永遠の憧れ。 ドイツのマイスターと 日本の職人が育てたブランド。|BBS_STORY_05

BBSの“顔” クロススポーク

BBSがクロススポークと定義し、頑なに守り続けるあのメッシュパターン。
それはどこかエレガントで、そして戦闘的で、僕らを鼓舞するものだった。
あの造形はしかし過去の遺物ではなく、今もなお、僕らの心を捉えて離さない。



我々がメッシュと括るあのホイールデザインは、正式にはクロススポークという。キラキラと輝くスポークで、なのに本気で走る際は問答無用のオーラを放つところに、僕らは問答無用でノックアウトされた。海を越えたヨーロッパで激闘を繰り広げるクロススポークホイールを履いたレーシングカーに、僕らは目が釘付けとなった。

ポルシェ 911 GT3 RSとBBS FI-Rのコラボは、長年の歴史がなし得たひとつの結果だ。隣り合うスポークをY字状に繋げることが強度や剛性を確保するのに都合がいい造形だとして採用されたクロススポークは、やがてBBSの“顔”となっていく。もはやBBSといえばクロススポーク(メッシュ)といった具合に。それはまるで、リアシップを貫いて今もなお世界最高峰のスポーツカー、レーシングカーであり続けるポルシェ911のようだ。

BBSはポルシェと同じく、ドイツで生まれたホイールメーカーだ。ドイツ南西部にしてフランスに隣接する“黒い森”の意味を持つシルタッハからその伝説は始まった。バウムガルトナーとブラントというふたりの男が、自動車部品の製造販売会社を興したのが発端となった。日本ではまだアルミホイールという概念すら定着していなかった1970年のことである。

当時のホイールはマーレにより鋳造され、切削加工されていたという。ピストンメーカーとして、当時から世界有数のサプライヤーだったのがマーレだ。彼らに協力したホイールメーカーは、後にも先にもこの頃だけ。百分台の、時には千分台の精度が要求されるピストン製造に長けたマイスターがつくるホイールだからこそ、モンスター級の出力性能を受け止める繊細なクロススポークを実現できたのだろう。

マーレとの協力を経て技術力を積み上げたBBSは、やがて1ピースからマルチピースまで多種多様な設計手法を実用化していく。たとえば70年代後半、グループ5カテゴリーに焦点を当てて開発されたポルシェ935/77、そしてル・マン24時間を想定して改良が加えられた935/78、通称モビー・ディック。935/77にして最高出力630psへ、935/78“モビー・ディック”になると845psにまで高められた出力性能を受け止めたのがBBSホイールだった。マルチピースホイールを例に挙げると、ボルト留めと簡単なシーリングだけで、いっさい振れもエア漏れも起こさない。溶接による重量増を避けつつ、補修や仕様変更を容易にした。935はグループ5のメーカー選手権でタイトルを獲得したほか、ヨーロッパ各地のレースでその速さと強さを見せつけた。

photo:中島仁菜 Nakajima Nina  text:中三川大地 Nakamigawa Daichi

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