「程度が良すぎて乗るのが怖くなった」ため手放された1台|ライバルに道をあけることのなかった 日産 スカイライン HT 2000ターボ GT-EL

しかし発売当時のジャパンは改造車が多く、印象の悪い人も多い。今回の撮影車のオーナーである齋藤功さんも同様だ。そもそもジャパン、特に角形2灯の後期型はあまり好きなクルマではなかったという。そんな齋藤さんを変えたのがこのクルマだ。

 ミントコンディションとはこのクルマのためにある言葉に違いない。「新車同様」は美しい旧車の表現に使い古された言葉だが、これを見たあとほかのクルマには使いたくなくなるだろう。

 外観やエンジンルームの妖しいまでの美しさ。ドアを開けて中に入るとただよう新車の香り。30年間密封保存されていたのではないかと錯覚を起こさせる。



リアトランクの上部に設置されたフューエルリッドはトランクを開けてメンテナンスを簡単に行うことができるようにしたもの。



 齋藤さんがこのクルマに出合ったのは1年前。オートサークルのウェブサイトだった。総走行距離1万5000㎞。
車種よりコンディションの良さがクルマ購入のポイントという齋藤さんはすぐに電話で仮予約をして、横浜の自宅から群馬のショップへと向かった。

 実際に見てみるとその美しさは異常とも思えるもの。
前のオーナーは「程度が良すぎて乗るのが怖くなった」ため手放すことになったという。オートサークル社長も「ここまで走行距離が少なく程度の良いものは見たことがない。自分がほしい」と言っていたほど。




 
メーカーオプションのマッドフラップ。当時の道路事情から車高が高めなので、泥のはね上げを防ぐ泥よけはうれしい装備だった。



 齋藤さんの旧車へのこだわりはシンプルだが難しく「フルオリジナル、新車時塗装、修復歴なしは当然。欠品も許されません。走行距離は短ければ短いほどいい」という。そんな彼のクルマにかける愛情は取材撮影時のエピソードでもうかがうことができる。実は撮影日の朝は雨だった。

 撮影時刻までには晴れる予報だったためロケ地までへの移動をうながしたが「絶対に雨の中を動かしたくありません」という齋藤さんの断固とした口調に押され延期となった。

 このスカイラインジャパンはミントコンディションを守る正しいオーナーと出会ったのだ。彼のような方が貴重な旧車を次の世代に引き渡す役割を担っているのだろう。



実は右側のバンパーには大きなキズが入っていた。交換部品が手に入らなかったためオートサークルの井上さんが表面を溶かして修復。


ノスタルジックヒーロー Vol.143 ノスタルジックヒーロー2011年 02月号(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Nostalgic Hero/編集部 photo:神村 聖

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