ヤナセが販売したケンメリGT-R【1】さまざまな問題があったプリンス車にきめ細かいフォローを行い、各部を改善したヤナセ|1973年式 日産 スカイライン HT 2000 GT-R

GT-R専用品となるグリルは、純正の新品を装着。エンブレムは盗難によって欠品した状態だったが、苦労して純正品を探し出した。

       

ヤナセが販売したケンメリGT-R

【1973年式 日産 スカイライン ハードトップ 2000 GT-R Vol.1】

 輸入車のインポーターとして、日本のモータリゼーションの発展に貢献してきたヤナセ。100年を超える歴史の過程において、1957年からプリンス車の販売を手掛けていたことは意外に知られていない。

 当初はさまざまな問題があったプリンス車だが、ヤナセが顧客に対してきめ細かいフォローを行い、各部を改善していくことで、信頼性を高めていった。そういった意味でもスカイラインの歴史の上で、ヤナセは外すことのできない存在といえる。1966年8月1日にプリンスと日産が合併してからも、ヤナセでの販売は継続され、1974年まで続けられた。つまりケンメリまでは、ヤナセでも販売していたのだ。

 そんな歴史の流れを感じさせてくれる1台が、今回紹介するケンメリGT‐Rだ。1973年に登場したが、排ガス規制の波にのまれ、販売期間4カ月、累計生産台数はわずか197台といわれる幻の名車だ。レーシングユニットの血統を受け継ぐ2Lの6気筒DOHCエンジンであるS20型を搭載し、専用グリル、前後オーバーフェンダーをまとったこのモデルの希少性はいわずもがな。しかも、「ヤナセもの」のケンメリGT‐Rが現存しているとは……。


>>【画像21枚】ボディの修復作業を行った際に、オーバーホールしたS20型ユニットなど。とても一時は雑草が生えていたとは思えない美しい仕上がり。助手席側ストラットに装着されているのは、新たに採用された燃料蒸発制御装置のフローガイドバルブだ




走行距離は6万3000km。ダッシュボードやアルミヘアライン仕上げのメーターパネルなど、抜群のコンディション。ステアリング系はGC110と同じだが、ケンメリRは、ステアリングホイールの位置を20mm下げることで、車格にマッチしたドライビングポジションとしている。






10000rpmスケールのタコメーター、240km/hスケールのスピードメーター、10kg/㎠の油圧計はGT-R専用だ。






純正バケットシートは表皮が裂けていたため、良品を5年かけて探し出した。シートはハコスカRよりもひと回り大きく、シートバック高640mm、クッション奥行き寸法470mm、スライドピッチは12mm。スプリングは、プルマンフレックススプリングを採用。







シフトノブはウッドタイプで、赤バッジが付く。




1973年式 日産 スカイライン ハードトップ 2000 GT-R(KPGC110)


SPECIFICATION 諸元
全長 4460mm
全幅 1695mm
全高 1380mm
ホイールベース 2610mm
トレッド前/後 1395 / 1375mm
最低地上高 165mm
室内長 1790mm
室内幅 1340mm
室内高 1125mm
車両重量 1145kg
乗車定員 5名
最高速度 200km / h
登坂能力 tanθ0.46
最小回転半径 5.2m
エンジン型式 S20型
エンジン種類 水冷直列6気筒DOHC
総排気量 1989cc
ボア×ストローク 82.0×62.8mm
圧縮比 9.5:1
最高出力 160ps / 7000rpm
最大トルク 18.0kg-m / 5600rpm
変速比 1速 2.906 / 2速 1.902 / 3速 1.308 / 4速 1.000 / 5速 0.864 / 後退 3.382
最終減速比 4.444
燃料タンク容量 55L
ステアリング形式 リサーキュレーティングボール
サスペンション前/後 ストラット式独立懸架 / セミトレーリングアーム式独立懸架
ブレーキ前後とも ディスク
タイヤ前後とも 175HR14
発売当時価格 163万円


【2】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2017年10月号 vol.183
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1973年式 日産 スカイライン ハードトップ 2000 GT-R(全3記事)

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text : DAISUKE ISHIKAWA/石川大輔 photo : RYOTA SATO/佐藤亮太

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