「街乗りは快適で当たり前」という姿勢を徹底しているショップ|1977年式 日産 スカイライン HT 2000 GT-X Vol.3

MOMOのJETステアリングを備える運転席は、ケンメリ特有のタイトな空間の中に現代的な操作性を実現。スターロードの電動パワステが装着され、モーターはステアリングコラム下側にビルトインされている。

       
旧車といえば、誰もがかっこいいと感じる普遍的なデザインが魅力。しかし、現代の基準に照らせば、あまり快適ではないのは確かで、ネガティブな要素もないわけではない。だが、今回紹介するスターロードが作り上げたケンメリは、そんな苦労とは一切無縁。最新のパーツと独自のノウハウを駆使して、モダンなコンフォートドライブを可能とした1台になっている。

【1977年式 スカイライン HT 2000 GT-X Vol.3】

【2】から続く

 そんなオーナーの熱い思いをくんだスターロードの井上さん。もともとオーナーが旧車に求めた方向性は、スターロードが常に信条としているところでもあったため、ごく自然体で仕事を進めることができたと語る。
「うちではベース車を用意してから、お客さんの要望に合うクルマを作ることを常としていますし、どんな仕様でも必ず街乗りは快適に走れるようにしています。その辺りが伝わったから、わざわざ遠方から来てくれたオーナーも、すぐに納得していただけたんじゃないでしょうか」

 スターロードというと、デモカーでもあるS30Zの戦闘的な印象が強く、ヤンチャなイメージを持たれている読者も多いかと思う。だが、旧車用のオリジナル商品としてクーラーや電動パワステをラインナップしていることにも象徴される通り、じつは「街乗りは快適で当たり前」という姿勢を徹底しているショップでもあるのだ。

 ページ最後のスペックを見てもらえば分かる通り、このケンメリもかなりの手数を踏んで作り込まれているのだが、井上さんいわく「全部当たり前のこととして普通にやっていること」なのだとか。ハンドルが重い、音がうるさい、乗り心地が悪いといった旧車特有のネガは一切感じさせることなく、一方で高回転までグイと回せばクルマが豹変したかのように加速する。そんな二面性を当たり前のこととして実現するため、井上さんは数々の引き出しから妙案を取り出しては、いとも「普通に」ケンメリへ還元していったのだ。

>>【画像30枚】グローブボックスの下に備わる送風口はコンパクトで、足元の邪魔になることもないスターロード・オリジナルのクーラーキットなど



アルミフレームとモノコックシェルで作られているBRIDEのGIAS IIセミバケットシートを装着。フルバケット同等のホールド性が得られる一方、リクライニング機能もついているため快適性も高い。





3種類用意されているモノコックシェルのうち、最も軽量かつ高強度なカーボンアラミドをチョイス。


1977年式 スカイライン HT 2000 GT-X(KGC110)
SPECIFICATIONS 諸元
■エクステリア:フルレストア、GT-R仕様
■エンジン: L28型改3.0L仕様
【ヘッド】燃焼室加工(含容積合わせ)、カッター跡修正・形状修正、ヘアライン仕上げ、ポート拡大加工(オリジナル形状INヘアライン仕上げ/EX半鏡面仕上げ)、水圧テスト、上面修正/下面面研、77.5度カムシャフト(リフト9.3mm)、INφ45/EXφ36.5mm-118mmビッグバルブ、ABB/PBBバルブガイド、SPL形状シートカット(カムシャフトセンター基準にて)、ハイリフト対応ハイレートバルブスプリング、オフセットリテーナー(特殊鋼)、強化バルブコッター(タフトライド処理)、クロモリロッカーガイド
【ブロック】φ89mm鍛造ピストン(PH29mm:重量バランス取り(0.5g以内)、L=140mmI型断面コンロッド(重量バランス取り0.5g以内)、L28型クランク/1本キー加工/曲がり修正/ダイナミックバランス/ジャーナル&ピンラッピング、ブロック上下修正面研、ダミークランク&ダミーヘッドボーリング、ARP製強化クランクキャップボルト、シリンダーパルホスM処理、ニスモ製レース用メタル、強化オイルポンプ、強化クランクプーリーボルト、水穴プラグキャップ(全部入れ替え)
■吸気系:ソレックス44PHH×3
■排気系:STARROAD製φ48mmフル等長タコ足/ローダウンマフラー
■点火系:マロリー製デスビ
■冷却系:STARROAD製3層オールアルミラジエーター、セトラブ製25段オイルクーラー(φ12mm)
■電気系:STARROAD製ブラックオルタネーター
■駆動系:ORC製シングルクラッチキット、FS5W71Cミッション(ニスモ製セミクイックシフト)、R200デフ(フルOH、ニスモLSD)
■サスペンション:STARROAD製(F)フルタップ車高調30段 (R)フルタップ30段ショートショック/フリーアジャストメントアーム
■ブレーキ:(F)STARROAD製鍛造4ポットキャリパーキット
■インテリア: STARROAD製クーラーキット、BRIDE製GIAS2(CFRP)×2、日本精機Defi ADVANCE A1φ80mm タコメーター(外周リング製作)/φ60mm油温/油圧/水温計、Autometer製燃圧/燃料/電圧計、MOMO製JETステアリング
■タイヤ:ヨコハマ アドバンタイプD (F)205/50R15 (R)225/50R15
■ホイール:GLOWSTAR(ブラックカットディスク/ブロンズアルマイトリム (F)15×9J -15(Aディスク) (R)15×10J -53(Oディスク)


【4】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2018年8月 vol.017
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1977年式 スカイライン HT 2000 GT-X(全6記事)

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【1】【2】から続く

text : HIDEO KOBAYASHI/小林秀雄 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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