今だから語れる80日本カー・オブ・ザ・イヤー 第9回COTY受賞車 シルビア


 ギリシャ神話に登場する美しき女神の名前を冠した流麗なデザインのスペシャリティーカーが日産のシルビアだ。
初代モデルは1965年春に鮮烈なデビューを飾った。
2代目以降はセリカに主役の座を奪われ、80年代にはプレリュードの後塵も拝している。
が、88年5月に満を持して登場した5代目のS13シルビアが久しぶりに名声を勝ち取った。
デザインが秀逸だし、メカニズムにも新鮮味があった。
 
 キャッチフレーズは「アートフォース・シルビア」だ。
知的な20代後半のデート世代をターゲットに開発され、送り出された。
セールスポイントのひとつ、それは繊細でキュートなデザインだ。
研ぎ澄まされたファッション感覚とセンスのよさを上手に表現している。
スピード感と躍動感あふれるフォルムはエレガントストリームラインと名付けられた。
クルマを知り尽くした男性ドライバーだけでなく女性をも魅了したのがS13シルビアだ。

 
 流麗な2ドアクーペに加え、7月にはオーテックジャパンから粋なコンバーチブルが登場している。
また、ルックスがいいだけでなく、ハイセンスなボディカラーも注目を集めた。
主役は透明感のあるライムグリーンの2トーンだ。
ソフトな感覚のインテリアも見どころのひとつに挙げられる。
 
 走りのテーマに掲げたのは「小粋で楽しい走り」だ。
セリカやプレリュードなどのライバル車は前輪駆動のFF方式を採用し、卓越したコーナリング性能を手に入れた。
これに対しシルビアはかたくなに後輪駆動のFR方式を守り通している。
古典的なFRの後輪駆動にこだわったのは、意のままに操る楽しさを第一に考えたからだ。
 
 本当のことを言えば、セリカがFFスポーツに転換したとき、日産のエンジニアは動揺し、大騒ぎとなった。
が、S13シルビアの開発は佳境に入っていたので駆動方式を変えられなかったのである。
これが逆にいい方向に向き、エンジニアの思惑とは違う風向きとなった。
数少ないミドルクラスの後輪駆動スポーツモデルとして珍重され、クリーンヒットを飛ばすのだ。
 
 
 走りのポテンシャルも高かった。
時代に先駆けてマルチリンク式リアサスペンションを採用し、4輪操舵のHICAS‐IIも用意している。
俊敏なステアリング応答性とさえたフットワークはシルビアのもっとも魅力的なところだった。
エンジンは1・8Lの直列4気筒DOHC4バルブだ。
チューニングは2種類あり、自然吸気のCA18DE型とインタークーラー付きターボのCA18DET型を設定。
 
 
 88‐89日本カー・オブ・ザ・イヤーは10車種がノミネートされた。
トヨタはGX80/SX80系のマークⅡ/チェイサー/クレスタとST170系のコロナとコロナSFだ。
日産は4車種が10ベストにノミネートされている。
シルビア、セドリック・シーマ/グロリア・シーマ、ブルーバードの兄貴分といえるマキシマ、そして新感覚のパーソナルセダン、セフィーロだ。
 
 
 ホンダはコンチェルト、マツダはペルソナが残った。
三菱はサイボーグやザイビクスなどを有する3代目ミラージュとランサーがノミネートされている。
残る1車がスズキのカルタスだった。
この年は日産に魅力的なクルマが多かった。
シーマも注目を集めたが、最終的にシルビアが抜け出し、第9回のイヤーカーに輝いている。
S13シルビアは受賞後も快進撃を続け、今も傑作車、名車の誉れが高い。


最強のデートカーとして君臨していたホンダプレリュードを退け、一気に主役の座に駆け上がったS13シルビア。
リトラクタブルヘッドライトを備えたS12は直線的なデザインだったから、流麗な「エレガントストリームライン」へモデルチェンジを果たしたS13は、まさに大変身だった。
写真は、イメージカラーとなったライムグリーン2トンのQ’s。
CA18DET型エンジン搭載の最上級グレードがK’s、CA18DE型搭載はQ’sと装備を簡略化したJ’sという、3グレード構成。
トランプのキング、クイーン、ジャックからとった、ネーミングも斬新だった。
標準設定は角形4灯のフロントマスクであったが、メーカーオプションでプロジェクターライトを採用したヘッドライトを選ぶこともできた。
ディーラーオプションとして、エアロタイプのエアロフォルムバンパーも用意されていた。

独立したトランクを備えたオーソドックスな2ドアクーペスタイルながら、斬新なデザインで旋風を巻き起こした。
メーカーオプションでリアスポイラーの設定もあり。
後に、リアに大型のハッチゲートを備え、フロントマスクをリトラクタブルライトに変更した兄弟車の180(ワンエイティー)SXが追加された。

写真のベルベットブルーのほか、単色のボディカラーとしてクランベリーレッドが設定されたほか、ライムグリーン、ブルーイッシュシルバー、ウォームホワイトの3つの2トーンカラーが設定され、発売当初のボディカラーは5タイプ。

インテリアも曲面を多用したデザイン。
ステアリングはフルパッドタイプの3本スポーク。
先進的な装備として、フロントウインドーに車速をデジタル表示する「フロントウインドウディスプレイ」をオプション設定していた。

ラウンドしたフォルムが特徴的なモダンフォルムシート。
シート地は、K’sとJ’sがツイード調のニットで、Q’sがベロア調のニットとなる。

イバルのプレリュードやセリカに対しても、ツインカムターボの強力なエンジンはアドバンテージだったはずだが、意外にも当時のカタログでは大きくアピールはされていない。
あくまでもスペシャリティーカー/デートカーとしての位置付けだったためと思われる。

ハチマルヒーロー 2012年 11月号 vol.19(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Hideaki Kataoka / 片岡秀明

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