AA63セリカGT-Rに3S-G型を積めるのか【3】リミットの8500rpmまできっちり回せる活きの良さ|1985年式 トヨタ セリカ クーペ GT-R

3S-GE型エンジンの初期モデルとなるST162セリカ用のカムカバーを磨き上げ、ご覧の美しさにたどり着く。傾いて取り付けられているエンジン用のため、オイル注入口にも角度がつけられている。トヨタマーク入りのキャップは1S型エンジンからの流用だ。点火はダイレクトイグニッション化

       

AA63セリカGT-Rに3S-G型を積めるのか

ブラックマスクの愛称で親しまれた最後のFRセリカに3S型エンジンを積む。トヨタの歴史を振り返ってみれば、そんなに無理な話ではないように思えるが、3S型といってもそのバリエーションは多く、選択を間違えるとスワップは途端に難易度が上がってしまう。オーナーが選んでしまった3S型は、あろうことかFF用。これをいかにしてFRセリカに積んだのか? 苦難の物語がスタート!

【1985年式 トヨタ セリカ クーペ GT-R Vol.3】

【2】から続く

「まあ、いいっか、なんとかなる(笑)」と池杉さんは、ヨコ置き3S型をタテに置くイバラの道を選んでしまった。
 まずは、ウオーターライン。タテに積んだ場合、ファイアーウオール側に来てしまう取り出し口から最前列に位置するラジエーターまで、特製のラインを引くことで冷却を可能にした。ラジエーターは、コーヨーのコアにキノクニの移動ブロックを組み合わせたもの。この際、ロワホースの取り付け位置が左右逆だったことから、前方から向かって左下にあった取り出し口を塞ぎ、右下に開け直したそうだ。

 次の問題は、エンジンの傾きの違いからくるエアの抜き具合だ。池杉さんによると、本来斜めに角度をつけてヨコに積むことを想定していたセリカ用3S型を、角度をつけずにタテに積んだことで、抜けるはずのウオーターライン内のエアが、抜けにくくなってしまったのだという。これはできるだけエンジンの近くにエア抜きのタンクを設けることで、解決へと導いた。

 インテークとエキゾーストの配管も、当然ヨコ置き用に作られた純正パーツは使えない。そこでインテークはワンオフでマニホールドを製作し、JZ系マークⅡで使われていた360ccのインジェクターを装着することでクリアしている。エキマニはオーナーの自作によるφ50mmステンレス製等長タコ足だ。同時にリンク製のECU・ストームを使い、RB26型から移植したダイレクトイグニッション、TWM製スロットルポジションセンサー、純正加工のクランク角センサーなどを駆使。中身には純正同サイズのCP製鍛造ピストンとワンオフのカム(288度/272度)、バランス取りしたクランクを組み込むことで、リミットの8500rpmまできっちり回せる活きの良さを手に入れた。


>>【画像27枚】レイアウトの違いから、FF用3S-GE型エンジンで使われていたエキマニなどは流用することができず、自作されたφ50mmの4-1ステンレス製等長タコ足など





CP製鍛造ピストン、ワンオフで製作いした288/272度カム、カムスライドプーリーによるバルブタイミングの変更などで、中域重視型から8500rpmまでしっかり回る高回転重視型へと性格を変えたFF用3S-GE型エンジン。ハーネスやヒューズボックスを隠し、半ツヤの黒で塗られたエンジンルームとのバランスのよさからも、オーナーのセリカへのこだわりの強さがうかがえる。



自作のインマニにTWM製ファンネルやフューエルデリバリー、ツアラーV用360ccインジェクターを取り付けた吸気パート。魅せるエンジンルームの中で重要な役割を果たしている。




1985年式 トヨタ セリカ クーペ GT-R

SPECIFICATION. 諸元
●エクステリア:スバルXV用デザートカーキオールペイント、GX71チェイサー用純正リップスポイラー加工、US輸出用純正ドアミラー/オーバーフェンダー、前後バンパー/ウインドーモール半ツヤ消しブラックペイント、クルーズ製LED H4 5000Kヘッドライト/イエローキャップ
●エンジン:ST182セリカ用3S-GE型エンジン移植、ST162セリカ用カムカバーポリッシュ加工、CP製鍛造ピストン、ワンオフ288/272度カム、ワンオフスライドカムプーリー、TWM製スロットルポジションセンサー、クランク角センサーワンオフ純正デスビ加工、100系マークⅡMT車用メーターギア、SW20 MR2用オルタネーター/エアコンコンプレッサー、ARP製ステンレスボルト
●吸排気系:ワンオフインテークマニホールド、TWM製スロットルボディ/ファンネル/フューエルデリバリー、自作φ50mm4-1ステンレスタコ足、ワンオフφ70mmステンレスマフラー
●点火系:リンク製ストームコンピューター、MSD製DISⅡデジタルコイル、RB26型用ダイレクトイグニッション
●冷却系:コーヨー製AE86用アルミラジエーターロワーホース取り付け位置加工、メルセデスベンツ製電動ファン、HPI製オイルクーラーコア、キノクニ製オイルクーラー移動ブロック
●燃料系:R33スカイラインGT-R用フューエルポンプ、マークⅡツアラーV用360ccインジェクター
●駆動系:ER34スカイライン用クラッチマスターシリンダー、TRD製アルテッツァ用フライホイール/クラッチキット、トヨタ製W55ミッション、ワンオフエンジンマウント、セリカGT-TR用プロペラシャフト、TRD製LSD
●操舵系:SW20 MR2用電動パワーステアリング移植
●補強系:ドアヒンジ部筋交い補強、デフマウント以外スチール製
●サスペンション:(F)ワンオフ車高調、延長ロワーアーム、ワンオフピロテンションロッド/ショートナックル(R)TRD製AE86用ショート車高調、浮谷商会製ピロアッパーアーム+ID65/7kg直巻きコイル、アーム取り付け位置変更
●ブレーキ:R33スカイライン用マスターバック、ER34スカイライン用マスターシリンダー
●インテリア:63セリカ前期赤ボディ用黒内装移植、レナウン製ステアリング、クイックリリース、大森メーター製タコメーター、レーシングテクノロジー製ダッシュプロ2、キノクニ製水温計/電動ファンコントローラー、ワンオフTRD風アルミシフトノブ、レカロ製SP-Gバケットシート(黒レザー/アルカンターラ、オレンジステッチ張り替え)、ブリッド製サイドシートレール、自作8点式ロールケージ
●タイヤ:(F)トーヨー プロクセスR1R 205/45R16(R)グッドイヤー イーグルレヴスペックRS-02 215/45R16
●ホイール:バラマンディ トーマン (ブロンズパウダーコートディスク、ポリッシュ+クリアコートリム)(F)16×9J(R)16×10J、クルーズ製ジュラルミン冷間鍛造貫通レーシングナット



【4】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2018年11月号 vol.018
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1985年式 トヨタ セリカ クーペ GT-R(全4記事)

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【1】【2】から続く

text : AKIO SATO/佐藤アキオ photo : RYOTA SATO(SAKKAS)/佐藤亮太(サッカス)

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