最強のS30|L28型改3.1Lエンジンは3年ごとにオーバーホール。予備エンジンをローテーションさせる|1977年式 フェアレディZ・L Vol.4

30年間使い続けるL28型は フルチューンで360psを発生

       

改良に改良を重ねていた「最強のS30」と呼ばれた1台

今から15年ほど前、「最強のS30」と呼ばれた1台があった。速さへの回答として徹底したボディ補強と軽量化を追い求め、自らの手でそれらを完成させた。その熱意から誰もが一目置く存在に……。時は流れて2018年。あの最強のS30は、このときも「最強」のポジションを目指して、改良に改良を重ねていた!

【1977年式 フェアレディZ・L Vol.4】

【3】から続く

 エンジンはいろいろと試した末に、30年間使い続けているL28型N42ブロックにオートサービス渡辺のφ89.75mmピストンとI断面コンロッド、83mmフルカウンタークランクをセットした3.1L仕様に今は落ち着いている。カムは亀有製の77度Dカムとした。数あるカムの中からこの1本を選んだのは、「低、中域から高域までの回しやすさ」からだ。ヘッドはインジェクション仕様のL型で用いられていたP90Aで、INφ45mm/EXφ38mmのビッグバルブを組み込み、吸排気効率とスキッシュ効果を考えてアルゴン肉盛り溶接後に燃焼室形状を変更している。

 吸排気は、トキワ商会が販売したソレックス50PHHキャブは、アウターベンチュリーをφ43mmからφ45mmへと変更。それはコーナリング時の中間域での空燃比を薄くし、もたつきの軽減を狙ったものだという。ワンオフのタコ足はφ48.6mmの6‐2‐1。フランジの厚さを通常の半分くらいとし、軽量化へのこだわりを発揮していた。このほかの工夫としては、オイルポンプがエアを吸い込むのを改善するためのストレーナーの延長&補強、穴あけ加工のウオーターポンププーリーの軽量化、ワークスと同じ#12サイズのオイルラインと34段オイルクーラー、冷却水の量にまで気を配った2層式アルミラジエーターなどがあげられる。

 また、オーナーは何基ものエンジンを所有しており、現在は3年ごとにオーバーホールのためにエンジンを下ろし、ローテーションを組んでエンジンを使っているのだそうだ。その証拠に、撮影時に積んでいたエンジンのヘッドは面研のしすぎで薄くなり、「P90A」というサイドに入っている打刻が通常の半分しか見えていなかった。

>>【画像49枚】大森の油圧/油温/水温計、電圧&燃料計、そしてウルトラのステップモーター式タコメーターなどが並ぶ、純正3連メーターの下に組み込まれたカーボンパネルなど



>> カーボンの遮熱板から顔を覗かせているのは、ソレックス純正ファンネルに硬質アルマイトをコートしたもの。左端の数字は、現在入れている77度Dカムのバルブタイミングだ。





>> キャブはソレックスの50PHH。「SOLEX」の文字の部分が黒くなっているのは、当時同商品を扱っていたトキワ商会から販売されたモデルのあかしとなる。





>> 右側の文字に注目。「oo∩^」と読めるが、これは面研のしすぎでP90Aの文字の下半分が削れたことを示している。




1977年式 フェアレディZ・L(CS31)
SPECIFICATIONS 諸元
■エクステリア:FRPボンネット(補強/輸出用ダクト入り)/Gノーズ/フロントフェンダー/前後バンパー/リアゲート、ニスモ製フロントスポイラー加工、4mm厚アクリル板加工ウインドー(窓のみ3mm厚)、リアゲートヒンジワンオフ
■ボディ:各部スポット増し、25点式ロールケージ+6点溶接補強バー(φ40mm×2mm、φ40mm×1.6mm、φ25mm)、ワンオフリアデフメンバー、フロントアルミ角パイプタワーバー、リアアルミ角パイプV字型タワーバー
■エンジン:L28型改3.1L仕様(圧縮比12.5:1)、P90Aヘッド、亀有エンジンワークス製77度Dカム、ビッグバルブ(INφ45mm/EXφ38mm)、ASW製φ89.75mmピストン/I断面コンロッド/83mmフルカウンタークランク、クランクキャップボルトM12、トリプルスプリング/チタンリテーナー、ニスモ製レース用クランクプーリー、ウオーターポンププーリー穴開け加工、アルミオイルパン+延長・補強入りストレーナー、アルミオイルキャップ
■吸排気系:トキワ商会ソレックス50PHH×3(φ45mmアウターベンチュリー/メイン240/エア190)、硬質アルマイト加工ファンネル、特注φ48.6mm/1.2mm厚フランジ軽量6-2-1タコ足、自作φ90mmチタンマフラー
■点火系: マロリー製デスビ、永井電子機器製MDI/ウルトラシリコン・プラグコード
■冷却系:特注2層アルミラジエーター、フレックスアライト製電動ファン×2、アールズ製34段オイルクーラー、オイルライン#12フィッティング、セトラブ製デフオイルクーラー
■燃料系:FJ20型用燃料ポンプ、SK製燃料レギュレーター×2
■電気系:ハイパーエナジー製バッテリー
■駆動系:OS技研製ツインプレートクラッチ、F5W71Bミッション(亀有エンジンワークス製クロスギア、軽量穴開き加工アルミプレート付き)、R180デフ(ファイナル3.9、クスコ製インプレッサ用カバー)、OS技研製LSD
■サスペンション:(F)自作車高調(ピロアッパーマウント逆付け)/ロールセンターアダプター、純正改ピロロワーアーム/ピロテンションロッド、ピロボール式スタビライザー、 (F)スウィフト製直巻き9kg/mmコイル (R)スウィフト製直巻き7kg/mmコイル、キャンバー調整式アッパーマウントスペーサー、トー調整式メンバー、ロワーアームウレタンブッシュ
■ブレーキ:APレーシング製プロポーショニングバルブ、PFC製ブレーキパッド、マスターシリンダーライン引き直し (F)ブレンボF50キャリパー、ワンオフアルミベルハウジング+φ314mmFD3S用ローター (R)FD3S用キャリパー+φ314mmローター(4H 114.3加工)、ワンオフアルミブラケット、S30 Z用+FD3S用サイドブレーキ接続プレート
■インテリア:レザーステアリング、レカロ製バケットシート、ブリッド製バケットシート用パッド、シュロス製レーシングハーネス、FRPダッシュカバー、オートルック製ペダル、永井電子機器製タコメーター、大森メーター製油圧/油温/水温計、PLX製マルチゲージ、オムロン製デジタル式温度コントローラー(キャブ温度/デフ油温/ミッション油温/エンジン油温/エンジン水温)、オイルクーラー改自作ヒーター、照光押しボタンスイッチ式キー
■タイヤ:ヨコハマ アドバンA050 (F)225/45R16 (R)225/45R16
■ホイール:パナスポーツレーシングG7 (F)16×9J (R)16×9.5J


【5】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2018年8月 vol.017
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1977年式 フェアレディZ・L(全6記事)

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【1】【2】【3】から続く

text:AKIO SATO/佐藤アキオ photo:RYOTA SATO/佐藤亮太

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