今だから語れる日本カー・オブ・ザ・イヤー 第13回COTY受賞車 マーチ

1992年はイケイケゴーゴーだった日本が、バブル景気の終結を迎えた年である。だが、まだバブルの名残が漂っていたことも確かだ。3月に長崎・ハウステンボスが開園し、東海道新幹線には「のぞみ」が新設されている。

秋には山形新幹線も開業した。海外ではフランスにユーロディズニーランド(現・ディズニーランド・パリ)がオープンした年だ。2月にアルベールビルで冬季オリンピックが開催され、その半年後にはバルセロナで夏季のオリンピックが開催されている。

 自動車業界も元気だった。バブルの絶頂期に企画され、開発されたクルマが市販に移された。

先陣を切って発表されたのが日産のコンパクト2BOX、マーチである。

年が明けるや、9年ぶりにモデルチェンジを断行し、2代目が登場した。初代よりホイールベースを60㎜延ばし、エクステリアもストレート基調からふくよかなオーバルシェイプに変わっている。


 これを追うようにトヨタは10代目のコロナとエスティマをダウンサイジングしたルシーダ/エミーナを投入。

春にはカローラとスプリンターの4ドアハードトップ、セレス/マリノを送り出した。

秋にはマークⅡ/チェイサー/クレスタ3兄弟を一新し、3ナンバー車に成長させている。


 ユーノス、アンフィニ、オートザムなど、販売チャネルを広げたマツダも負けてはいない。

ユーノス500、MX‐6、MS‐8、クレフ、AZ‐1などの新ブランドモデルを矢継ぎ早に放った。

この時代のマツダの作品は、走りのよさをアピールしているだけでなくデザインも世界の最先端を行っていた。



 また、RV戦略を積極的に推し進めていた三菱は、ランサー/ミラージュのステーションワゴン(商用車モデルのリベロカーゴも設定された)にあたる、リベロを市場に送り出した。

主力モデルのギャランとエテルナもモデルチェンジし、4ドアハードトップのエメロードも仲間に加えた。

3ナンバー専用車となったギャラン/エテルナ、エメロードが搭載したのは新設計のV型6気筒エンジンで、一クラス上の上質な走りをチャームポイントにした。


 富士重工も軽自動車のヴィヴィオに続き、インプレッサを発売している。前年、シビックが日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝いたホンダは、斬新なトランストップ採用のCR-Xデルソルとドマーニをリリースした。


 老舗のいすゞは91年12月にSUVのビッグホーンが2代目にバトンタッチする。

まずロングボディがモデルチェンジし、翌92年3月には3ドアのショートボディが新しいボディを身にまとった。


 第13回の92‐93日本カー・オブ・ザ・イヤーは、山梨県河口湖町のフィットリゾートクラブで開催された。

10ベストにノミネートされたのは7社10台だ。

トヨタはコロナとマーク2/チェイサー/クレスタが残った。

日産はマーチが入っている。マツダはオートザムAZ‐1とユーノス500の2台がノミネートされた。


 ホンダはドマーニが残り、三菱はV6エンジンにファジー制御ATを組み合わせたギャラン/エテルナ/エメロードだ。

富士重工はヴィヴィオとインプレッサが勝ち残った。

SUVのなかで唯一ノミネートされたのは、いすゞのビックホーンである。


 この10台の中から抜け出し、し烈なトップ争いを演じたのが、マーチとギャラン/エテルナ/エメロードだ。

その結果、最終的に日本カー・オブ・ザ・イヤーの栄誉に輝いたのは日産のK11マーチである。

新型プラットフォームを開発し、リアサスペンションもラテラルロッドを加えた5リンクを新設計するなど、日産の意欲作だった。パワーユニットも専用設計の直列4気筒DOHCだ。

1Lと1.3Lが用意され、1.3Lには扱いやすく、燃費もいい無段変速機のN・CVTが用意されている。


 マーチはヒエラルキーにとらわれないボーダーレス感覚の上質なファミリーカーであることが高く評価された。

大人4名が無理なく座れる高効率のパッケージングに加え、インテリアの質感も高い。

また、選考委員を納得させる軽快なフットワークとN・CVTによる優れたドライバビリティーも決め手のひとつとなっている。

愛らしい内外装デザインも好評だった。


 トータルバランスの高さなど、優れた商品性を武器に、マーチは日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)だけでなくRJCカー・オブ・ザ・イヤーも同時に受賞。

さらにヨーロッパでもカー・オブ・ザ・イヤーの栄光を手にし、国内外で3つのCOTYを受賞。

それを記念して、年明けの93年4月、特別限定車の「V3アウォード」を発売した。

その後、電動開閉式オープンのカブリオレやワゴンのマーチボックス、レトロ調マスクのタンゴなど、バリエーションを積極的に拡大していく。


 選考委員特別賞を受賞したのは、いすゞのビッグホーンだ。

SUVでありながらイルムシャーは身軽でリニアなハンドリングを、ハンドリング・バイ・ロータスはエレガントな大人の走り味を身につけている。

さえた走りに加え、3.2LのV型6気筒DOHCガソリンエンジンと3.1Lの新世代ディーゼルターボも高く評価された。


 この2代目のビッグホーンも、内外で多数の賞のタイトルを総なめにしている。

コマーシャルに「世界がBIGといった」のコピーを使うほどの自信作だったが、プロだけでなくファミリー派からも高い評価を獲得した。



タウン・スモール」をコンセプトに、日常の街中で使いやすいクルマを考えてデザインされた。ボディは先代に比べて全長で-4cmとサイズを縮小しているにもかかわらず、室内長は+6cm拡大している。

使い勝手に優れた5ドアは、1.3Lガソリンエンジン搭載の2グレードと、1Lガソリンエンジン搭載の2グレードの計4グレード構成。

マーチ
5ドア同様のエンジンを搭載する3ドアモデルは、1.3L、1Lとも、各3グレードずつの合計6バリエーション。

マーチ
97年にはカブリオレも追加され、後期型となっても堅調な人気を誇った。

マーチ
中間グレードA♯の室内。インストゥルメントパネルやアームレストなど、インテリアのマテリアルはいずれもやさしいカーブを描く。居心地の良さを重視した人にやさしいデザイン。

マーチ
独創的なパッケージデザインにより、ゆとりの居住空間を確保。シート形状も快適に乗り降りしやすい形状に設計されている。

マーチ
視認性に優れたメーター、操作性に優れたスイッチなど、使いやすさを徹底的に考えてデザインされた操作系。

マーチ
エンジンは1.3Lと1Lの4気筒ガソリン。新開発のツインカム16バルブだ。

マーチ
カタログでは、ヨーロッパの街中でのロケ写真が多用されていて、オシャレでキビキビ走る欧州コンパクトカーの雰囲気を感じさせた。実際に欧州カー・オブ・ザ・イヤーを獲得していることからもわかる通り、欧州でもその実力が高く評価された。


ギャラン
マーチに次ぐ票を集めたギャラン。新たにV型6気筒エンジンが用意され、堂々の3ナンバー専用ボディとなった。さらにこのギャランのコンポーネントから、クライスラー セブリングやダッジ ストラトスなどが生まれることとなる。

ビッグホーン
特別賞を受賞したのは2代目となる、いすゞのビッグホーン。ベーシックグレードのほか、ジェミニやピアッツァで好評となったハンドリングバイロータス、イルムッシャーシリーズも用意された。写真はハンドリングバイロータス。





掲載:ハチマルヒーロー 2013年 11月号 vol.23(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Hideaki Kataoka / 片岡秀明

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