12台のみ存在した ロングビーチGP記念の特別仕様車 77年式 ダットサン280Z ザ・スペシャル デコラ パッケージ 2

実際のペースカーとしてのプレミア付きで売却されたのち、運よくワンオーナーで大事に生き長らえてきた12台中の2台を、揃って2010年に里帰りさせたのは宮城県仙台市のYさん。免許取得とともにS130の280Z-Tでチューニングに夢中になるも、年齢を重ねるにつれ北米仕様の未レストア車両Z-CARの天然の味に引かれていった経歴の持ち主だ。その心境の変化は、王道とは異なる路線での自己主張を求めたのではなく、少年期の原体験に基づく“Z=アメリカ”の自己満足への正直な原点回帰であった。

「高校の通学路に多摩ナンバーを付けた黄色いS31Zがいつも停まっていたんです。240ZGや当時の街道レーサーにはない印象的な見た目は、フェアレディZへの先入観を塗り替えるほど刺激あふれるものでしたね」と30年以上前の思い出に焼き付くそのZこそ、スペシャル・デコラパッケージを再現した国内ベースのレプリカ車。フェンダーミラーこそ残っていたが、北米純正の5マイルバンパーも完備した忠実な280Z仕様だったという。

 その頃の日本は排ガス規制で走りの魅力を失ったクルマ事情と若者文化のメイド・イン・USAブームが重なり、“身近なクルマの憧れの地での姿”として安全基準対策で独自の変貌を遂げた対米輸出車が、自動車以外のメディアでも盛んに取り上げられていた時期。そういった時代背景のなか、アメリカナイズドな日本車のアイコンであった280Zに思春期の多感な心を動かされるのにも、十分納得がいくのだ。



ホーンボタンがDATSUNからZの文字となったステアリングや、計器類も書体変更を受けた77モデル。160MPH(257.5km/h)までの速度計は、翌年からkm/h表示が加わる。



シートを含めインテリアも当時のまま。新車時からのガレージ保管と西海岸の気候の賜だ。



アームレストは当時のオプションブランドDatsun Accesoriesの製品。ディーラー装備品のオプションアクセサリーも豊富だった。



ディーラー装着のAUDIO VOX製8トラデッキ。北米で義務化されていたシートベルト警告灯も特徴だ。



この年式から北米仕様のみ採用された応急用スペースセーバースペアタイヤ。スペアタイヤの収納方法の違いによって、ラゲッジは国内や欧州向けのS31型とフロア形状が異なる。



FMVSSプレートの下に、ストライプの施工を手がけたショップのデカールがキレイに残る。


掲載:ノスタルジックヒーロー 2011年 04月号 vol.144(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text : KON HIDEKI / 金 秀樹 photo : HIRANO AKIO / 平野 陽

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