今さらながら、大貴 誠って何者?|スバル360で素敵探検 大貴 誠のレディーバードの旅 第11回

2007年、大貴誠、OSK最後の公演のフィナーレ写真。大きな羽根を背負う男役トップスターの雄姿です。この人がレディーバードのヘッドライトの目玉を入れ替えたりしてるんですよ! (舞台製作/松竹株式会社)

歌劇スター出身の旧車マニアという変わり種(?)大貴誠をスバル360に導いた「ルーツ」をお見せします。毎回、愛車スバル360と一緒に古い街並みやチンチン電車を追っかけている(だけじゃなくて自動車修理なんかもしている)大貴誠は、きらびやかなレビューの舞台に立って、歌ったり踊ったりしていたのです。そのレビューの世界から、どんなふうにスバル360に行きついたのでしょうか?

 歌劇で男役というと宝塚歌劇団が有名ですが、OSK日本歌劇団も昨年90周年(2013年の時点での話)を迎えた歴史ある劇団です……といっても本誌読者の方には、どちらもあんまり縁はないかもしれません。この連載も「歌劇の男役? なんでその人がスバル360に乗って、ノスヒロに連載までしてんの?」と思われていそうです。燕尾服にシルクハット、羽根を背負った写真なんか見ると、これが地べたに座り込んでヘッドライトやプラグの交換をガンガンやってる人と同一人物なのか! って感じですが、大貴誠に言わせれば「レディーバードと大阪とOSKって相通じるものがある」のだとか。だからOSKのスターがスバル360と格闘するのは、すごく自然なことだそうです。

街並み クルマ
退団公演をした道頓堀の大阪松竹座にレディーバードで。正面玄関前は24時間車両通行禁止なので、ちょっと離れた御堂筋から撮影。交通量の少なくなる夜中の3時に撮りました……。


 劇団に入ってまだ若手の頃、あのコリアンタウンで有名な大阪・鶴橋のすぐ近所に住んでいました。下町育ちの大貴誠としては、巨大な商店街がとても気に入ったのです。当然、商店街のおっちゃんたちにはよくしてもらい、「今晩カレーつくりたいんだけど、どうしたらいい?」「そんなら今日はこの肉がええで!」なんて美味しくて安いのを教えてもらったり、休みの日には自転車でそこら中を走り回って、アーケードの裏側に残っている戦後そのままみたいな建物や、古い看板、タイル張りの冷蔵庫なんかを発見して、うっとり眺めたりしていました。そんなふうにして大阪の町の魅力に目覚めていくうちに、そっち方面のアンテナが研ぎ澄まされて、スバル360を「発見」しちゃったんですから。大貴誠にとって、大阪とレディーバードは切っても切り離すことはできません。


クルマ 街並み
歌劇団に入団した頃からずっと気になっていた看板が、まだそのままあった。この看板とレディーバードのツーショットを撮りたかったのです。夢が叶いました。


 そしてOSKです。大貴誠は、自分が舞台に立つようになって、大阪の町の素敵さに気づくのと同じように、OSKの魅力に改めて気づいたそうです。
 スバル360が、いつまでも古びることがなく、可愛くかっこいいクルマであるように、OSKは「新しいものと、90年の伝統が、ひとつになって輝いているところが面白い歌劇団」です。
「私、大阪の古い大きな交差点を、じっと目を細めて見てると、そこに、昔チンチン電車が走ってた頃の素敵な光景が見えるの。OSKの舞台にも、そういう、昔からずっと続いてる素敵なものが、見えてくる時があるんだよね」
 旧車を愛する方なら、道路でチンチン電車の幻影を見る大貴誠の気持ちは、分かっていただけるのではないでしょうか。だから「OSKの魅力もノスヒロの読者の人は理解してくれて、楽しんでもらえるんじゃないかなぁ」と大貴誠は思っています。

人物 街並み
懐かしいアーケード。洋品店の隣に肉屋さんなどがある。テールスープの美味しさをここで知りました。アーケードのすぐ裏に、思わぬ静かな神社なんかもあります。よく自転車で来てたなあ。


人物 大貴誠
大貴 誠(だいき・まこと) OSK日本歌劇団・元男役トップスター。ノスヒロをむさぼり読んでいた日本で唯一の歌劇スター。2010年夏、念願のスバル360を入手。このクルマと一緒に日本中を旅する予定。

関連記事:レディーバード


掲載:ノスタルジックヒーロー 2013年4月号 Vol.156(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Rueka Aoki/青木るえか photo:Rumi Matsushita/松下るみ

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