今だから語れる80日本カー・オブ・ザ・イヤー 第8回COTY受賞車 ギャラン



  バブル前夜とも言うべき1987年は、今に伝えられるハイテクを駆使した先進的なクルマが多かった。
しかもその年の秋には、2年ぶりとなる東京モーターショーを控えていたため、多くのメーカーが気合を入れてニューモデルを開発していた。

 伝統を誇るクルマにも、積極的に新しいメカニズムが盛り込まれたのだ。

 この年を象徴する画期的なメカニズムが4輪操舵の4WSだ。
一般的な前輪操舵に連動させて、後輪にも舵角を与え、コーナリング時に後輪を同位相(前輪と同じ方向)に転舵すれば操縦安定性は向上し、レーンチェンジも俊敏に行える。
また、低速でステアリングの切り始めに後輪を逆位相(前輪と反対方向)に転舵すれば、素早くクルマの向きが変わり、内輪差も少なくなるから小回り性は大きく向上した。

 初めて本格的な4WSを採用し、注目を集めたのはプレリュードだ。
87年4月に登場した第3世代のプレリュードは、ホンダが持っている先進技術を余すところなく注ぎ込んだFFスペシャリティーカーだった。

その1カ月後にマツダがカペラをモデルチェンジ。
この4代目カペラも4WSを採用している。
しかも4WSだけでなく、2Lのディーゼルエンジンに採用したプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャーも熱い視線を集めた。

 トヨタと日産を代表する高級セダンが相次いでモデルチェンジしたのも87年だ。
6月にセドリックとグロリアはY31となっている。

9月にはトヨタも8代目のクラウンを発表した。
4ドアハードトップの売りは、3ナンバーに踏み込んだ専用のワイドボディだ。
また、マルチビジョンや今につながる簡易的なナビ機能も盛り込んでいる。

 9月にベールを脱いだ8代目のU12ブルーバードも、先進的なメカニズムをテンコ盛りしていた。
1.8Lの直列4気筒DOHCインタークーラーターボやABSを装備して話題をまいたが、それ以上にセンセーショナルだったのは「アテーサ」と呼ぶ4輪の駆動制御システム(フルタイム4WD)だ。

 4WDのパイオニアを自負する三菱も黙ってはいない。
東京モーターショーの開催を前に、三菱の高い技術力を傾注して開発したE30系のギャランと兄弟車のエテルナを新車市場に送り出した。

フラッグシップのVR‐4の売りは「アクティブ・フォー」と名付けた先進装備の数々だ。

高度にチューンされた2Lの直列4気筒DOHC4バルブインタークーラーターボエンジンを筆頭に、フルタイム4WD、4WS(4輪操舵)、4輪ABS、4輪独立懸架のサスペンションを採用(「4」にまつわる5つのテクノロジーを称して「アクティブ・フォー」と命名)、異次元の走りを実現している。

 サスペンションはストラットとダブルウイッシュボーンの組み合わせで、4WSは同位相だけに制限した。
50km/h以上の速度で作動し、卓越したフットワーク性能を生み出している。

 また、FF車の一部には時代の先端を行くアクティブサスペンション、「アクティブECS」を採用している。
これは、油圧ではなく、エアで減衰力や車高を電子制御するもので、日本で初めて量産車に導入されたメカニズムだ。

 日本カー・オブ・ザ・イヤーは、シグマのサブネームをはずし、新世代であることをアピールしたギャランと、U12ブルーバード、プレリュードの三つ巴の争いとなったが、そのなかから抜け出し、イヤーカーに輝いたのはE30系のギャランだった。

 バブル期を象徴するハイテクセダンがイヤーカーの称号を手に入れたのだ。
そしてその翌年となる88年2月には、日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞を記念して特別仕様車も発売された。

 また、89年10月のマイナーチェンジ時には、メルセデスチューナーとして有名なドイツのAMGにより、内外装、エンジン、足回りなどにチューニングが施されたAMGモデルが追加された。
三菱車としてはデボネアに次いで2台目となるAMGモデルだ。

 VR‐4は、後のランサーエボリューションにもつながる、高性能4WDセダンの記念碑的な存在である。
日本の自動車史に残る傑作と言われているのがE30系ギャランだ。



ギャラン
伝統の逆スラントマスクを採用し、Σ(シグマ)の名を落とすことにより「ギャラン」復活を強くアピールした6代目となるE30系。サイドの断面がS字を描くオーガニックフォルムのデザインが独特だ。

ギャラン
エンジンは、最も強力なVR-4が、2ℓの4バルブDOHC+インタークーラー付きターボの4G63型を搭載。最高出力は当時の2ℓ直列4気筒エンジンでは最高となるネット205psを発揮。その後マイナーチェンジのたびにパワーアップを果たし、220ps→240psへと進化した。

ギャラン
黒を基調にスポーティーにまとめられたVR-4のインテリア。

ギャラン
89年10月のマイナーチェンジの際に登場したギャランAMG。エクステリアは専用デザインのスポイラー類をまとう。

ギャラン
エンジンは2ℓ DOHC4バルブのノンターボ。高速カム、世界初のチタン合金リテーナ、ポート径拡大、バルブの軽量化、さらに吸排気系のファインチューニングなどが施され、最高出力が140ps→170psへと引き上げられたAMG専用の4G63型エンジン。

ギャラン
AMGデザインの本革巻き4本スポークステアリングや本木目シフトノブなどが採用された。

ギャラン
グレー×ブラック2トーンのシートは本革製。ドアトリムにも本木目を採用。エクステリア同様に、インテリアも高級かつスポーティーで、その結果NAのFFモデルながら、車両販売価格はVR‐4をしのぐ設定となっていた。


ハチマルヒーロー 2012年 07月号 vol.18(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Hideaki Kataoka / 片岡秀明

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