フィンランド・ スペシャル【2】冬期のガレージ暖房費も! 夏だけ走るか、冬にも走るか|アメリカ発! ニッポン旧車の楽しみ方 第27回

ヨウニ・プオンティさん自慢の1976年式ダットサン260Cセドリック2ドアHT。2006年に雑木林の中で発見されたサビサビの「草むらのヒーロー」状態だったものを、6年もかけて根気よくレストアしたクルマだ。というのも「元々6台しか輸入されなかった希少車種だったから」だそうだ。他にもレストア中の日産プレジデントを3台所有

       
1950年代から日本製の乗用車や商用車は、世界各国に輸出を開始した。言葉では理解していたつもりでも、私たちの知らない土地で使われている国産旧車を目にすると、それは感慨深いものがある。この連載「アメリカ発! ニッポン旧車の楽しみ方」が北アメリカ大陸を飛び出して、初めてヨーロッパからリポートをお届けすることになった。北欧の国のひとつ、フィンランドの日本旧車オーナーたちの様子を紹介する。

【 アメリカ発! ニッポン旧車の楽しみ方 フィンランド・ スペシャル Vol.2】

 【1】から続く

 フィンランドは季節の変化が激しいので、季節ごとのクルマを所有するのは普通のこと。維持費はそれほど高くないが、ガレージだけは大問題だ。マンション暮らしの人が多い町中では、賃貸ガレージはそうそう見つからないし、運良く見つかってもとても高額。1台分の車庫に月額500ユーロ(7万円弱)も払う人もいるそうだ。というのも、ヘルシンキの冬はマイナス20℃まで気温が下がるため、冬期のガレージ暖房費がかかるから。それが嫌で町中を避けて、数十kmも離れた郊外にガレージを借りたりするのも珍しくない。ところが、ガソリンは安くない。

 それでもみんなの心は熱いのだ。最南端のヘルシンキから北方へ1200kmの国土があるフィンランド。その国土の真ん中くらいまでは旧車が存在するらしい。そしてペンティネンさんいわく「男はみんなドリフトをしたことがある」というくらいに、誰もがドリフト好き。実際、舗装路上で白煙を上げてバーンアウトやテールスライドを軽々とやってのけるクルマもあった。ところがそこには「ついやってしまった」という悪気のなさが感じられるのだ。「どうせ曲がるなら、アクセルを踏み込んでテールをスライドさせたいんだよ」という程度のこと。ドライバーの誰にも、どこかにラリー魂が宿っている、そんな印象を与えた。


>>【画像25枚】郊外に小さなガレージをもつマルッティ・オラヴァさんの30年近くも動かしていないニッサン2400GTなど。「テールスライドするのが楽しいクルマだったよ」とコメント。型式プレートによれば型式はHGLC10で、L24型搭載の4MT。製造は横浜工場、車台番号末尾は102。左ハンドルで、イグニッションスイッチは左側についていた


 この国での旧車の楽しみ方は2通り。夏だけ走るか、冬にも走るか。冬の路上にまかれた塩を避けるには、夏の6カ月間しか走れない。半面、一年中走る覚悟を決めれば、雪上や泥道も走らなければならない。当然、テールスライドする機会も増える。

 フィンランドではトヨタの知名度と信頼度が圧倒的に高いという。その理由のひとつに、当時から一貫して一社のみがトヨタ車の輸入販売を続けてきたということがある。そう知って集まった50台を見渡してみると、旧車も確かにそれを反映しているようだった。ダットサンはトヨタに対するアンチテーゼという位置づけになるらしい。




1972年式トヨタ・セリカ1600LTのミッコ・ハトネンさん(左)は2001年から所有。エンジンルーム内は2連のミクニソレックスキャブと組み合わせた2T-G型で、GT仕様となっている。





窓枠の赤いストライプがおしゃれだったトヨタ・マークⅡ。女性オーナー、ハンナ・ユスティーナ・ヴァレニウスさん(手前)の愛車だ。




会場にひっそりと止められていた3代目トヨタ・カローラハードトップは、シビエ4灯フォグをまとい、クラッシックで上品なたたずまいだった。サイドミラーに注目。80年代にはやったというエンゲルマンのセブリングミラーが、フィンランドの人にはクラシック感をもたらすらしい。



【3】に続く

ノスタルジックヒーロー 2015年 10月号 Vol.171
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ニッポン旧車の楽しみ方 第27回|アメリカ発! ニッポン旧車の楽しみ方 フィンランド・ スペシャル(全4記事)

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 【1】から続く

text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

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