「むしろ510に有利に働いたんだ」レースで不利だと言われていた510【2】ピート・ブロック氏 int.|BRE ダットサン 510|甘美なる510マニアの世界

アーム類のピボット打ち替えや細いスプリングの採用など、さまざまなモディファイによりローダウンとタイヤのサイズアップを実現

       
1970年代前半まで続いた日本の高度経済成長は、ピート・ブロックというクルマの哲学にも、大いなる変化をもたらした。2代目S50系や3代目C10を振り返ればわかるように、それまではレースでの好成績がそのまま基本性能の高さをアピールすることにつながり、販売台数の伸びに直結していた。ところが、徐々に大衆が求めるクルマ像にも変化が表れてきた。走行性能にのみ特化したクルマでは、多くの大衆の支持を集めることができず、車内の広さや装備に余裕のあるモデルが支持を集めるようになってきたのだ。

【BRE ダットサン 510 Vol.2】

【1】から続く

――当時の下馬評ではアルファロメオやBMWなどの欧州勢に対して、ダットサン510は不利だといわれていました。BREには最初から勝算はあったのでしょうか?


ピート・ブロック「アメリカのレギュレーションはアルファやBMWよりも、むしろ510に有利に働いたんだ。FIAのルールに統括されたヨーロッパでは、ホモロゲーションを取得したレース専用のスペシャル・パーツを使用することが認められていたけれど、アメリカのルールでは生産車に現存しているコンポーネンツだけを使用しなければならなかったからね。510の基本装備はモディファイするのに適していたし、ヨーロッパのファクトリーは『リアルな』市販車を使ったレースの経験に乏しかった。われわれは戦う前から勝者だったといえるね(笑)。そしてBREはすでに240Zで培った2年間の経験からL型ヘッドのチューニングにたけていたし、510が備えていた前後独立懸架サスペンションも事の成り行きを楽にさせてくれた。当初ヨーロッパのチームは、510のエンジンはファクトリーから供給されるスペシャル・パーツ抜きではレースには適さないだろうと見ていたけれど、彼らは間違っていたのさ(笑)」

>>【画像34枚】ワイドフェンダーに収まるアメリカン・レーシング製マグホイール「リブレ」など。現在はHOOSIERのビンテージカー向けタイヤであるSTREET TD(P225/45D13)が装着されている

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インパネには計器類のほか、ピットインの際に使用するターンシグナル、電動クーリングファンなどのトグルスイッチを装備。ブレーキとクラッチのペダルは金属製になっているが、オルガン式のアクセルペダルは純正のまま。




三連メーターは中央がタコメーターで、左が油圧計、右が油温計。燃料ポンプのランプも2つ付いている。タコメーターのみJones Motorola製で、左上の水温計を含めた他のメーターはStewart Warner製。




ワンオフのマウントの上にローバックのバケットシートを装備。新調されたSIMPSONのハーネスが備わり、ロールバーにはヘッドレストも装着


BREダットサン510(ヒストリック・トランザムカー仕様)1972年モデル

SPECIFICATION 諸元
全長 4070mm
全幅 1735mm
車両重量 1982ポンド(899kg)
エンジン型式 L16型改
エンジン種類 水冷直列4気筒SOHC
総排気量 約1800cc
最高出力 220ps以上
変速 機5速 マニュアル
サスペンション前/後 マクファーソンストラット・コイル独立 / IRSセミトレーリングアーム
ブレーキ前/後 11.5インチ・ベンチレーテッドディスク(ポルシェ906用) / 9インチ・ドラム
タイヤ前後とも 20.0×8.0-13

おもな戦績
SCCAトランザム2.5チャレンジ・チャンピオンシップ 1971年シーズン6勝、1972年シーズン6勝など。


【3】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2017年10月号 vol.183
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

BRE ダットサン 510(全3記事)

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【1】から続く

text : HIDEO KOBAYASHI/小林秀雄 photo : AKIO HIRANO/平野 陽

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