最強のS30|一切妥協せずにプライベーターが仕上げた驚異のZ|1977年式 フェアレディZ・L Vol.1

240ZGの皮を被った 補強と軽量化の怪物マシン

       

改良に改良を重ねていた「最強のS30」と呼ばれた1台

今から15年ほど前、「最強のS30」と呼ばれた1台があった。速さへの回答として徹底したボディ補強と軽量化を追い求め、自らの手でそれらを完成させた。その熱意から誰もが一目置く存在に……。時は流れて2018年。あの最強のS30は、このときも「最強」のポジションを目指して、改良に改良を重ねていた!

【1977年式 フェアレディZ・L Vol.1】

「最強のS30」の名を聞いたことがあるだろうか? それは1984年、まだS31Zが旧車と呼ぶには早かった時期に購入したオーナーが、2000年から2年の時間を費やし、文字どおり最強を目指した1台だ。それから早16年(取材時)。「最強のS30」はどうなっているのか? S30Z愛好家にとって気になる近況をお伝えしていきたいと思う。

 そもそも「最強のS30」とは何なのか? これは友人が始めたブログのタイトルで、当時は「S30」と「S31」は厳密に区別されていなかったこと、そして友への最大限の賛辞として名付けられたものらしい。
「よく旧車が好きなんだって人から言われるんですが、たまたま好きなクルマをずっといじっていたら古くなってしまっただけなんです(笑)」

 オーナーは、笑顔でこう切り出した。

「S30Zの魅力はそのスタイリングと速さ。速さといってもノーマルではドンくさいのに、手をかけてやると圧倒的に速くなる。そんなイジる楽しさのあるところが気に入りましたね」

 そこからL28型を3.1L化し、定番の「ソレ・タコ・デュアル」、ブレーキの大径化、クロスミッションやLSDの投入、軽量化、ボルト留めロールケージの装着など、ひととおりのモディファイを試みるが、どうしても自分が考える理想のZにたどり着かないと思ったオーナー。サーキットでレーシングカーを見ているうちに、1つのアイデアにたどり着く。

「レーシングカーのように溶接ボディ補強を加えれば、大幅にボディ剛性が上がり、理想のZに近づくハズだ!」

>>【画像49枚】ホイールはパナスポーツのG7(16×9J/9.5J)。前後ともにサーキット走行にも耐えうるアドバンのA050(225/45R16)としたタイヤセレクトなど



>> 左右ドアと給油フタ以外の外装パーツはFRP製に交換済み。しかも市販品をつけただけではなく、チリを合わせ、補強も入れているというから恐れ入る。ボンネットはダクトが刻まれる輸出用パーツから型を取ってFRPで作ったもの。けん引フックはダクトの手前に設置した。





>> 室内を行き交うロールケージ。基本の7点にはJAF公認φ40mm×2mm厚のパイプを使い、後の18点は厚さを1.6mmに落として軽量化を図る。ガセットプレートには、0.8mmもしくは1.0mmの鉄板を使い、徹底した強度と安全性を手に入れた。タワーバー部分のV字補強も効果があるそうだ。





>> 本来、1977年式のZは上下2分割のテールレンズのはずだが、240ZGマスク装着に合わせ、ワンテールへと変えられていた。テールゲートもリアバンパーもFRP。しかし、リアバンパーに純正のような継ぎ目をワザと入れて、純正らしさを残す工夫もしている。


1977年式 フェアレディZ・L(CS31)
SPECIFICATIONS 諸元
■エクステリア:FRPボンネット(補強/輸出用ダクト入り)/Gノーズ/フロントフェンダー/前後バンパー/リアゲート、ニスモ製フロントスポイラー加工、4mm厚アクリル板加工ウインドー(窓のみ3mm厚)、リアゲートヒンジワンオフ
■ボディ:各部スポット増し、25点式ロールケージ+6点溶接補強バー(φ40mm×2mm、φ40mm×1.6mm、φ25mm)、ワンオフリアデフメンバー、フロントアルミ角パイプタワーバー、リアアルミ角パイプV字型タワーバー
■エンジン:L28型改3.1L仕様(圧縮比12.5:1)、P90Aヘッド、亀有エンジンワークス製77度Dカム、ビッグバルブ(INφ45mm/EXφ38mm)、ASW製φ89.75mmピストン/I断面コンロッド/83mmフルカウンタークランク、クランクキャップボルトM12、トリプルスプリング/チタンリテーナー、ニスモ製レース用クランクプーリー、ウオーターポンププーリー穴開け加工、アルミオイルパン+延長・補強入りストレーナー、アルミオイルキャップ
■吸排気系:トキワ商会ソレックス50PHH×3(φ45mmアウターベンチュリー/メイン240/エア190)、硬質アルマイト加工ファンネル、特注φ48.6mm/1.2mm厚フランジ軽量6-2-1タコ足、自作φ90mmチタンマフラー
■点火系: マロリー製デスビ、永井電子機器製MDI/ウルトラシリコン・プラグコード
■冷却系:特注2層アルミラジエーター、フレックスアライト製電動ファン×2、アールズ製34段オイルクーラー、オイルライン#12フィッティング、セトラブ製デフオイルクーラー
■燃料系:FJ20型用燃料ポンプ、SK製燃料レギュレーター×2
■電気系:ハイパーエナジー製バッテリー
■駆動系:OS技研製ツインプレートクラッチ、F5W71Bミッション(亀有エンジンワークス製クロスギア、軽量穴開き加工アルミプレート付き)、R180デフ(ファイナル3.9、クスコ製インプレッサ用カバー)、OS技研製LSD
■サスペンション:(F)自作車高調(ピロアッパーマウント逆付け)/ロールセンターアダプター、純正改ピロロワーアーム/ピロテンションロッド、ピロボール式スタビライザー、 (F)スウィフト製直巻き9kg/mmコイル (R)スウィフト製直巻き7kg/mmコイル、キャンバー調整式アッパーマウントスペーサー、トー調整式メンバー、ロワーアームウレタンブッシュ
■ブレーキ:APレーシング製プロポーショニングバルブ、PFC製ブレーキパッド、マスターシリンダーライン引き直し (F)ブレンボF50キャリパー、ワンオフアルミベルハウジング+φ314mmFD3S用ローター (R)FD3S用キャリパー+φ314mmローター(4H 114.3加工)、ワンオフアルミブラケット、S30 Z用+FD3S用サイドブレーキ接続プレート
■インテリア:レザーステアリング、レカロ製バケットシート、ブリッド製バケットシート用パッド、シュロス製レーシングハーネス、FRPダッシュカバー、オートルック製ペダル、永井電子機器製タコメーター、大森メーター製油圧/油温/水温計、PLX製マルチゲージ、オムロン製デジタル式温度コントローラー(キャブ温度/デフ油温/ミッション油温/エンジン油温/エンジン水温)、オイルクーラー改自作ヒーター、照光押しボタンスイッチ式キー
■タイヤ:ヨコハマ アドバンA050 (F)225/45R16 (R)225/45R16
■ホイール:パナスポーツレーシングG7 (F)16×9J (R)16×9.5J




【2】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2018年8月 vol.017
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1977年式 フェアレディZ・L(全6記事)

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text:AKIO SATO/佐藤アキオ photo:RYOTA SATO/佐藤亮太

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