AA63セリカGT-Rに3S-G型を積めるのか【4】エンジンと内外装は完成。あとは足周りのグレードアップを図る|1985年式 トヨタ セリカ クーペ GT-R

輸出仕様に設定されていたオーバーフェンダーと新品のモールを入手。そこから生み出される一体感と新鮮さが、60系セリカの新たな魅力を引き出している

       

AA63セリカGT-Rに3S-G型を積めるのか

ブラックマスクの愛称で親しまれた最後のFRセリカに3S型エンジンを積む。トヨタの歴史を振り返ってみれば、そんなに無理な話ではないように思えるが、3S型といってもそのバリエーションは多く、選択を間違えるとスワップは途端に難易度が上がってしまう。オーナーが選んでしまった3S型は、あろうことかFF用。これをいかにしてFRセリカに積んだのか? 苦難の物語がスタート!

【1985年式 トヨタ セリカ クーペ GT-R Vol.4】

【3】から続く

 さらにハーネス類のワイヤータック化、ポリッシュされたST162セリカ用ヘッドカバーなどを流用すれば、走ってよし、眺めてよしの現役ドリフターを満足させる楽しいエンジンが完成した。 
 ミッションはマークⅡ系でおなじみのW55を換装した。セリカ用のT50と比べて、耐久性が高いことが交換の理由だ。接続されるプロペラシャフトだが、63セリカの最上級モデル1800GT‐TRでW55ミッションが使われていたことから、このシャフトを移植したそうだ。

 デフに関しては、なぜかセリカには兄弟車のカリーナ/コロナよりも大きなサイズのものが、1.6L車であっても採用されていたため、TRDのLSDを組むだけで戦闘力を保持できたとのこと。

 実は編集部がこのセリカと出合ったのは昨年春のことだったが、「ボディを塗り替えるまで、取材を待ってほしい」と話す池杉さんの意向を尊重し、ペイントが完了する日を待ち望んでいた。

新たなボディカラーに選んだ色は、スバルXVの純正色となるデザートカーキ。ここにUS輸出用モデルに採用されていたドアミラーや大型のオーバーフェンダーもセット。足元のホイールは、バラマンディの鍛造ホイール「トーマン」(16×9J/10J)。そうすれば、発売当時は不人気だったあのセリカが、磨き抜かれたセンスの塊に見えてくる。いやはや旧車モディファイの奥は深い、深すぎる。


>>【画像27枚】エンジン後端部の上に置かれたオイルとブローバイを分けるためのオイルセパレーターなど。その右奥にある筒がラジエーターのエア抜き用タンクで、角度を付けてマウントしていた横置きエンジンをまっすぐタテに積んだことによるエアの抜きにくさを、この位置にタンクを設置することで解消しているという




フロントの車高調はシェルケースを加工したワンオフもの。そこにこれまたワンオフの延長ロワーアームやピロテンションロッド、切れ角のアップにつながるナックルを組み合わせる。





70〜100系マークⅡなどで使われていた、強化タイプとなるW55/5速マニュアルミッションを換装。100系マークⅡの2Lマニュアル車用メーターギアからパルスをもらい、電気式のメーターへと信号を送ることに成功した。プロペラシャフトはターボモデルのGT-TR用に交換済みだ。




浮谷商会のAE86用を流用し、7kgのコイルと合わせたリアサスペンション。アームの取り付け位置を加工することで、キャンバー角のつけすぎを防いでいる。デフマウント以外のブッシュをゴムからスチールにして、トラクションの逃げを防ぐ工夫も加えているそうだ。マフラーはワンオフのφ70mmステンレス仕様。


OWNER’S VOICE



40過ぎてもドリフトから足を洗えない「永遠の少年」であると同時に、R34スカイラインの専門店「ストレンジ」を神奈川県藤沢市で経営している池杉さん。「エンジンと内、外装に関しては一応完成したので、今後はブレーキなどの足回りをグレードアップしていきたい」と抱負を語ってくれた。


1985年式 トヨタ セリカ クーペ GT-R

SPECIFICATION. 諸元
●エクステリア:スバルXV用デザートカーキオールペイント、GX71チェイサー用純正リップスポイラー加工、US輸出用純正ドアミラー/オーバーフェンダー、前後バンパー/ウインドーモール半ツヤ消しブラックペイント、クルーズ製LED H4 5000Kヘッドライト/イエローキャップ
●エンジン:ST182セリカ用3S-GE型エンジン移植、ST162セリカ用カムカバーポリッシュ加工、CP製鍛造ピストン、ワンオフ288/272度カム、ワンオフスライドカムプーリー、TWM製スロットルポジションセンサー、クランク角センサーワンオフ純正デスビ加工、100系マークⅡMT車用メーターギア、SW20 MR2用オルタネーター/エアコンコンプレッサー、ARP製ステンレスボルト
●吸排気系:ワンオフインテークマニホールド、TWM製スロットルボディ/ファンネル/フューエルデリバリー、自作φ50mm4-1ステンレスタコ足、ワンオフφ70mmステンレスマフラー
●点火系:リンク製ストームコンピューター、MSD製DISⅡデジタルコイル、RB26型用ダイレクトイグニッション
●冷却系:コーヨー製AE86用アルミラジエーターロワーホース取り付け位置加工、メルセデスベンツ製電動ファン、HPI製オイルクーラーコア、キノクニ製オイルクーラー移動ブロック
●燃料系:R33スカイラインGT-R用フューエルポンプ、マークⅡツアラーV用360ccインジェクター
●駆動系:ER34スカイライン用クラッチマスターシリンダー、TRD製アルテッツァ用フライホイール/クラッチキット、トヨタ製W55ミッション、ワンオフエンジンマウント、セリカGT-TR用プロペラシャフト、TRD製LSD
●操舵系:SW20 MR2用電動パワーステアリング移植
●補強系:ドアヒンジ部筋交い補強、デフマウント以外スチール製
●サスペンション:(F)ワンオフ車高調、延長ロワーアーム、ワンオフピロテンションロッド/ショートナックル(R)TRD製AE86用ショート車高調、浮谷商会製ピロアッパーアーム+ID65/7kg直巻きコイル、アーム取り付け位置変更
●ブレーキ:R33スカイライン用マスターバック、ER34スカイライン用マスターシリンダー
●インテリア:63セリカ前期赤ボディ用黒内装移植、レナウン製ステアリング、クイックリリース、大森メーター製タコメーター、レーシングテクノロジー製ダッシュプロ2、キノクニ製水温計/電動ファンコントローラー、ワンオフTRD風アルミシフトノブ、レカロ製SP-Gバケットシート(黒レザー/アルカンターラ、オレンジステッチ張り替え)、ブリッド製サイドシートレール、自作8点式ロールケージ
●タイヤ:(F)トーヨー プロクセスR1R 205/45R16(R)グッドイヤー イーグルレヴスペックRS-02 215/45R16
●ホイール:バラマンディ トーマン (ブロンズパウダーコートディスク、ポリッシュ+クリアコートリム)(F)16×9J(R)16×10J、クルーズ製ジュラルミン冷間鍛造貫通レーシングナット




初出:ノスタルジックスピード 2018年11月号 vol.018
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1985年式 トヨタ セリカ クーペ GT-R(全4記事)

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【1】【2】【3】から続く

text : AKIO SATO/佐藤アキオ photo : RYOTA SATO(SAKKAS)/佐藤亮太(サッカス)

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