様々な国の様々なメーカーにリプロダクションを依頼|My story with【3】1969年式 スバル 360 スーパーデラックス (北米仕様)

10インチタイヤもアメリカのメーカーでリプロダクト。L字形のステムを付属したブリヂストン製チューブは販売している。ホワイトレターはノンオリジナル

       
「てんとう虫」の愛称で親しまれたスバル360が北米大陸でも発売されていたことは、あまり知られていない。
2018年に生誕60周年を迎えるこの「てんとう虫」と、彼の地で出合い、心を奪われ、ついにはフルレストアまで敢行した男の物語をお届けしよう。


【海を渡ったてんとう虫に心を奪われた男の物語 1969年型 スバル 360 スーパーデラックス (北米仕様) Vol.3】

【2】から続く

 そこで安宅さんは、自らスバル360のフルレストアを実行すること、そしてその過程で再生産した部品をオーナーへと継続的に供給できる態勢を作りたいと考えついたのである。安宅さんはそれまでも数々のレストアを実現してきた専門家ではあるが、スバル360に関して、ほとんど知識やノウハウを持っていなかった。そのため、まずはさまざまな面で協力を得られるパートナーを見つけ出すところからプロジェクトをスタートさせた。

 そして縁あって探し出すことができたのが、名古屋市のスバル360専門店「ガレージプレアデス」だった。安宅さんはショップを直接訪問し、代表を務める大森さんの職人としての真摯な姿勢と人柄にひかれて協力を仰ぐことに。パーツマニュアルをはじめ貴重な資料や情報、技術的な指導をしてもらった。長年スバルを専門にやってきただけあって、日本から供給されたパーツも多い。このプロジェクトを通して共同製作した部品も数多くあり、ウィンウィンな関係を築くことができた。


>>【画像47枚】スペアタイヤを外したフロントのトランクなど。バッテリーは芝刈り機用を使用した。ジャッキもスバルブルーでパウダーコート


 アメリカに戻ると、まずはベース車両の部品をすべて取り外すところからレストアを開始。そのプロセスは当初想定していた以上に困難の連続だったそうだ。スバル360は、さすが黎明期のクルマだけあり、年次ごとに各部が細かく改良されており、年式が一年違うと部品や仕様が異なることもざら。また、同じ1969年型でも日本仕様と北米仕様では外装の特徴が異なることなども分かった(日本仕様は1968〜1970年が最終型と呼ばれるが、北米仕様は1967年までの仕様を輸入)。そもそもグレードが違っても型式は同じだったため、安宅さんが求める厳密なレベルでのマッチングは事実上不可能だったという。

 だが、凝り性の安宅さんは、個体に合わせた手作業をいとわないのはもちろん、「ないものは作る」という姿勢で、アメリカや日本、台湾、タイなどにあるメーカーに、現物を送ってリプロダクションを依頼。エンジンの内部パーツやガスケット、灯火類のレンズ、ウエザーストリップ、果てはネジ一本まで、さまざまな部品を再生産していった。




>> 356ccの空冷2サイクル直列2気筒エンジン。エンジンカバーとファンカバーは当時のスバルブルーを再現してパウダーコート。





>> アンダーカバーを外したところ。すべて新品同様のフィニッシュ。エンジン、ミッション、クラッチ内の部品も全て交換した。


【4】に続く


初出:ノスタルジックヒーロー 2018年2月号 Vol.185
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1969年型 スバル 360 スーパーデラックス (北米仕様)(全4記事)

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【1】【2】から続く

text : HIDEAKI KATAOKA/片岡英明  PHOTO : RYOTA-RAW SHIMIZU/清水良太郎

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