが下がっているのが欠点といえば欠点かもしれませんが、今となってはこのデザインがいいと感じます。買った当時はまず、そのピカピカな車体に感動しましたね。クルマとしての造りもガッチリとしていて、全体から感じられる力強い風貌が今でも大好きです」


 クルマを買ってからしばらくは、もったいなくて乗れなかったという。「移動は電車の方が多かったかもしれない」と当時を振り返る。

クルマがどれほど大切だったかが分かるだろう。クルマの保管場所はその都度変化し、空いたスペースへ押しやられることが多かった様子。それでも、一度手に入れた410ブルーバードを手放すことはなかった。



8トラックのカセットやラジオはいまだに可動する。動かなくなってしまったのは時計ぐらいだという。
 
 「クルマを入れ替えることなんかできませんでした。何よりももったいなくて、新しいクルマを買う気になれなかったんです。クルマに限らず、古いモノに対して、何でも愛着心がわいてしまうんです」

 クルマに乗る機会は少なかったが、クルマでの旅行は楽しい思い出を残してくれた。兄弟の住む愛知県まで6時間かけてドライブしたり、親を乗せて霧ヶ峰まで行ったりと遠出も多かった。
「クルマなんか乗ったことのなかった父が喜んでいました」とうれしそうに当時を振り返る。そんな思い出とともにブルーバードとの付き合いは40年を超えた。


シートカバーは当初ついていたカバーから型紙をおこし、純正と変わらないカバーを作ってもらったという。購入当時からカバーが付いているので、シート表面は当時の美しさを保つ。

 日々を重ねるごとに、いくら大切にしていても、不具合が発生してしまう。特にサビには悩まされたという。

 「サイドシルが錆びてきてしまって、板金をし直しています。特徴的なサイドのプレスラインから下は再塗装しました。でも、サビ以外はそれほど苦労していません。

エンジンも単純ですし、壊れることもありませんね。驚くことにエンジンマウントも当時のままで、変な振動もなく機能しているんですよ。エンジンルーム内でいえばガソリンポンプを電磁式にして、イグニッションコイルとケーブルなどを換えていますね」



 プレスラインから下を再塗装したということだが、それ以外は当時のまま。今と比べてメッキの質も良く、バンパーやホイールカバーも当時のままだという。補修パーツに関してもコツコツと集め、万全の対策が取られているようだ。

 「板金修理できるところはいいんですが、ぶつけたりしてプラスチックが割れてしまったら、修理なんてできないですから、ウインカーのカバーなど、パーツは当時から気を付けてストックしてます」


室内のカーペットも鮮やかに当時のカラーを維持している。

掲載:ノスタルジックヒーロー 2008年 08月号 vol.128(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Nostalgic Hero/編集部 photo:TAKASHIMA HIDEYOSHIi/高島秀吉

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