回転シート&リアエンジンの名車は、BMWの生産記録を塗り替えた【1】1960年式 BMW 700 クーペ

リアエンジンのため、グリルレスのシンプルな顔立ちだ。ジョバンニ・ミケロッティがデザインしたクーペボディは1960年を経た今でも美しい。時代に先駆けて、サイドウインドーの三角窓も取り去った。フロントマスクやサイドビューは、日野コンテッサとどことなく似ている。

       
1950年代、BMWが倒産の危機に瀕したとき、BMW700が彗星のごとく現れた。
その独創的なメカニズムを採用したエレガントなBMW700クーペの素顔は!?

【気になるクルマをチェック! 掘り出し旧車 1960年式 BMW 700 クーペ Vol.1】

 ドイツのバイエルン州ミュンヘンに本拠を構えるBMWは、2016年に創業から100年を越えた伝統をもつ企業だ。黎明期は高性能な航空機用エンジンの製造で名を知られている。BMWは高い技術力を世界中に知られたが、ドイツが第一次世界大戦に破れ、敗戦国になったことによって運命は大きく変わった。航空機の生産が禁止されたため、航空機エンジン事業を休止したのである。

 そこで選んだのが、トラックやオートバイ用エンジンの生産だ。次に自動車の製造に乗り出した。BMWは航空機用エンジンで作り慣れた直列6気筒を乗用車に積み、名声を勝ち取っている。戦後は高級車路線へと舵を切った。だが、西ドイツの景気回復が遅れ、新車販売は伸び悩んでいる。

 BMWは経営不振に陥り、倒産寸前になったが、救世主が現れる。苦境を救ったのは、ライセンス生産したキャビンスクーターのイセッタだ。それを発展させたのが、個性派のBMW600で、特異なドア構造が注目を集めた。
 
 そして、正統派の小型セダンは1959年夏に登場する。それが、スチール製のモノコックボディを採用したBMW700だった。


>>【画像20枚】1960年近く前に、この機構を採用したのは驚きの左右ともに乗り降りしやすいように外側に向いて回転するフロントシートなど



>> エンブレムにある円と十字は飛行機のプロペラを表している。青と白はバイエルンの青い空と白い雲のイメージだ。





>> リア右側には筆記体で「Coupe」の文字が美しい書体で書かれている。





>> 細部にまでこだわり抜いたミケロッティの作品だけに、ドアハンドルのデザインもオシャレだ。ドイツ車だが、イタリア車の香りも感じられる。

1960年式 BMW 700 クーペ


諸元 SPECIFICATION
全長 3538mm
全幅 1481mm
全高 1250mm
ホイールベース 2121mm
トレッド前/後 1270 / 1194mm
最低地上高 150mm
室内長 1490mm
室内幅 1090mm
室内高 1110mm
車両重量 630kg
乗車定員 4名
最高速度 120km / h
最小回転半径 3.6m
エンジン種類 空冷水平対向2気筒OHV
総排気量 697cc
ボア×ストローク 78×73mm
圧縮比 7.1:1
最高出力 30.4ps / 5000rpm
最大トルク 5.1kg-m / 3400rpm
変速比1速 3.673 / 2速 2.350 / 3速 1.491 / 4速 1.000 / 後退 4.652
最終減速比 5.833
燃料タンク容量 31.8L
ステアリング形式 ラック&ピニオン式
サスペンション前/後 デュボネ式独立懸架コイル / トレーリングアーム独立懸架コイル
ブレーキ前後とも リーディングトレーディング
タイヤは前後とも 5.20-10-4PR
発売当時価格 5300マルク(約45.5万円)

【2】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2018年2月号 Vol.185
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1960年式 BMW 700 クーペ(全3記事)

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text : HIDEAKI KATAOKA/片岡英明  PHOTO : RYOTA-RAW SHIMIZU/清水良太郎

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