「ないものは作ればいい」ピストンはバイクの流用、コンロッドはワンオフ|1975年式 三菱 ランサー 1600 GSR Vol.3

4G32型エンジンを搭載する。中身は・・・

       
70年代に世界のラリーシーンで活躍したA73ランサーGSR。
中古車市場やモディファイ市場では同時期に発売されていた510ブルーバードやTE27レビン/トレノの勢いに押されているが、だからといってランサーの魅力そのものが色あせたわけではない。チューニングパーツがないことを逆手に取り、ワンオフ&流用パーツで戦闘力を高めた屈指の1台を題材に、今、再びランサーにスポットライトを当ててみたい。

【1975年式 三菱 ランサー 1600 GSR Vol.3】

【2】から続く

しかし、いくらラリーで活躍したとはいえ、国内での販売台数はカローラやブルーバードに及ぶはずがなく、パーツの入手が困難という、マイナー車特有の憂き目にあうことに。

 だが、これがオーナーの本能に火を点けた。「ないものは作ればいい」と。この精神を顕著に表しているのが、ピストン&コンロッド。もちろん最初に交換に挑戦した20数年前は、市販されていたピストンを使ったものの、棚落ちや重くて高回転まで回らないこともあり、さしたる結果を得ることができなかったそうだ。
 そこで、図書館に置いてあった国産エンジンデータブックなる本から使えそうなサイズのピストンを見つけ、実物を取り寄せて重量を測り、テストを重ねることでベストのパーツを探り当てるという冒険を開始する。

「ノーマルと市販ピストンの重量を比べてみたら、市販品はどれもノーマルより重かったんです。そこで、1気筒あたり50gの軽量化を行えば軽く回るエンジンへと変わるだろうと考え、ホンダのバイク用ピストンを使い、1気筒あたり60gの軽量化を果たしました。ところが、このピストンはピンハイトの位置が5mmほど短くなるのです。ここからロングコンロッドを探すことになり、結果的には連桿比を勉強するいいきっかけになりました。

 カムに関しては、4G32型の場合、カムに1〜7(番号なしもあり)の番号が打ってあり、排気量やキャブの数、スポーツキットによって使い分けられています。初めのうちはとにかく作用角を大きくすることだけを念頭に、純正の6番カム(67度)を74度に削ったりもしました。その後スポーツキットの4番カムや5番カム(ともに75度)を手に入れ試してみたところ、高回転が驚くほど変わりましたね。今は5番カムを77度に加工。オーバーラップも89度から96度にまで広げた高回転型としています。ロッカーアームは純正の鉄(1個122g)から他車用のアルミ(1個54g)に変え、抵抗を減らしました。


>>【画像24枚】エンジンを回しすぎると内部のインペラが破損する危険度が高まることから、あえてプーリー径を大きくして、インペラへの負担を軽くする策も取られているウオーターポンプのプーリーなど




燃料ポンプの付いていた位置に自作アルマイト仕様のフタを付け、そこにネジ山を切り直してアールズのフィッティングを装着。そこからブローバイのホースを引いたり、バルブカバーのSATURNの文字が隠れないようアクセルワイヤーの位置を変えるなど、細かな作業の蓄積のうえにこの美しいエンジンルームは生まれた。ラジエーターは3層とし、FC3S用オイルクーラーも備える。



三菱が販売していたスポーツキットでも使われていたことから、ソレックス44PHHの2基がけを採用。ただ、アウターベンチュリーは指定のφ34mmから亀有製φ38mmへと変更。そのほか亀有のジェットブロック、キャリーバックのポンプジェット(初期の4穴タイプ)、浦田商会のφ75mmカールファンネルストリート用を組み込む。





エキゾーストシステムは、キタエンジニアリングのタコ足(φ42mm 4-1)からケイワークス製φ50mmマフラーへとつながる。





ヘッドカバーは赤い結晶塗装をしただけではない。ネジ山を加工して日産のL型用アルミ削り出しオイルフィラーキャップが取り付けられるようになっており、ビジュアルアップの効果をもたらす。



1975年式 三菱 ランサー 1600 GSR(A73)
SPECIFICATIONS 諸元
エクステリア:リスタード製FRPボンネット / トランク、シビエ製W反射フォグランプ、ナポレオン・フェンダーミラー、ラメ入りボンネットエンブレム、ラメ入りリアガラス 
エンジン:ホンダ製バイク用ピストン(ボアφ79.5mm / ピンハイト27mm / WPC加工)、ワンオフI断面鍛造5mm延長ロングコンロッド(WPC加工)、ホンダ製B18C型用コンロッドメタル、精密バランス取りクランクシャフト、4G63型ランサーエボリューションエンジン用クランクメタル(WPC加工)、他車用軽量アルミロッカーアーム流用、ロッカーシャフト溝切り&WPC加工、IN / EXポート拡大加工、INφ40mm / EXφ33mm他車流用バルブ、RSホリエ製強化バルブスプリング、強化リテーナー&コッター、ワンオフメタルガスケット0.8mm、圧縮比11.2:1、スポーツキット5番加工カム(パルホス&デフリック加工 / 作用角77度 / リフト11mm / オーバーラップ96度)、カムカバー赤結晶塗装(オイルフィラーキャップ取り付け部ネジ溶接加工)、L型用削り出しオイルフィラーキャップ、ワンオフスライドプーリー、スナップオン製グリップ加工オイルディップスティック 
エンジンルーム:オクヤマ製オイルブローバイタンク、アクセルワイヤー取り回し位置変更、キャブリンケージ流用ボンネット支持棒 
吸排気系:原田商会製インテークマニホールド、ソレックス44PHH×2、亀有エンジンワークス製φ38mmアウターべンチュリー / ジェットブロック(P / J55、M / J175、A / J230)、ガレージキャリーバック製ポンプジェット、浦田商会製75mmカールファンネル、サニー用同調プレート、キタエンジニアリング製ワンオフタコ足φ42mm(等長4-1)、Kワークス製φ50mmマフラー 
点火系: 永井電子機器製フルトラ / MDI / MDI専用特注プラグコード 
冷却系: ウオーターポンププーリー拡大ワンオフ加工、3層ラジエーター、電動ファン、FC3SサバンナRX-7用オイルクーラー 
燃料系:亀有エンジンワークス製レギュレーター、ニスモ製電磁ポンプ×2 
電気系:ヒューズボックス&電動ファンコントローラー移設、メインバッテリー&キルスイッチトランク移設、IC強化オルタネーター、強化セルモーター、透明デスビキャップ 
駆動系:ギャランGTO2000用ミッション / クラッチ / クラッチカバー、フライホイール5.2kg軽量加工、オプションLSD(2ピニオン)、ファイナル4.222 
サスペンション:(F)AE86用ストラット流用、ワイズ製車高調(バネレート5kg / mm)、トキコ製ショックアブソーバー、ワンオフピロアッパーマウント (R)トヨシマ製ジムカーナ用強化リーフ(ブロック増し)、JA71ジムニー用ショックアブソーバー、各部特注強化ブッシュ 
ブレーキ:(F)AE86用流用、社外スリットローター、制動屋製ブレーキパッド 
インテリア:コルトスピード製レザー張り替えステアリング、永井電子機器製ステップモータードライブタコメーター、マジック製燃圧計、PLX製空燃比計、大森メーター製バキューム / 油圧 / 油温計、ハイフラスイッチ、ブリッド製バケットシート(運転席)、レカロ製LSシート(助手席)、シート張り替え、スパルコ製アルミペダル 
タイヤ:ダンロップ ディレッツァZⅢ(F)175 / 60R14 (R)185 / 60R14 
ホイール:RSワタナベ エイトスポーク(F)14×7J +8 (R)14×7.5J 特注オフセット


【4】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2018年8月 vol.017
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1975年式 三菱 ランサー 1600 GSR(全4記事)

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【1】【2】から続く

text : AKIO SATO/佐藤アキオ photo : RYOTA SATO(SAKKAS)/佐藤亮太(サッカス)

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